第33話
今日の配信も終わって、今いるのはコロニーの休憩所。誰もいないのかと思ってたら、ミコちゃんがいた。意外と本とか読むんだね。
「ふぁー……眠い……」
「ハイドラでも眠くなるんだな」
「そうだよー…生物だもん…」
「……普段ちゃんと寝てるのか?」
「寝てるよー」
「どのくらいだ?」
寝るのが日付が変わるちょっと前くらいで、起きるのが日の出より少し後だから……。
「この星換算で5時間くらいだね」
「…私はハイドラの生態に詳しくないからよく分からないんだ。でもそれ、ほぼ確実に睡眠時間足りてないんじゃないか?」
「うんー……」
「……空いてる部屋があったはずだ。そこならちゃんとしたベッドがあるから、そこで寝るといい」
「案内してー……」
「手のかかるドラゴンだな…」
□
今日一日暇だな……。何をしようか。
ここに来てからは私がする仕事もほとんど無くなった。それ自体は争う必要が無いという意味でもあり、すごく嬉しいことなのだが……はっきりいって、ニート同然の生活をしているような気がしてならない。終身雇用とは。
コロニー周辺の調査も終わり、
強いて言うならヒバナの遊び相手くらいだろうか? …仕事じゃないか。
この前のイルカさんの手伝いなら、ギリ仕事に入るか? 報酬と称して高純度のエメラルドももらったしな。
…………いやこれどうするんだ。ひとりで所持していい大きさと純度じゃないだろ絶対。貰った時はただ喜んだが、冷静に考えたら受け取るべきじゃなかったか?
だが、イルカさんは『これ売っておいしいもの買ってね!』と言っていたな……。つまり、イルカさん達の国ではそれくらいの価値ということなのか……?
……やめよう。これ以上は処理落ちしそうだ。金庫にしまっておいて、いつか困った時に使う。それでいいだろう。少しもったいないが、写真は撮った。
「さて……」
今日は何をしようか全く思いつかない。
昨日は一日中本を読んだが、何度も読んだやつだからな……。流石に今日もまた読むか、とはならない。
とりあえず、整備室に行ってから考えるか。部屋にいるんじゃ引きこもりになってしまう。
◆
「あー! 飛車取られたー!」
「それはそうだろ。取れる位置にあるんだからな」
……なんで私は朝から働かずに、イルカさんと『将棋』というボードゲームをしているんだろう。
でも楽しいなこれ。
:盤面がひでぇww
:イルカちゃんボロボロやんけ
:33-4
:な阪関無!
「もうここから勝てるビジョンが視えない……みんな助けてー!」
:金銀桂馬でどうしろと?
:飛車角両方取られてるのはキツイわ
:ミコちゃん強いな
:アンドロイドだし
:イルカちゃんが弱いんじゃ…?
私もそう思う。今日初めてルールを教えてもらった私でも圧倒出来てるわけだからな。
重要なのは飛車と角、そして王を守りながら詰まないように相手を詰ませる。それで勝てる。
口で言うのは簡単だが実際にやるのは難しい? そんなことはない。私の頭の中にはシミュレーションシステムがあるからな。予測演算と言い換えてもいい。
「イルカさん、どうするんだ?」
「うぅ……。銀を前に……やっぱ金を右にしてターンエンド!」
「それ絶対間違ってるだろ……」
:カードゲームじゃないんだぞw
:あれ、それだと不味くねーか…?
:おっと…?
「イルカさん」
「え、なに?」
桂馬を右前に動かして、成桂。
「これで詰みだ」
「え? だってこの銀で取れ、ば…………いや、玉将…………」
フリーズしちまったか。
:あっ…
:えー、どう動かしても負けです
:完全な詰み状態
:飛車×2!
「ま、まいりました……ガクッ」
それ口で言うのか……。
「私の勝ちだな」
「うーん、この前ヒバナちゃんとやった時も負けちゃったし…」
ヒバナともこれやったのか。ま、ヒバナは最新型だからな。負けるのも仕方ない。
:負けてばっかだな
:イルカちゃんはパワーに数値振ってるから…
:防御力も高いぞ
:あの……賢さは……?
「言ってやるな」
「それミコちゃんも私が頭悪いって思ってるってこと!?」
「…ソンナコトナイゾ」
「急にカタコト!?」
:草
:草
:わかっててやってるだろwww
:かわいい
ん゛ん゛っ……ま、まだちょっと慣れないな。
「んー、もう1回やろ! 次は私が勝つから!」
「そうか。いいぞ、次も私が勝つからな!」
◆
「ダメだー! 勝てないー!」
「いや、かなりギリギリだったぞ? あと何回かやれば負けるかもな」
:けっこう惜しい
:イルカちゃんすげぇな
さすがはハイドラだ。成長率がとんでもないことになっているよ。
「……そろそろお昼にしないか? もう12時47分だ」
「お腹空いた? 私はあと2週間は大丈夫だけど……」
二週間……私達も隕石からエネルギーを補給できるようにした方がいいのか…?
:ユーバー頼んだわ
:カップ麺です
:ワイは社食やで
「…私は何か食べたい気分なんだが、一緒にどうだ?」
「おっけー!」
よし、休憩を兼ねての食事と洒落こもうか。
◆◆◆
……結局遊んでばっかだったな、一日中。……あのカレー美味しかったな。
─プルルルルルルルル…!
わざわざ電話? 一体誰から─
「レギオン様!? え、あ、どどうするる?? ととりあえず、出ないとまずいよな??」
─ガチャッ
「『もももしもし!』」
『…落ち着け』
「『す、すみません。ご、ご要件はなんd…でしょうか』」
『あぁ、実は──』
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