第26話

 

「ここら辺から見るのが一番キレーかな!」


:随分高い所まできた?

:山頂付近だしそこそこ高い

:1200より上なのは確定

:木がもうないもん


「さてさて、お待ちかねといこーか!」

「おぉ、これは素晴らしい景色ですね。こんな所があったとは…」


:早く見させてくれ!

:ヤヨイさんのリアクションですげー綺麗な景色だってのが分かる

:どんな光景が待っているのか…


カメラの向きを変えて、と!


「じゃーん! 紅葉した森だよ!」


:うおー!?

:一面真っ赤だ!

:すげぇ! なんだこれ!?

:モミジか?

:これは絶景ですわ!

:待って、めちゃくちゃ広くない?

:やばすぎだろ


「どう? すごいでしょこの景色! 私も初めて見た時はすごいびっくりしたからね!」

「……!!」


:そら驚くわ

:ヤヨイさんw

:目がキラキラしとるなw

:かわいい

:…いや待て。なんか物理的に光ってねぇか?


「え? あ、ホントだ! 何それ!?」

「! 申し訳ございません。つい興奮して、思わず写真を撮ってしまいました」

「いやいや! 謝る必要ないからね? むしろ、この景色にそこまで気に入って貰えて私も嬉しい! え、てゆーか何? 目で写真撮れるの?」

「はい」


:何それすごい

:めっちゃええやん

:これが噂のカメラアイですか

:カメラアイ(物理)

:草


「……その写真データってさ、このカメラに送れたりする?」

「はい。接続が出来れば送れるはずです」

「やった! じゃあ、後でたくさんよろしくね!」

「! 了解しました」


:送れるのねw

:すげーなアンドロイド

:イルカちゃんが物理方面ならヤヨイさんは機械方面か

:物理というか生物では?

:どっちもだろ

:この後どうすんの?


「そうだねー…それじゃあ、あの森に行こうかな!」

「ドルフィン様、予定ではここに着いたら終了だと私は認識しているのですが…」

「そうだよ? ちゃんとした計画はここで終了。ここからはノープランだね!」

「し、しかしこの前は─」

「普段はこんな感じだよ! その方が楽しいし。だよねみんな?」


:イルカちゃんらしいな

:普段からノープラン

:せやな

:むしろそれがいいんじゃあないか…!

:ヤヨイさんは計画立てる派か


「私は……」


そんなに俯いちゃって、ヤヨイちゃんは何かに悩んでるみたいだね。


「ヤヨイちゃんヤヨイちゃん。たまにはこうやって計画なんて考えずに、未知の世界へ飛び込んでみるのも楽しいんだよ? 経験なら、もうあるでしょ?」

「……この星に来た時」

「そーゆーこと! ほら、行こ! みんなもついきてくれるよね!?」


:もちろんだぜ!

:当たり前だよなぁ?

:仕事ほっぽり出してもついてくわ

:仕事はしろw

:何処までもついて行きやすぜ姐さん!

:いやどこの組だよw

:ヤヨイさんも行こうよ!


「……たまには息抜きノープランも必要ですよね」

「よっし、決まりだね! それじゃあ、ここからは下りだよ!」



「あ、またあった四角い葉っぱ。こうも多いと、この山以外にもありそうだね」

「私もそう思います」


:まーた傾斜角度のエグいところを……

:滑り落ちそうで怖い。絶対そうはならないだろうが

:どっちも空中浮遊できるしなぁ

:もうどこにでもあるじゃんその植物


「結構降りてきたから周りが木ばっかりで、モミジ…あれモミジなのかな? まぁ、モミジみたいな木が見づらいなぁ」

「方向は間違っていないので、このまま進めば到着するかと」

「ありがとね」


:そろそろってことか

:上から見るのとじゃまた違いそう

:ヤヨイさんがいるのやっぱり良いな



「とうちゃーく! 上下左右のどこ見てもモミジ! めっちゃキレー!」

「壮観ですね……!!」


:すげぇ…!

:綺麗すぎんか?

:そこ行きてぇなぁ!

:日本にも確かこういうとこあるからそれで我慢するしかないな…

:スクショタイム!

:イルカちゃんの格好とベストマッチだな

:色的にはヤヨイさんも合うなぁ


「うーん…あ、そうだ! ヤヨイちゃん! 写真撮影会しよ!」

「写真撮影会、ですか?」

「そうだよ! ほらほら、ここに立って! そしたらちょっとだけ振り向いて、微笑む感じで笑って!」

「こ、こうでしょうか?」


:…ぐはっ!!

:ぬぐぉぉぉ!?

:は、破壊力やばい…

:チャンネル登録しました

:このタイミング…ヤヨイさんに惚れたか


「いいねいいね! そしたら次はこんな感じで──」



「やっぱり、こーゆー景色って見れば見るほど落ち着くね」

「……不思議です。あ、いえ、原理は分かっているのですが…実際に体感すると、文字データには出来ない何かがあるように感じます」


:あるあるだな

:わかる


「それは多分『心』の影響だよ。それか魂とか?」

「心……。そういえば、お母様も心については話していたことがあります」


:お、お母様?

:製造者か?


「へぇー。どんなこと話したの?」

「それが……内容は覚えていないんです。……もう、会うことも…」


め、めちゃくちゃ反応に困る…! なんて言えばいいのかわかんない…!


「……あー、えっと…」

「…すみません。つい後ろ向きな話ばかりしてしまいました」

「あ、ううん、全然大丈夫だよ! そうだよね。簡単には割り切れないよね」


:せやなぁ

:家族の事だもん。しょうがないよ

:キッツイのぅ…


「……」

「あぅ……」


空気が……空気が重い…!!


「この気持ちを、いつか整理できるでしょうか…?」

「…できるよ! 絶対に! ヤヨイちゃんにはその心があるからね!」

 

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