赤いカド

 自転車に乗って学校から帰っているとき、ふと気まぐれに車道の向こうにある商店街を走ってみようという気持ちが起こった。

 ほとんどの店のシャッターが閉まっていると知っていたから、それまでそこを通ったことはなかったが、実際に走ってみるとトンネルの中を走っているような不思議な気分がした。

 シャッターの閉まった店ばかりの中で、一か所、赤い雨よけの、まだ店舗になっていないのか、中がからっぽになっている店があり、その正面にはタイヤまで赤いきれいな自転車が止まっていた。

 

 翌日も商店街の中を走った。昨日の店が気になったからだ。どうしたわけか、店の位置が昨日あった場所のひとつ隣へ移動しているような気がした。不思議には思ったけれども、そのままその横を通り過ぎた。

 

 やはりおかしいと、はっきりわかった。赤い店は道路をはさんだ反対側へと移動していた。次の日それは、元の側の一つ奥、その次の日は反対の一つ奥、と日ごとに赤い店は移動していった。

 

 それから何日かしたある日、商店街に赤い店はなかった。そのまま自転車で進んでいって、最後の店の前で自転車を止めると、右からトラックが突っ込んできた。




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