第41話

 

さっきのイルカさんの様子、いつもと違ってなんか変だったような。心ここに在らずっていうやつか?


ベッドの上で考える。


海鮮丼を食べ終わってから暫くは普段と変わらなかった、と思う。


変わったのはその後か。東京を歩いてただけなんだがな……。


分からないな。現時点では。


反応からすると、もしかしたら触れてほしくない事なのかもしれない。だから今、私はこうやって健康な体を休めているわけだが。


だが初めて来た星で、あんな風になっているのは一体どういうことなんだ?


「……はぁー」


こういう事を考えるのは隊長の役目だろ……。なんで私が…。


……案外、明日にはいつもの調子に戻ってるんじゃないか?


そういえば、明日の予定は全く聞いてないな。明日も今日と同じようにどこかで歩くのだろうか。


ま、暫くは地球の近くで配信するだろうな。いくらいつでも来れるとはいえ、人に囲まれるのは疲れる。私は。イルカさんがどうかは知らない。



【宇宙からの】イルカちゃんについて語るスレ【来訪者】



:非常に良かった



:言いたいことが色々ありすぎてヤバいわ



:初っ端宇宙から始まって東京に瞬間移動とかとばしすぎだろ



:見てるこっちの頭がおかしなるで



:なんだかんだでついてくるミコちゃんかわいい



:生で見たかったなぁ



:ワイ、イルカちゃんと握手したでwww



:は?



:ゆ゛る゛さ゛ん゛!



:夜道には気を付けろよ?



:ブチ切れてて草



:俺はイルカちゃんとツーショット撮ったからそれでいいわ



:配信でいたのお前かw



:てか東京住みの視聴者は大体会いに行ったと思うんだよな



:私は横浜に住んでますが早起きして会いに行きましたよ!



:道民は気軽に東京まで行けないわ



:寒い中よく行けるよな。炬燵でぬくぬくしてたわ



:イルカちゃんもミコちゃんも生で見たけど、超絶可愛いわ。朝から東京行く価値はあった



:むしろお釣りが来るレベル



:QOL爆上がりですわ!



:あのサインもらった店行ってみたいな…



:すごい美味そうな海鮮丼でしたね



:美味しいことくらいしか味の感想がなかったのはウケる



:見返してきたけど、マジで美味しい美味しい言ってるだけで草



:ミコちゃんも言ってることはイルカちゃんと変わらないからな



:あのサイン欲しいんですけどどうすればいいですか?



:飲食店を経営して、イルカちゃんが来るのを待つ



:確率低すぎぃ!



:そもそも次いつ来るかわからんからなぁ



:ほぼ毎日配信してんだしこれからチャンスは結構あんじゃね?



:意外と明日も地球に来たりして



:お、もうネットニュースになってるぞ



:い つ も の



:ノ ル マ 達 成



:今回はいつにも増して早かったですねぇ



:…なーんか普段より取り上げてるトコ多くね?



:そりゃあねぇ?



:待ち望んだ地球外生命体の地球来訪だぞ?



:政府が扱いに困るレベルだしなぁ



:日本以外もコンタクトを取ろうとしてるとかなんとか



:マジで…ってまぁ、そうだよな



:これは明日からのニュース番組が楽しみで仕方がない



:まーたワイドショー番組で変な事言うやつが出てくんだろーな



:イルカちゃんたちのイメージを下げることだけはやめて欲しい



:風向きはイルカちゃんにあるから大丈夫でしょ



:見た目が美少女で良かったな



:これ来たのがお兄様だったらもっとパニックになってただろwww



:あれはビビるw



:でもイルカちゃんも竜形態になれるんだよなぁ…



:それがいいんじゃないか



:美少女がドラゴンになれる…。ロマンだァ……。



:イルカちゃんtweeterやってないんだっけ?



:やってないな



:やってたらやってたで大変なことになりそうだよな



:イルカちゃん個人への連絡手段ないの不便



:多分イルカちゃんはそういうの気にしてないと思う



:確かに




─コンコン


「起きてるか星…イルカさん」

『ぅぁー…』


なんだその声。判断に困るわ。勝手に入るわけにも行かねぇしなぁ。


「朝ごはん出来てるから、早く来いよ」

『はーぃ……』


ギリ起きてるな。なら先行ってるか。


……やっぱ他人とは思えないんだよな。いっその事直接聞くか?


いや、でもなぁ……これで星羅じゃなかったらどうすんだ? 正面切って『私はあなたの妹じゃない』って言われたら、正気でいられるかわからんぞ。


ってか今日月曜日だから普通に講義あんじゃねぇか。


早く食べて行かないと間に合わん。


「いただきます」



「ただいまー」

「おかえり!」


なんでまだいるん???


いや、別にいちゃ駄目なんて言わないが……。つーかこの家とのアンマッチ感がすごい。


「…その服」

「あ、これお母さんが着ていいよって言ってくれたんだけど……ダメだった?」


その表情…ズルいだろ……。


「汚さなければ、いいぞ」

「わかった! ありがとう! あ、今日大学どうだった?」

「そこそこ楽しかった」

「具体的に!」

「……ちょっとした心理学で遊んだってところかな」


あれを講義って言っていいのか…。


リュックを置いて手を洗いにいく。


「えー? 大学行ってまで遊んでたの? 勉強は?」

「してないわけじゃない。そー言う…イルカさんはどうなんだ?」

「イルカちゃんって呼んでほしいんだけど…それはそれとして、今日は大阪に行ったんだ! ミコちゃんと一緒に行ったんだけどね─」



「それじゃあ、また来るね! 次は一緒にゲームしようね!」

「あぁ。待ってるよ」

「うん!」


そう言って、俺の前からいなくなった。


……結局聞けなかった。


『また』、ね。


聞きたいこと紙に書いておくか。

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