第25話

 

コロニーから山をひとつ越えたくらいの場所に新しい景色を見つけたから、ヤヨイちゃんを誘って一緒に行くことになった。


配信してもいいか聞いたら、快くオーケーしてくれた。


「だから、今から一緒に山を越えるところだよ!」

「こういう体験は初めてなので、楽しみです」

「それじゃあ、行くよ! みんなもついてきて!」


:ついてく!

:お、今日もヤヨイさんもいるのか

:最近は結構な頻度で出てるぞ

:当たり前のように未開拓の山を越えようとするなよw

:二人とも飛べるしなんとかなるか?


「あ、そこら辺は大丈夫だよ! ルートはあらかじめ私が考えたのを、ヤヨイちゃんたちに修正してもらったから!」

「はい。自然環境を破壊することなく、安全に配慮されたルートになっているのでご安心ください」


:じゃあ問題ないな

:環境配慮ヨシ!

:安全も確認されてるのね

:なら刀とライフル要らなくねぇかな?


「ほら、万が一のことがあるかもしれないでしょ? あと、ヤヨイちゃんに何かあったら嫌だからね」

「ありがとうございます。私も予想外の事態に備え、一応持ってきました。尤も、使うような状況に陥るとは思いませんが」


:それはそう

:そもそも傷一つつかないような2人だしな

:例えクマがいたとしてもだな


「あと、このルートは私たちで完璧に安全が確認されたら正式に道として整備されるんだよね?」

「はい。景色を見に行くと同時に、道にするための最終確認でもあります。まさに一石二鳥」


:自分たちが楽しみながら他の人の役にも立つわけか

:なんか良いねそういうの



「えっと、この木を右だから……こっちだね!」

「いえ、こちらです。ここは少し分かりづらいですね」

「あれ?」


:草

:イルカちゃんマップ見るの苦手なのか

:スマホのマップなんてそんなもんだし…

:こっちでもいるけどね

:一生駅にたどり着けない人とかなw

:イルカちゃんのには現在位置の表示とかないのか?


「ないよ! だからかな? さっきから何回も間違えてる気がする」


:気じゃなくて実際に間違えてんだよな

:さっきので6回目やで


「具体的な数字にしないでよー! てゆーか、ヤヨイちゃんは地図見るの上手くない?」

「私は自分がどの程度移動したかが正確に分かるので、現在位置を割り出すことができます。ですのでそれによるものかと」

「おぉー、さすがアンドロイドだね! なんかかっこいい!」

「お褒めに預かり光栄です」


:アンドロイドすげー!

:機械っぽいね

:そういやヤヨイちゃんはアンドロイドか

:話し方も仕草も人間にしか見えんのよなー


「たしかにね。アンドロイドごとにそーゆー違いとかってあるの?」

「機械の特性を持っている部分も多いですが、私達も生物ですので個々の特徴はあります。例えば、私と全く同じ設計図で作ったとしても、その後の環境が違えば全く違うアンドロイドになるでしょう」

「へぇー、そこら辺はハイドラとも変わらないね。って、なんか変な植物みっけ!」


:普通の生物と変わらんね

:双子でも正反対とかいるしそういう感じか

:なんだそれ

:葉っぱが四角い!

:マジで長方形だなおいw

:草


「おもしろ〜。ほら、これ見てよヤヨイちゃん」

「…初めて見る植物ですね。何故こんなにも四角い葉を付けるのか、非常に気になります。今度また来た時に詳しく調べたいですね」

「いいね。じゃあ、メモでもして…と。行こっか!」

「はい」



:かなり高い所まで来た?

:標高何メートルくらいなんだ今は

:木もめっちゃ少なくなってきた

:安全なルートなだけあってトラブルもなしで順調だねぇ


「今の標高は約1200メートル、そろそろ森林限界ですね」

「森林限界?」


:なんやそれ

:聞いたことはある…ような


「森林限界というのは、高度による環境の影響でそれ以上の高さに森林が生成されない境界線のことをいいます。これはどこでも同じ高さというわけではなく、場所によって変化します」

「なるほどー。じゃあ、この山ともっと違うところの山とじゃ全然違う可能性もあるってことね」

「はい」


:なるほどなぁ

:生物基礎かなんかでやった気がする

:全然覚えてないな

:記憶にございません


「生物基礎かぁ…。私理系科目は得意じゃないんだよね。どちらかと言えば、文系科目の方が出来るし。ヤヨイちゃんはそーゆーのある?」

「私含めアンドロイドは一度記憶したことは基本的に忘れないので、そういった意味では暗記科目は得意です。現にこの日本語もそうですし」


:完全記憶能力か

:羨ましい

:暗記科目のテスト満点取れるじゃん


「それともう一つ、私個人の高速演算能力には自信があります。演算処理テストでも、毎回上位に入っていたので」

「何それすごい! 数学のテストなら満点余裕なんじゃない!?」

「単に計算すればいいだけの試験であれば、確実に満点を取れます」


:固有能力ってロマンあるよね

:スナイパーモデルだから弾道計算能力が必要ってところなんかな?

:そう言い切れるくらいの能力か

:自信がすげーな

:頭の中にハイエンドPCがある…みたいなもの?

:メルグロス的な?


「うーん、スーパーコンピューターじゃない? ヤヨイちゃんって、円周率何桁まで計算できる?」

「それでしたら、100兆桁までは計算出来ます。それ以上はオーバーヒートを起こし、正確に計算出来ませんが」


:100兆とか言われても……

:えー、地球では今現在スーパーコンピュータを使って100兆桁に到達しました

:……てことは?

:スーパーコンピュータ<ヤヨイさんの頭脳

:エグイな


「それってどのくらい時間掛かるの?」

「お恥ずかしながら、一週間は掛かってしまいます…」

「んー、充分すごくない?」


:地球のスーパーコンピュータは五ヶ月ほど掛かったんですがそれは

:スーパーコンピュータ<(越えられない壁)<ヤヨイさんの演算処理能力

:わけがわからないよ


「ほら! やっぱりすごいって!」

「ありがとうございます」

「……この話終わり! 早く山越えよ!」

 

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