第57話 宇宙のコラボ配信1
そろそろフィーの配信は終わる。配信中に電話を掛けたところで意味が無いからな、もう少し待てばいい。
「あっ、あの〜…」
なんだ?
「アッ、いえ、その…誰見てるのかな〜って気になっちゃいまして…」
「…妹を、見ている」
「い、妹さんですか?」
「そうだ」
ミコのテンションがあれだけ高くなるとは驚いたな。…今度俺も地球に行くか? …いや、借りればいいか。
「……えっ、妹さんも配信者なんですか?」
「そうだ。…明日か明後日にここに来る。準備しておけ」
「…………ど、どういうことですか!? あと準備って何の準備ですか!?」
「配信者同士でのコラボ配信はよくある事だと聞いた。…つまりそういうことだ」
「えぇ!? ぼ、ぼぼぼくにはここここコラボ配信なんてむ、無理です!」
ふむ。少し卑怯な手にはなるが─
「…俺の妹とはコラボしたくないと?」
「ヒエッ…」
「そう言うなら仕方な「や、やります! い、いえ! ぼくにやらせてください!」…ありがとう」
よし。
「ふぇぇ…」
フィーはあれで意外と、他者と接することが上手いところがある。恐らく、悪いようにはならないだろう。
最悪、何かあったら俺が止めればいい。
電波を。
それに、予めこちらでやることを決めておけばトラブルが起きることはないはずだ。内容にもよるが。
「…コラボ配信でやりたいことはあるか?」
「えっ、きゅ、急に言われましても…。何をやればいいかなんて全然─」
「違う。『何をやればいい』ではなく、『何をやりたい』かを聞いている」
「エッ…」
まるで何か正解があるかのような言い方はよせ。そんな義務感で楽しめるわけがないだろう。俺も視聴者も、その配信を。
「な、なら…………ダンス、とか?」
ダンスを踊れるのか。
「ほう、いいじゃないか。他にはあるか?」
「他……えっと、あるにはあるんですけど…その、ですね?」
「…とりあえず、言うだけ言ってみてくれ」
「えっと──」
─なるほど。
「面白そうだ。今から用意をしよう」
「あ、ありがとうございます!」
◇◆
「はーい! みんなこんばんは! 宇宙のイルカさんだよ! 今私がいるのはお兄様の船の中ね!」
:こんばんは!
:こん!
:コラボ配信と聞いて
:って隣の子誰だ!?
:アンドロイドの子じゃないよね?
:見たことないからアンドロイドじゃないでしょ
:コラボ相手ってことか
:耳長くね?
:ファンタジーもののエルフみてぇだな
「今日はね! 初めてのコラボ配信だよ! 他の配信者とのコラボは初めてだから緊張しちゃう! というわけで自己紹介よろしく!」
「アッ、ハイ! ぼ、ぼくはアリスっていいます!! 一般エルフです! よ、よろしくお願いします!」
:エルフ!?
:エルフ!?
:ボクっ娘エルフ!?
:ファッ!?
-アリス緊張しすぎw
-一般じゃないでしょ君ぃ
-イルカさん配信慣れてるね
-あのハイドラの妹ってマジ?
「あ、そうそう。今日は私の視聴者がいる地球と、アリスちゃんのいるミューサラス両方の視聴者が同じ画面を見てるよ!」
:別の星の住民と同じ画面を!?
:なんだかよく分からんが凄いことはわかる
:いや普通にやべぇことしてて草
-異星人と同じ画面を見てるんだ!?
-イルカさんのカメラどうなってるのそれ…
-純粋な科学力が桁違いだね
「あ、あの〜」
「どしたの?」
「えっと、ぼくの言葉って地球? の人に伝わるんですか…?」
「それなら大丈夫! アリスちゃんが喋った瞬間に日本語に変換されるように設定したからね!」
「したのは俺なんだが……。しかも一晩で」
「あ、あはは…」
:お兄様がいる!?
:めっさええ声しとるやないかい!
:お兄様が一晩でやってくれました
:ジェパンニ草
:お兄様の技術力エグイんよ
-お兄様の声、ちょっと怖いね…
-でもそれがいい!
-いやまぁかっこいいのはわかるけど
-船のシステム、ってやつを一晩で作るってすごくない?
「見てる画面は同じだけど、聞いてる言語は違うよ! それで、今日はコラボ配信だからね! やることを事前に決めてあるんだー! ほら、アリスちゃん」
「は、はい! この後予定は、まずダンスをします!」
:事前に決めてあるとは珍しい
:ダンス?
:踊れるのか?
-アリスの得意なダンスか!
-おぉ、いいね!
-イルカさんも踊れる感じかな?
-貴族はダンスも出来るでしょう?
「私もちゃんと踊れるよ! ねっ!」
「はい! イルカさんは、午前中の数時間だけで私のダンスに合わせられるくらいには踊れます! あれで一番得意なのはタップダンスって言うんですから、ぼくすっごい驚きました!」
「仕込まれたからね〜」
:あ、踊れるんすね
:タップダンスってかっこいいよね
:えーもうなんでもできんじゃん
-アリスのダンスに合わせられる!?
-へ、へぇー、やるじゃない
-声震えてるぞ
-てかタップダンスってなに?
「ミューサラスのみんなはタップダンス知らない? タップダンスっていうのは、こーゆーのだよ!」
─タタタッ タカッ カカカカッ
「おぉー…!」
「─こんな感じかな!」
:すご!
:カッケェ!
:イルカちゃん本当に多才だな
:最早プロのレベルでは?
-なにそれかっこいい!
-靴の音なのね
-今度私もやってみよ
-これはこの後のダンス期待できる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます