第35話 準備2

 

2回目のワープもばっちりおっけー!


……おっけーなんだけど…。


「なんだこの星……」

「マグマ…ですね」

「お兄様、ここで大丈夫なの?」

「…これでも安定している星だ。設置場所としては85点だ」

「さっきの砂漠遺跡より点数低いね」

「当たり前だ。……早く俺の背中から降りてくれないか?」

「「「どこに!?」」」

「どこって……マグマの上以外ないんだが?」

「「いやいやいやいや!」」

「流石にマグマの中では私達アンドロイドは溶けてしまいます!」

「……そうか。ならこうしよう」


─ゴォォォォ!!


「うわ……」

「ドラゴンブレス…!」

「……まるで吹雪ですね」


力技すぎるでしょお兄様…。たしかに冷やしたらマグマは岩になるけどさ…。


「もう少し待て」

「……ちょっと寒いんだけどー?」

「今の温度はマイナス50度ですね」

「へくちっ……!」


!?


「え、何…?」

「「かわいい」な」

「んなっ…!?」


てゆーか、アンドロイドでもくしゃみするんだね。


「……そろそろいいか」

「結構寒いな……」

「…もう終わった。直に暖かくなる」

「この星ならそうだよね。でも、そしたらまた岩溶けちゃわない?」

「分子構造を組み替えながら作ったから問題ない」

「……??」

「相変わらず凄いですね…」

「……私だってこれくらいできるし」

「…フッ」

「あー! 今笑ったでしょ!」

「…いや? 気のせいじゃないか?」



「─これで三つ目の設置も完了ですね」


つ、疲れたー!


「イルカさん、大丈夫か?」

「むり〜……」

「もう5時間も作業を続けていましたからね…」

「……紅茶でも用意するか…」


ぐえ〜……。


「少し休憩したら、その後は別行動だ」

「別行動?」

「あぁ。俺とヤヨイ、フィーとミコで分ける」

「なんで?」

「…この星から行ける距離に、寄り道したい場所がある」


んー…よくわかんないけど、ワープ装置の設置はふたりでも出来るし多分大丈夫でしょ。


「私とレギオン様で、ですか?」

「そうだ。あと一時間で出発するから準備しておけ」

「了解しました。ですが、理由を聞いてもよろしいでしょうか?」

「そうだな……いや、サプライズは残しておくものだろう?」

「粋な計らい、ってやつだね!」

「私はなんとなくわかったが、サプライズというなら黙っておくか」



「……ミコちゃん、配信しよ!」

「今からか!? あとここほとんど海だぞ!?」

「だからだよ! 思い立ったが吉日ってことで……よし! はーい! みんなこんばんは、かな? いつもの星とは違う星からお送りするよ!」


:こんばんは!

:こん!

:そっち明るいな!?

:どこだよそこ!?

:海しかねぇ!

:水の上に立ってません?

:バリアだろ


「いえーす! バリアってやっぱり便利だよね」

「本来の使われ方をしてるとこを私は見たことがないぞ…」


:大丈夫やミコちゃん、俺らもや

:今までだと水の流れをせき止めたくらいか?

:それすら防御目的じゃないんだよなぁ

:草


「ところで! …今日なにしよっか?」


:決めてないんかw

:そんなことだろうとは思った

:い つ も の

:またミコちゃんと将棋でもする?


「海の上で将棋とか正気か?」

「……ねぇ、今のって『しょうぎ』と『しょうき』を掛けたダジャレ?」

「断じて違う!」


:じゃあ無意識…ってコト?!

:むしろ笑うわ

:真顔で打ってそう

:ミコちゃんェ…


「お前ら……。ていうか、この星の説明とか諸々の経緯とか話さなくていいのか?」

「あ、そうだね」


:いつもの星と全然雰囲気が違うよな

:凍ってないの凄くね?

:そこ酸素とかあるのか?

:海めっちゃ綺麗


「まず、ここはいつもの星からだいたい30億光年の位置にあるよ!」


:……????

:30億!?

:…もしかして地球まであと10億光年!?


「10億光年のワープを3回だからな……。私は今人生で最大に貴重な体験をしているんじゃないだろうか……?」

「そうだね! でも多分そのうち慣れると思うよ?」

「慣れたくない…」


:なんか今耳を疑うような事が聞こえた気がするんだけど気のせいか?

:確実に言ったよ

:10“億”光年のワープってなんだよ……

:ワンチャン地球からでも見えるか…?

:無理だろ


「それで、この星にいるのはワープ装置を置くのにピッタリな位置にあるからだね!」

「生物が存在せずに、惑星の寿命も長いからな」


:都合がいいってことか

:生き物居ないのね

:また変な生物が見れると思ったんだが…

:仕方ないよ

:ワープ装置どこに置いてんの?


「カメラを挟んで反対側にあるよ! すごく頑張って設置した!」

「意外と底まで遠くて、台を造るのに苦労したな」

「ね。みんな見たい?」


:見たい

:いえーす

:見たくないやつとかいないでしょ

:当たり前じゃん


「それじゃあ、はいどーん!」


:デケェ!?

:でっっっっか

:……10億光年ワープ出来る装置にしては小さいのでは?

:こういう扇風機見たことあるわ

:羽のない扇風機じゃんwww


「「……羽のない扇風機だコレ!」」


:草

:www

:おいどうすんだ、もうそれにしか見えなくなったじゃねぇかw

:デザイン狙ってやっただろこれwww


「駄目だ…! 一度そう思ったら、完全に扇風機にしか見えなくなった…!」

「お兄様……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る