第34話 準備1

 

「もしもーし、お兄様ー」

『…どうした?』

「この前、超超超長距離ワープがどうのこうのって言ってたじゃん? あれどうなったの?」


1か月くらい前の。


『あぁ…それなら昨日完成させた』

「そうなの!? じゃあ、それ1つで40億光年先まで行ける!?」


ついに地球まで遊びに行ける…!?


『いや、無理だ』


え?


「な、なんで!?」

『最大距離が十億光年だからな』

「えぇー? どうしても無理?」

『あぁ。…だが』

「だが?」

『このワープ装置は五つ造った』


…!!


「てことは! 地球まで行けるよね!?」

『そうだ。……ただ、直接ワープするのはやめておけ』

「さすがにそれはわかってるよ。同じ銀河内にワープしてから行けばいいんでしょ?」

『……一応、中心を挟んで反対側にしておいた方がいいだろう』

「わかった! じゃあ船の準備もしないとね!」


拡張空間にそこそこの大きさの船があるから、ちゃんと使えるか確認しとかないとね!


『最後に一つ。ミコには感謝しておけ。彼女のおかげで、予定より二年も早く終わった』

「わかった! 今からミコちゃん連れてそっち行くね!」

『……まぁいい』


◆◆◆


「なぁ、一ついいか?」

「? どしたの?」

「どうしたんですかミコさん?」

「なんで……なんで……」




「なんでこの星は凍ってんだよぉぉおお!?」




「「…??」」


何を言ってるんだろミコちゃんは。


確かに辺り一面凍ってて、明らかに廃墟のビルがあるし、生物の気配は微塵も感じられないけど、そんなに驚くことじゃないでしょ。


「お兄様の拠点なんだから当然だよ?」

「そうですよミコさん。凍っているこの星は、レギオン様の拠点に相応しいではないですか」

「なんで隊長がそっち側なんだ!? レギオン様は魔王かなんかか!?」

「お兄様は次期竜王候補だよ?」

「えっ……」

「そろそろ行きましょうか、ドルフィン様」

「おっけー! れっつごー!」

「ごー」


いいね! ヤヨイちゃんのノリが良くなった!


「あ、ちょ……待てって! …あだっ!」


うーん…! 風が涼しくて気持ちいいね!



「なんで私はこの星にいるんだろう……?」

「私と一緒にワープしたからじゃん」

「いやそうじゃなくてだな!? イルカさんひとりで来るのじゃ駄目だったのか?」

「ミコさんもワープ装置の開発に手を貸しましたよね? いくらレギオン様がなんでも出来るとはいえ、リスクを最小限に抑えることは当たり前のことです」

「それは…そうだが」


納得いってない?


「ミコちゃんはお兄様からそれだけ期待されてるってことだよ!」

「……あ、なんかバイオ変換炉が痛くなってきた…」


……胃…?


「大丈夫ですよ、ミコさん。あなたの腕は一流です。自信を持ってくたさい」

「そうそう! この前のシューティングスターを作る時もすごかった!」

「…ふたりがそう言うなら、頑張るしかないか」


◆◇


「ここが……レギオン様の拠点……」

「すごいなこれ。本当にひとりで造ったのか? ヤバいなハイドラ…」


…隣のイルカさんもやろうと思えばここみたいに、デカい元島国を丸ごと『造船所』に出来るのか? もしそうなら……別にどうもしない、というか出来ないが。


「すごいでしょ! お兄様はものづくりの天才だからね!」

「いや、確かに造ってるけどな? ものづくりの規模で済ませていいものじゃないだろ…」

「そうかな?」


どう考えてもそうだろ。少なくとも私達アンドロイド基準ではな。


つーか、隊長も何写真撮りまくってるんだ。後で私にもデータくれ。


─カガー…


『…来たか。そのまま前に進めば問題ない』


スピーカー……あれか。


「りょーかーい! 行こっか!」

「わかった」

「はい」


改めて周りを見てみると、まるで大きな工場と思うほど至る所にクレーンやフロートコンベアがある。今のところ何かを運んだりはしていないようだな。


屋根がなくて大丈夫なのかと思ったが、島の中央にあるあの塔……あれに天候操作装置の類が搭載されているとみた。間違いない。


…金掛けてんなー。もうそんな感想しか出ないわ。普通、個人でここまでやるか? 何作る……っていったら、もうあの船を造り終えてるわけだが。


…………良いなぁ。


こんだけの設備がありゃあ、もうなんでも作れるんじゃないか? それこそタイムマシンとか。ワープはもうあるしな。


「この建物でいいのかな? お兄様ー! 入るよー!」


……やべぇ、緊張してきた。


「…開かないんだけどー!?」

『内開きだ…』

「あっ、ホントだ」


落ち着け……。


「お兄様ー! 久しぶりー、でもないか!」

「そうだな。一年も経ってない」

「「ッ…!」」

「ヤヨイとミコも、こんにちは、だな」

「「こ、こんにちは」」


…大きい。やっぱちょっと怖いわ、7つ首。


◆◇


「それで、これさ。大きすぎない?」

「…そうか? 俺の船にある装置よりも小さいんだが?」

「いやおっきいよ!? ふたりもそう思うよね!?」

「私には相場が分かりませんのでなんとも…」

「ミコちゃんは?」

「……レギオン様基準ならそこまででもないと思うぞ」

「えー?」


やっぱり普段から竜形態でいるお兄様が作ると、どうしてもこうなるのかなぁ。



「…そろそろやるが、準備できたか?」

「ワープ装置をワープさせる、ってゆーのを繰り返して40億光年先まで行くんだよね? 問題なし! ふたりもそうだよね?」

「はい」

「いつでもOKだ!」

「……やるぞ」


起動したワープ装置から青白いレーザーが放たれ、空間に巨大な穴が開いた。

 

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