第33話

 

今日の配信も終わって、今いるのはコロニーの休憩所。誰もいないのかと思ってたら、ミコちゃんがいた。意外と本とか読むんだね。


「ふぁー……眠い……」

「ハイドラでも眠くなるんだな」

「そうだよー…生物だもん…」

「……普段ちゃんと寝てるのか?」

「寝てるよー」

「どのくらいだ?」


寝るのが日付が変わるちょっと前くらいで、起きるのが日の出より少し後だから……。


「この星換算で5時間くらいだね」

「…私はハイドラの生態に詳しくないからよく分からないんだ。でもそれ、ほぼ確実に睡眠時間足りてないんじゃないか?」

「うんー……」

「……空いてる部屋があったはずだ。そこならちゃんとしたベッドがあるから、そこで寝るといい」

「案内してー……」

「手のかかるドラゴンだな…」



今日一日暇だな……。何をしようか。


ここに来てからは私がする仕事もほとんど無くなった。それ自体は争う必要が無いという意味でもあり、すごく嬉しいことなのだが……はっきりいって、ニート同然の生活をしているような気がしてならない。終身雇用とは。


コロニー周辺の調査も終わり、食料燃料の確保にも困らなくなった。むしろ少し余るくらいだ。私のやることは無い。


強いて言うならヒバナの遊び相手くらいだろうか? …仕事じゃないか。


この前のイルカさんの手伝いなら、ギリ仕事に入るか? 報酬と称して高純度のエメラルドももらったしな。


…………いやこれどうするんだ。ひとりで所持していい大きさと純度じゃないだろ絶対。貰った時はただ喜んだが、冷静に考えたら受け取るべきじゃなかったか?


だが、イルカさんは『これ売っておいしいもの買ってね!』と言っていたな……。つまり、イルカさん達の国ではそれくらいの価値ということなのか……?


……やめよう。これ以上は処理落ちしそうだ。金庫にしまっておいて、いつか困った時に使う。それでいいだろう。少しもったいないが、写真は撮った。


「さて……」


今日は何をしようか全く思いつかない。


昨日は一日中本を読んだが、何度も読んだやつだからな……。流石に今日もまた読むか、とはならない。


とりあえず、整備室に行ってから考えるか。部屋にいるんじゃ引きこもりになってしまう。



「あー! 飛車取られたー!」

「それはそうだろ。取れる位置にあるんだからな」


……なんで私は朝から働かずに、イルカさんと『将棋』というボードゲームをしているんだろう。


でも楽しいなこれ。


:盤面がひでぇww

:イルカちゃんボロボロやんけ

:33-4

:な阪関無!


「もうここから勝てるビジョンが視えない……みんな助けてー!」


:金銀桂馬でどうしろと?

:飛車角両方取られてるのはキツイわ

:ミコちゃん強いな

:アンドロイドだし

:イルカちゃんが弱いんじゃ…?


私もそう思う。今日初めてルールを教えてもらった私でも圧倒出来てるわけだからな。


重要なのは飛車と角、そして王を守りながら詰まないように相手を詰ませる。それで勝てる。


口で言うのは簡単だが実際にやるのは難しい? そんなことはない。私の頭の中にはシミュレーションシステムがあるからな。予測演算と言い換えてもいい。


「イルカさん、どうするんだ?」

「うぅ……。銀を前に……やっぱ金を右にしてターンエンド!」

「それ絶対間違ってるだろ……」


:カードゲームじゃないんだぞw

:あれ、それだと不味くねーか…?

:おっと…?


「イルカさん」

「え、なに?」


桂馬を右前に動かして、成桂。


「これで詰みだ」

「え? だってこの銀で取れ、ば…………いや、玉将…………」


フリーズしちまったか。


:あっ…

:えー、どう動かしても負けです

:完全な詰み状態

:飛車×2!


「ま、まいりました……ガクッ」


それ口で言うのか……。


「私の勝ちだな」

「うーん、この前ヒバナちゃんとやった時も負けちゃったし…」


ヒバナともこれやったのか。ま、ヒバナは最新型だからな。負けるのも仕方ない。


:負けてばっかだな

:イルカちゃんはパワーに数値振ってるから…

:防御力も高いぞ

:あの……賢さは……?


「言ってやるな」

「それミコちゃんも私が頭悪いって思ってるってこと!?」

「…ソンナコトナイゾ」

「急にカタコト!?」


:草

:草

:わかっててやってるだろwww

:かわいい


ん゛ん゛っ……ま、まだちょっと慣れないな。


「んー、もう1回やろ! 次は私が勝つから!」

「そうか。いいぞ、次も私が勝つからな!」



「ダメだー! 勝てないー!」

「いや、かなりギリギリだったぞ? あと何回かやれば負けるかもな」


:けっこう惜しい

:イルカちゃんすげぇな


さすがはハイドラだ。成長率がとんでもないことになっているよ。


「……そろそろお昼にしないか? もう12時47分だ」

「お腹空いた? 私はあと2週間は大丈夫だけど……」


二週間……私達も隕石からエネルギーを補給できるようにした方がいいのか…?


:ユーバー頼んだわ

:カップ麺です

:ワイは社食やで


「…私は何か食べたい気分なんだが、一緒にどうだ?」

「おっけー!」


よし、休憩を兼ねての食事と洒落こもうか。


◆◆◆


……結局遊んでばっかだったな、一日中。……あのカレー美味しかったな。


─プルルルルルルルル…!


わざわざ電話? 一体誰から─


「レギオン様!? え、あ、どどうするる?? ととりあえず、出ないとまずいよな??」


─ガチャッ


「『もももしもし!』」

『…落ち着け』

「『す、すみません。ご、ご要件はなんd…でしょうか』」

『あぁ、実は──』

 

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