第51話 正月2
「ねぇミコちゃん」
「どうした?」
「初詣行かない?」
「……何だそれは? 場所か?」
「神社かお寺に行くことを初詣って言うんだ! ちょっとしたイベントかな!」
なるほど。堅苦しい行為じゃなさそうだな。それなら行ってもいいな。
「…だが、私たちが行ったら目立つと思うぞ?」
「それなら大丈夫! 今は配信してないし、ほとんど人が来ない神社知ってるからね!」
…知ってるのか。
「もし見つかっても、ここから20キロくらいの山奥にあるから簡単には来れないでしょ!」
「そういえば此処って何処なんだ? レンタルスタジオということは分かっているのだが…」
「横浜」
この前行った東京からはそこそこ離れてるのか。
「……このレンタルスタジオってどうやって借りたんだ?」
「どうって、普通に借りたけど?」
「身分証とかいらないのか?」
「(うーん、前世の見た目で使ったとはいえないし…)……まぁいいじゃん!」
大丈夫だろうな?!
「それじゃあ、行こっか!」
「あ、あぁ」
「手、繋いで…ごー!」
─シュン
「とうちゃーく!」
「っと」
おー、木ばっかりだな。ん、これは道か? ここだけ草が無いから恐らくそうだろう。
「…イルカさん、このオブジェはなんだ?」
「鳥居だよ。門みたいなものかな」
「へぇ」
「さ、行こ!」
なんだか雰囲気が神秘的だな。自然の中にいるというのはこういうことか。コロニーの中にいたんじゃこれは経験できないな。一度ヒバナ達も連れてきたいな。
「こんにちは〜」
「こんにちは」
人がいるのか。
「こ、こんにちは」
「こんにちは。…ねぇねぇ、今の子達超かわいくなかった?」
「ね。すごい髪の色」
全部聞こえてるんだが…。
「まだまだ私たちのことを知らない人も多いのかな…」
「登録者数だけでもこの国の1%はあるんだろ? 知ってる人ならそれ以上のはずだが」
というか、そういう人達から見つからないようにここ選んだんだろう?
「…まぁいっか! そのうち知名度は上がっていくからね」
「上がりすぎて満足に観光できないようなことにはなってほしくないんだが…」
「そうなったら変装でもすれば解決!」
「そういう問題か?」
◆
「二礼二拍手一礼…だったかな?」
「礼……作法か?」
「そうそう。お賽銭を入れた後にやるんだよ。あ、その時にお願いごとをするのも忘れずにね」
「へぇ」
願い事……。
「はい五円玉」
「これを賽銭箱に入れるのか」
この硬貨…ものすごく凝ってるな。真ん中に穴が空いていたり、全て漢字で書かれていたりとデザインがいい。あとこれはなんの植物なんだ?
─カラン…! コン…!
二礼。
私の願いか。
二拍手。
そうだな……──
一礼。
「─ミコちゃんは何お願いした? 私は『来年もここに友達と来たい!』ってお願いしたよ!」
友達か。
「イルカさんらしいな。私の願いは、『アンドロイドのみんなで平和に過ごす』ことだな」
「うん、優しいミコちゃんらしくて素敵な願いだね♪」
「素敵って言われてもな…隊長だって同じようなことを願うだろ」
「あー、ヤヨイちゃんはそうだろうね。なら、ミコちゃんも同じくらい仲間思いってことだよ」
「…そうか」
隊長と私では重みが違うが、それでも面と向かって言われると恥ずかしいな…。
「あ、おみくじあるよ! 引こ!」
「おみくじ?」
「今後の運勢を占うやつだよ」
「占い……占いか」
「科学的じゃないのは好きじゃない?」
「うーん……嫌いというわけではないが、特段好きでもないな」
そもそも運勢なんていうのは予測出来ないものだと私は思っている。カオス理論だかバタフライエフェクトだか知らないが、原子一つ…いや素粒子一つで無数に未来は存在する。
それを『占いで当てる』なんて、逆にどう信じればいい?
……ま、一喜一憂できるという点では面白いとは思う。
「そっか。じゃあ引こっか!」
「…私も引くのが当然みたいに言うな? …引くが」
「ひとり200円…こんにちはー。2つお願いします!」
「こんにちは。ではそちらから2つ、どうぞ」
「はーい」
一番上が大吉、一番下が大凶か。
「ミコちゃんどっちがいい?」
「なら…右手ので」
「じゃあ私は左手の方だね。大吉こ〜い…小吉!」
「私は、中吉か。上から三番目、そこそこか」
なんだか色々書いてあるが、悪くないな。
「このおみくじって持って帰るのか?」
「えっとね、なんか結ぶ場所があって…そこのだね」
後ろにあるこれか。
「結んでから帰る理由がなんかあったと思うんだけど、忘れちゃった」
「理由があるならそれで充分だろう。結び方とかあるのか?」
「結んであれば何でもよかったと思うけど、キレーに結ぶ方法ならあるよ!」
「どうやるんだ?」
「まずは縦に細長くなるように折って──」
◆
「最初の場所に戻ってきたな」
「初詣はこれで終わりだよ! どうだった?」
「楽しかったよ」
「やった!」
普段と比べたら、落ち着いて雰囲気や文化を楽しめたからな。
「まだまだ時間あるなぁ。夜は、お寿司食べるからお昼はどうしよっか? 食べたいのある?」
「そんなこと言われても、私は日本の料理なんてほとんど知らないぞ?」
「じゃあ私が決めるけどいい?」
「あぁ、いいぞ。その方が美味しいものを食べられる気がするしな」
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