第27話

 

【圧倒的】ヤヨイさんについて語るスレ【美人】



:すごいデカいと思いました



:そうだな。ポニーテールが



:恐ろしく早い軌道修正…俺でなきゃ見逃しちゃうね



:あんな高身長でスタイル抜群の美人なかなかおらん



:そこらのモデルが可哀想に……これイルカちゃんの時も言ったな



:あれで軍人なんだろ? やべーよな



:スナイパーって憧れるー



:高身長紫髪ポニテスタイル抜群外見二十代前半アンドロイドスナイパーか



:同じ宇宙に存在するってマジ?



:マジだよ。Nasyaがイルカちゃんのカメラから来てる電波に宇宙由来の粒子かなんかが混ざってるみたいなこと言ってた



:へぇー。Nasyaやるやん



:なんで上から目線なんだよw



:別にどうでもいいわ。これからも俺はあのふたりを推し続けるだけだぜ



:控えめに言って、ふたりして美人だからな



:ヤヨイさんの髪もふもふしたい



:でも言うてアンドロイドやし、容姿とか自由に変更出来るもんやないんか?



:知らん……が、容姿について変える気はないみたいなこと言ってた気がする



:あれか。空気が死んでたモミジエリア配信のやつ



:言ってたか?



:最後の方にあるで



:母親の容姿に似せてるとかなんとか



:あの時は珍しくイルカちゃんが黙ってたなぁ…



:ヤヨイさんの…色々抱え込んでそうなあの表情……ものすごくゾクゾクする…!



:うわ



:人(?)が苦しんでるってのによぉ…



:なんだァ…テメェ…?



:スレ民、キレた!




見ていたサイトを閉じ、スマホのホーム画面に戻る。


Nasyaも気になってるんだな。これは本当に首脳会談……いや、どうだろうな。


さて─


「そんで? ハロウィンは上手くいったのか?」

「ギクッ…!」

「口で言うなよ」

「……まぁまぁまぁまぁ、もうそんな過去のことなんて忘れましょうよ!」


それは上手くいかなかったって言ってるようなもんだろ……。


「ま、俺は面白かったからいいけどな。そんで、織歌……それ、この前の配信見てんのか」


ウチにノーパソ持って来てまでこーゆーことしないでくれねぇかな? 別に暇になったところだし、構わねぇけどよ…。


「うへへ……!」


前言撤回。やっぱ家に入れん方が良かった気がする。


「その笑い方やめろよ…」

「ヤヨイちゃんかわいいなぁ…!」


ダメだこいつ。何も聞こえてねぇ。


「ていうか、『ちゃん』ってお前…。絶対年上だろ、ヤヨイもイルカも」

「さんをつけろよデコ助野郎!」

「俺は舎弟じゃねぇし禿げてもねぇよ! つーか、聞こえてんじゃねぇか…」

「年齢関係なく、イルカちゃんはイルカちゃんだし、ヤヨイちゃんはヤヨイちゃんなんですぅ!」

「…そうかい」


永遠の18歳みてぇなもんか? …違うか。


でもまぁ、分からなくは無い。結局のところ、実年齢より外見が何倍も若く見えてるわけだからな。


原因としたら、ドラゴンもアンドロイドも寿命が長いからなんだろうな。それこそ、人間とは比べ物にならないくらいには。


例えばハイドラの平均寿命が1000年くらいだとして、150歳くらいじゃまだまだ若い部類に入るわけだしな。精神的な成長も遅い可能性も高そうだし。


アンドロイドの方は……アンドロイドに寿命とかあるのか? 機械『生命体』とは言ってたが。それでも、少なくとも人間よりは長く生きるだろうな。


「コメントコメント……これでよし」

「なんて書いたんだ?」

「『スペースコロニーとかあるなら、モビルスーツの一つや二つくらいありそう』って書きました」

「なんだ、コメントにはまともなこと書いてるのか」

「いや、最初は『ヤヨイちゃんが゛わ゛い゛い゛な゛あ゛』って書こうとしたんですけどね?」


やべぇなおい。だが、よく踏みとどまっ─


「既に書いてる人がいたのでやめました」

「ウソだろ…」


書いてるやついんのかよ……。いや、まぁそりゃチャンネル登録者数もう少しで100万だしなぁ。それくらい書くやつの1人や2人、いてもおかしくないか。


現に目の前のコイツは書こうとしてたやつだしな。


「なので、ありきたりなただの感想になっちゃいました……」

「別に大喜利じゃねぇんだし、それで問題ないだろ。なんで落ち込んでんだよ」

「だってぇ! インパクトあること書いてあったらイルカちゃんに認知されるかもしれないじゃないですかぁ!」


だからって、『ヤヨイちゃんが゛わ゛い゛い゛な゛あ゛』はないだろ……。


「そもそも配信者がコメントを見たからって、その人を覚えるとは思えないんだが……」

「それでも、僅かな可能性に賭けるしかないんですよ私たちは…!」

「真剣な顔で言うことじゃねぇよ!」


あと、その可能性1%もないだろ。


「まぁ、お前がそれでいいならいいけどよ」

「……先輩ってやっぱりツン─」

「何だ?」

いえウェ! 何もマリモ!」


なんて?



「いやぁ、夕ご飯までご馳走になっちゃって悪いですぅ。ありがとうございました〜」

「いいのよ蒼海ちゃん。賑やかな方が楽しいわ」

「悪いって思うならおかわりすんじゃねぇ。明日の分が無くなったじゃねぇか…」

「カレーをおかわりするのは常識ですよ先輩」

「そんな常識捨ててしまえ」


…てゆーか、そもそも晩御飯まで帰らずにウチに残り続けるんじゃない。それこそ非常識だろ。


「あ、星羅ちゃんに会ってから帰りますね。部屋どっちでしたっけ?」

「……廊下の奥の右」

「ありがとうございます先輩」


…やっぱちょっと常識欠けてる気がすんだよな。


「いい子よね〜、蒼海ちゃん。あんたにはもったいないくらい」

「別にあいつとはそういうんじゃないから。ただの先輩と後輩ってだけだよ」

「そんなこと言ってると、愛想尽かされるわよ? ちゃんと向き合いなさい」

「…わかっ、た」

「それと、女性をひとりで帰らせようとするんじゃないよ。車で送ってやんなさい」

「わかったよ」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る