第61話
アリスちゃんとお別れを済ませて、いつもの星に戻ってきた。
今いるのはコロニーの会議室? みたいなところ。大きなモニターがある。
「─外交したい!」
「急ですね……」
:外交?
:日本と外交するってこと?
:今更感ある
:そういえば、ちゃんとしたやつは今までやったことないか
:日本政府と関係を持つのね
:イルカちゃんに出来るとは思えんのだが…
「だからこうやってヤヨイちゃんに聞きに来たんじゃん」
:なるほど
:聞いてどうにかなる問題か…?
:イルカちゃんお嬢様っぽいしなんとかいけるだろ
:ヤヨイさんが外交するんだったら平気そうだけど…
:やらかしそう
:草
:外交でやらかすのはシャレにならんwww
「笑い事じゃないんだけど!」
「…ふふっ」
「ヤヨイちゃんまで!?」
:かわいい
:かわいい
「すみません、つい」
「つ、ついって……まぁいっか! とにかく外交だよ! 外交って具体的に何するの?」
「そうですね……まずは『外交とは何か?』から始めます」
「お願いしまーす!」
:急に授業始まった
:社会の範囲?
:中学だか高校だかの公民でこういうのやった気がする
:俺ヤヨイさんに勉強教えてもらいたい
:ヤヨイ先生……ってコト?!
:その格好で前に立たれたら集中出来ないだろ
:寝たらチョークで狙撃されそう
「一言で言えば外交とは、国家間による自国の利益のための交流です」
「…国家間?」
「国家間ですね」
「……」
:まさに絶句…!
:そもそも個人で外交なんて出来ないのだ
:草
:もう破綻した!?
「じゃ、じゃあ、外交っていうのは経済的な目的なんだ」
「そうです。私のところでは腹の探り合いという側面が強かったですが、それでも利益目的ではありました」
:続けるんかいw
:何事もなかったかのように…
:そっか、利益のためなのね
:文化交流とかも含まれるのかな?
:あくまで経済目的か
:腹の探り合い……
:まーそうだわな
「じゃあ、文化交流とかは?」
「それも同様に利益目的です。お互いの文化を知ることで、ビジネス的に海外展開しやすくなりますから」
「へぇー」
「と言っても、日本とフロンティアのような場合では種族差が激しいのでお互いに利益を出すのは難しいでしょうが」
「たしかに〜。できて服のデザインとか? でもこっちにもデザイナーいるしなぁ」
:文化以前に生物としての差がありすぎる……!
:お兄様みたいにデカいドラゴンがたくさん暮らしてる国だもんな
:異文化も異文化よ
:日本に技術提供されるならメリットあるけど、フロンティア側にメリットないしな
◆
「─以上になります」
「む、難しい…!」
「それはそうですよ。国家間の事ですから」
「うーん……じゃあ、個人的に買い物する旅行客にしかなれないのかぁ」
:つまり今までと変わらんとな
:旅行客というにはあまりにも目立つ
:買い物かぁ
:地球外からの旅行客とか、外交に来たやつより扱い辛いだろ!
:下手に機嫌損ねたら日本が…消える…!!
:イルカちゃんはそんな事せんよ
「うんうん、絶対にしないよ〜。だっておに…お気に入りだからね!」
危なかった。
:噛んだ?
:草
:お気に入りだから壊さない……魔王かな?
:いやそんな相手を認める系のラスボスじゃないんだから…
:実際能力はラスボス級だけどな
:なら裏ボスはお兄様か
「話が逸れてます…」
「あ、ごめんごめん♪ んー、観光客としてなら日本に行けるからー……どうしよっか?」
「普通に観光しに行けばいいのでは?」
「……そうだね!」
:えぇ…
:これ最初の目的捨てたな?www
:いいんかお前それで
:いつでもウチに来ていいですよイルカちゃん!
