【03】

 夜詩くんはほぼ毎日泣いている。僕がいようがいまいがお構いなしで、疲れたから今日は泣いている。かかりつけの病院に行って帰ってきた夜詩くんはほんの十分ほど気絶するように寝てそれから起きる。起きて泣く。つらいときには強い薬を飲んで寝てしまえばいいのに、調子の悪いときの夜詩くんは正しいことを選べない。切れ味の悪いカッターで自分の腕を傷付けたり首を引っ掻いたりする。赤くみみず腫れが出来る程度で、血は微かに滲むだけだ。僕はそんな夜詩くんを眺めている。やめなよ、なんて、言わない。だって心が酷く苦しい人を救えるような僕ではないのだ。そんな有能さは待ち合わせていない。

 自分を傷つけるのに飽きた夜詩くんは、コーヒーを飲む。通院出来て偉いねよしよし、とねぎらっていたら、そのうち変な感じになってきて、僕は近くのドラッグストアまで走る。ガムテープを買ってきて夜詩くんの腕を後ろ手に縛る。もっときつくしていいと言われたから、ぎゅっと絞り、ぐるぐる巻きつける。夜詩くんをリビングのカーペットの上に膝立ちさせて、待ち受けている口のなかに僕のおちんちんを突っ込む。もうとっくにびいびい泣いている夜詩くんはときどきむせながらも頑張ってくれる。よだれと涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔になってる夜詩くんは、赤ちゃんみたいに必死にしゃぶりつく。僕はわざと夜詩くんの頭を乱暴に扱った……りはしない。僕は夜詩くんには優しいのだ。可哀想な人には優しくしてやるべきだから。

 夜詩くんはもっと雑に扱われたがる。そうされるのが好き「みたい」だ。「みたい」であって、本来の夜詩くん自身ではない。長年、変なこと酷い仕打ちばかりを植え付けられた夜詩くんの脳はもうとっくに狂っている。

「口の中と後ろと、どっちがいい?」

 僕は夜詩くんに聞く。口、と答えた夜詩くんは僕の吐き出した精液をなんのためらいもなく飲みこむ。べとべとの唇の端から、白いのが垂れる。夜詩くんはそれも舐めとる。

「じゃあ、次、後ろね」

 高校生の僕は夜詩くんの頭を撫でる。夜詩くんは涙をこぼして、それはやだという目付きをする。でも言わない。拒否なんて出来る夜詩くんではないのだ。嫌なことは嫌って言っていいんだよ。まあ、今回は言われてもするけど。

 夜詩くんの拘束を解かないまま寝室に連れていき、ローションと玩具とゴムをベットサイドのテーブルの引き出しから取り出す。うつ伏せになり、尻を突き上げ、肩で自分の体重を支えている夜詩くんの姿勢は苦しそうだ。僕は夜詩くんのお尻の穴を軽く玩具でいじめる。

「ごめんなさい。ごめんなさい。こんなことさせて、ごめんなさい」

「夜詩くん。今は僕としてるんだから、ちゃんと目ェ開けて」

 夜詩くんをひっくり返し、僕は夜詩くんとキスをする。

「誰としてんの? 夜詩くん」

「……ハツ」

「うん」

「初雪」

「うん。ゴム、つける? どうする?」

 僕はゴムをつけた自分のそれをわざと夜詩くんに見せる。さっき出したばかりなのに、もうすっかり元気だ。

「要らない」

「そしたら中に出しちゃうよ? いいの?」

「うん」

「駄目でしょ?」

 ごめんなさい、と目を閉じて夜詩くんは会話を拒む。だから僕は夜詩くんが再び目を開けるまで頭を撫でてやったり頬にキスをしたりする。

 ハツ、と夜詩くんが僕を呼ぶ。バイブ機能がないのにヒクヒクとうごめいてる玩具をつついて、夜詩くんを気持ちよくさせる。ゴムをつけたまま挿入しようとすると、夜詩くんは嫌がった。悲しそうな顔をした。

「……………っ」

「駄目だよ。後片付け、面倒でしょ?」

「いい、のに、そんなこと」

 あ、そ。僕は叔父にいろんな体位をさせる。最後はバックで犯した。一度引き抜いてゴムを外して、中に出した。夜詩くんは僕がそんなこと、するとは思ってなかったらしい。大きな声を出してよがった。

 引き抜くと、どろりとピンクの穴から白い液体がこぼれた。




 

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