第11話 有名ギルドマスターと邂逅
藤堂の件で気をつけようと思ったのに……。
半グレリーダーの反田をボス認定した途端、ついスキルが発動してしまった。
やばいぞ、これ……。
そう思ったのは自分から揉め事に関わった後悔からじゃない。
人間相手に《
あのバルサウロスを一撃で瞬殺し粉砕するほどの威力。
自分なりに必死でセーブしたとはいえ、もしかしたら反田を殺してしまったかもしれない。
などと不安に駆られていると、いきなりガッと誰かが腕を掴んできた。
「今のうちに行きましょう!」
さっきまで男達に絡まれていた黒髪の少女だ。
俺は彼女に引っ張られる形で、その場から逃げる形で離れた。
「はぁはぁはぁ……ここまで来れば追ってこないですね」
「う、うん……でも大丈夫かな?」
「まさかあのような人達のこと心配なさっているのですか? なんてお優しい……ですが自業自得という言葉もあります。万一事件になろうと、わたしが全力で貴方の正当性を証明します!」
少女は力強い眼差しを俺に向け、はっきりと言い切る。
か弱そうな見た目とは違い強い意志を持つ女子のようだ。
こうして改めて見ると、物凄く容姿端麗な美少女だと思う。
クセのないサラサラの艶髪を腰の位置まで伸ばし、清楚で大和撫子という言葉が良く似合う淑女の縮図とも言えた。
「ありがとう……なんか心が軽くなったよ」
「お礼だなんて……助けて頂いたのはこちらの方なのですから。わたし、
「俺は、西埜 御幸。とりあえずキミに怪我がなくて良かったよ、うん」
コミュ障にしては珍しく饒舌に自己紹介ができている。
初対面でこれだけ喋れたのは、アリア以来だろうか。
そういや意志の強いところなど彼女と通ずるものを感じてしまう。
「御幸さんですね。本当にありがうございます。おかげで助かりました。周りは見て見ぬ振りをする中、貴方だけが勇敢に助けに来てくれるなんて……わたしとても嬉しかったです」
早織さんはニコっと優しい微笑を浮かべる。
美人なのに笑うと可愛いとかって反則だろ。
「い、いや……そのぅ、なんて言うか」
胸を張ればカッコイイのに、すっかり照れてしどろもどろになる。
この辺が陰キャぼっちの性だろうか。
「早織!」
ふと声が聞こえた。
遠くから青年風の男性が駆けつけてくる。
すらりと高身長で、がっしりとした細マッチョの体つきで爽やか風のイケメンだ。
どこか顔立ちが、早織さんに似てなくもない。
「兄さん!」
早織さんは声を弾ませ男性に近づく。
安心した表情を彼に向けていた。
口振りから彼女のお兄さんのようだ。
「大丈夫なのか!? 連絡が来た時は焦ったぞ! だから遅い時間に一人で歩くなとあれほど……」
「ごめんなさい、兄さん。けど御幸さんのおかげで助かったわ」
早織さんが説明すると、お兄さんは俺の方に視線を向ける。
何故か「あっ、キミは!?」と声を上げた。
「……まさか、
「え、は、はい……どうして僕のことを知っているんですか?」
「どうしてってキミは今じゃ『時の人』じゃないか。そうかキミが反田を……なら納得できるかな」
「納得ですか? 反田って人のこと知っているんですか?」
「ああ奴は嘗て俺のギルドに所属していた
「俺のギルド?」
「自己紹介が遅れたね。俺は不破
この爽やか兄さんが、あの超有名な
そういえば名前だけ聞いたことがある。
高校生から天才と呼ばれた
確か日本経済を支える不破財閥の次期当主でもあるとか。
やべぇ本物の超リア充だ。
俺は眩しすぎる昌斗さんに思わず後退りしてしまう。
「そんなに身構えないでくれよ。俺なんかよりキミの方が余程の快挙を成し遂げているだろ? 俺達【
なんだって!?
鈴ちゃんとペコキンが!?
二人共、Duチューブ界じゃ神懸かった超人気のインフルエンサーじゃないか!
そんな有名人が俺のことを称賛だなんて……マジかよ。
だからか? 学校で妙な空気が流れて、朝から藤堂が妙ないちゃもんつけてきたのは。
そういや
「兄さんからも、御幸さんにお礼を言ってください」
「そうだったな、失礼した。御幸君、大切な妹を助けてくれてありがとう。心から感謝するよ」
昌斗さんは深々と頭を下げて感謝の意を述べる。
こんな凄い人にお礼を言われるなんて……なんだか照れてしまう。
「い、いえ、僕なんて……けど殴ってしまった相手の方が心配で」
「相手? ああ反田のことか。奴なら心配ない、一応は生きているよ」
「本当ですか!?」
「ああ、ギルドメンバーからの情報だと、キミらが立ち去った後、シスター服を着た女性が奴にスキルのような謎の力を施し治癒したという話だ。と言っても死なない程度の回復らしく、全身の骨が折れていることに変わりないとか。間もなくして救急車で搬送されたそうだ」
なんだ生きているのか……良かった。
けどシスター服の女性って、まさかファティのことじゃないのか?
まぁそれよりも、俺としては人を殺めたわけじゃないという安堵感の方が上回っている。
そう胸を撫でおろしていると、昌斗さんはフッと笑みを浮かべて俺を見据えていた。
「御幸君は見所あるね……なるほど。初対面にもかかわらず、早織が気に入るわけだ」
「に、兄さん! わたしは別に……なんていうか、そのぅ」
昌斗さんに言われ、早織さんは頬を染めてしおらしく体をもじもじ揺さぶっている。
なんだか爽やかで微笑ましい兄妹だ。
それに妹を溺愛する気持ちは俺と通ずるところがあるぞ。
「それじゃ僕はこの辺で失礼します」
「御幸さん、この度は本当にありがとうございました! このお礼は、必ずいたしますので」
「ああ、早織の言うとおりだ。
「はい!」
昌斗さんの提案で、お互いスマホの連絡先を交換した。
こんな凄い人とお近づきになれるなんて……なんか誇らしくて嬉しい。
そうして不破兄弟と別れた俺はやっと自宅のアパートに辿り着く。
が、何故か玄関前に誰かが立ってそわそわしている。
妹の
「どうした瑠唯? また親父と喧嘩か?」
「……違うよ。お客さんが来ていて……そのぅ、お兄ちゃんに話があるって」
「俺に?」
そう言い、ドアを開けて居間へと向かう。
するとそこには――。
「待っておったぞ、ミユキ殿」
ミ、ミリンダ班長!?
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