:なら是非大阪に…
「まぁまぁ、どこに行くかはまた今度ね?」
「…行くのは確定なんですね」
「ヤヨイちゃんも行く?」
「…………一度行ってみましょうか。スケジュールには余裕がありますし」
:マジで!?
:まじか!
:スケジュールに余裕…? 妙だな…?
:ミコちゃんであれだから……
:あれとか言うなw
ミコ:(<●>ω<●>)
:実際割と暇そうではある
:っているやん!
:www
:見てるしw
「どうする? ミコちゃんも日本来る?」
「ドルフィン様…いえ、イルカさんとミコさんと私の三人でも構いませんよ」
ミコ:あー……いや、ふたりだけで行ったらどうだ? 私にも『仕事』があるからな!
:草
:ほんとに仕事あるんです?
:あるだろ。コロニー警備員の仕事が
:ほぼニートじゃねぇかw
ミコ:おい!
「そっか。じゃあ次はヤヨイちゃんとふたりで日本観光……の前に、この前フロンティアで面白いもの造ってたからそれ見てから行こっか!」
「面白い物…ですか?」
「そう!」
:なんだろそれ
:気になる
:ハイドラ基準の面白い物……これは気になりますねぇ
:……フロンティアで配信するの?
:イルカちゃんの母星からってこと!?
:何気に初めてじゃないか?
「……というか、結局外交はいいんですか?」
「…………ほら、文化交流ならこうやって配信してるだけでいいじゃん? 技術提供とかもあんまりしない方がよさそうじゃん? 結構前にミコちゃんからも言われたし」
「そうですか」
◆◆◆
「たっだいまー!」
「お、お邪魔します」
1年もしないで家に帰ってきた。まぁ、別にいっか。嗅ぎなれた金属と木の匂いがする。
「あらフィー、意外と早く帰ってきたのね。それで、隣の子があなたの言ってた…?」
「紹介するねお母様! 友だちのヤヨイちゃんだよ!」
「初めまして、お母様。私は独立国家NW第三コロニー所属アンドロイド軍特別行動部隊長のヤヨイと申します」
おー、ちょっと前に聞いためちゃ長自己紹介だ。
「ご丁寧にどうも。ヤヨイさんね。私はエクシデーナ・ミュースター・ファフニルよ。娘がいつも世話になってるみたいね」
「いえ、それはむしろ私たちの方です。イルカさん含め、ハイドラの皆様には大変お世話になっています」
「ふふっ……。そうね、わかったわ。これからも娘達と仲良くして頂戴ね」
「はい。最初からそのつもりです」
嬉しいなぁ。
「…よく出来た子ね」
「でしょ〜?」
「大事にするのよ?」
「もちろん! あ、そうそう今日来たのは─」
「とりあえず座りなさい。ヤヨイさんもそちらにどうぞ」
「ありがとうございます」
あ、座布団新しくなってる。
「ヤヨイさんは好きなお茶とかあるかしら?」
「好きなお茶……緑茶です」
「いいわね」
「私麦茶〜」
「相変わらずね」
拡張空間から高そうな湯呑みと急須を……違う、お兄様が昔作ったやつだ。
急須からそれぞれに注いでいく。ひとつの急須から別々の中身が出てくるのはどういう仕組みなんだろ。熱いお湯と冷たい水みたいに切り替えてるだけかな?
「それでフィー、今日はどうしたの?」
「いやー、この前新しく出来たアレあるでしょ? あそこで配信したいんだけど、大丈夫かなって」
「……それ、いつになるのかしら?」
「早ければ早いほど嬉しい!」
「なるほど、わかったわ。管理者に相談してみるから少し待ってなさい」
「え、いいの!? ありがと!」
「ただし、完璧にやりなさい」
「はーい!」
─スー…カタン
「それじゃあヤヨイちゃん! このお茶に合うお菓子を食べよっか!」
「なんだかよく分かりませんが……お菓子はいただきます」
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