第21話 異星の命1

 

「もしもーし! どしたのお兄様? 何かあった?」

『あぁ、少しあった』

「え、大丈夫なの?」

『俺は問題ない。…今フィーのいる星に、知的生命体はいるか?』

「んー、多分いない。来る前はいないって思ってたんだけど、なんか遺跡とか地底都市とかあったんだよね」

『…そうか。なら問題はないか』

「? どゆこと?」

『今から説明する。少し長くなるが─』



「はーい! みんな! おはよー! 宇宙のイルカさんだよ!」


:珍しく午前中か

:おはよう!

:おはようさん

:平日の午前中から人がこんなに…? 妙だな…?

:やめーや


ちゃ、ちゃんと仕事してね…。


「今日はいつもとはちょっと違って、この星の外…つまり宇宙からやってきたものたちを紹介するよ!」


:なんだろ

:宇宙からやってきたもの『たち』?

:…宇宙人か?!


「うーん…定義が微妙だから人とは呼べないかな? まぁでもそんな感じだよ! もちろん、ハイドラとも違う種族!」


:マジで!?

:つまり、イルカちゃんとお兄様以外の地球外生命体か…

:人とは呼べないってどういうこと?

:タコ的なサムシング?


「うーん、見てもらった方が早いかな! というわけでこっち来てー!」


:お、ゲストさんもう呼ぶのか

:どんな人なのか

:そもそも人なのか?

:人だ!!

:おー、背高い!

:美人キタ━(゚∀゚)━!

:めっちゃ綺麗な紫色の髪だな


「地球の皆様、初めまして。独立国家NW第三コロニー所属アンドロイド軍特別行動部隊長ヤヨイです。よろしくお願いします」


:なんて?

:ヤヨイちゃん…さんの方がいい?

:何で軍服なのにへそ出しファッションなんですかねぇ…?

:ヘッドギアかっこいい

:アンドロイドってところは聞こえた

:デッッッ!

:独立国家NWってなんぞや

:情報量が…多い……!

:とりあえずよろしくー


「というわけでヤヨイちゃんでーす…って硬い! 表情が硬いよヤヨイちゃん! もっと笑って笑って!」

「しかし、仕事中にそのような─」

「他の星の人たちに好印象持ってほしいなら、絶対に笑顔の方がいいよ! ほら、にーって!」

「……にー」

「うんうん! そっちの方がかわいい…色気がすごいね!?」


:かわいいー!

:あっあっあっ…

:10時からこれはヤバい

:仕事が手につかんぞ!

:サボるなw


「色気…ですか。アンドロイドである私には良く分からないのですが、好印象を与えられているのでしょうか?」

「もちろん! ばっちりだよ! 最高!」

「お褒めに預かり光栄です」

「態度はまだ結構硬いけど…まぁいっか! それじゃあ、ヤヨイちゃんのもっと詳しい紹介といこうか!」


:おー!

:気になることばっかだ

:アンドロイドってどういうことよ?


「まずはそこからだね。ヤヨイちゃん、アンドロイドについての説明をよろしく!」

「了解しました。アンドロイドというのは、人間が自身を模して創った機械生命体のことです」


:へぇー

:創った!?

:機械でも生命体を作るってヤバくね?

:なんだその科学力!?


「元は戦争の為の兵器として開発された存在であり、数々の武装を積んでいます。そのため、かつては生命体として扱われていませんでした。しかし、終戦後の現在ではアンドロイドには人権が認められています」


:おぉう…

:なんか急に重い話を聞いた

:ヤヨイさんもアンドロイドなの?


「ヤヨイちゃんもアンドロイドなんだよね?」

「はい。私は841番目に製造された初期型スナイパーモデルです」


:こんなに美人なのに兵器だと!?

:製作者の趣味だろ

:スナイパーが隊長やってんのね

:841番目で初期型なのか…


「アンドロイドって全部で何人いるの?」

「現在は30万人ほどが確認されていますが、この星にいるのは27人です」

「…あれで全員だったの!?」


:27!?

:いや少なっ!

:27万ではなく27!?

:てかヤヨイちゃん以外にもその星にアンドロイドいるのね


「あ、そうなんだよね。次はそうなった経緯の説明よろしくね♪」

「了解しました。ある時、私達の故郷が存在していた星では、ある貴重なエネルギー資源を求めて戦争が勃発しました。その戦争の間に私達アンドロイド含む、様々な兵器が生まれました」


:急に始まったな

:絶対やばいことになんじゃんそれ


「結果として、2年で地上は生物が住める環境ではなくなりました」

「写真とかある?」

「はい。これが当時の写真です」


:うわっ…

:リアル世紀末やんけ

:漫画かなんかで見たなこんなの

:エグいわ


それな。


「その後人間は、放射能を筆頭とする数々の有害物質によって汚染された地上で暮らすことは不可能と判断し、複数のスペースコロニーを宇宙へ飛ばしました。もちろん、全ての人間が宇宙へと飛び立てたわけではなく、むしろ一部の人間とそれを護衛するアンドロイドのみでした」

「『一部の人間ってどんな人達?』だって」

「それは、宇宙へと飛び立つことを希望した人間です。コロニーの管理などは、全て搭載されたAIが行うことになっていたので」


:ハイテクやね

:その技術がある上での戦争とか…

:そのコロニーって全部で何個あんの?

:そういやさっき第三コロニーとか言ってたな


「コロニーは全部で8基だっけ?」

「はい。それぞれ別々の方向に向かって進み出し、第二の故郷となる星を探す旅が始まりました。ですが、そう簡単に住める星が見つかるわけもなく、何百年と彷徨い続けていました」


:やっぱりそうか

:簡単にはいかないよなぁ

:途方もない…


「減っていく人間用の食料、劣化していくアンドロイドの各パーツ。確実に破滅へと向かい続ける中で、ひとりの竜と出逢いました」


:竜…

:それって…

:イルカちゃんか!?


「名を、レギオン・エースター・ファフニル…隣にいるドルフィン様のお兄様です」


:いやそっちかい!

:お兄様!?

:なるほど、そういう繋がりね

 

「私達の救難信号を受け取り、事情を説明したら救助してくれました。具体的には─」


『ここから450光年、俺の船にあるワープゲート機能で送ってやる』


「─と言い、レギオン様は私達の第三コロニーを丸ごとこの星の近くまでワープで転送して下さりました」


:その船なんなんだよ!?

:イルカちゃんの星の技術レベルおかしいって…

:お兄様がヤバいってのもあるが

:絶対ひとりで使うやつじゃないだろ…


「その後に、他のコロニーも同じように転送してもらったようです。まさに恐悦至極」


:ちょっと引いてんじゃねぇか!

:引いてるw

:よ、喜んでるから…


「お兄様すごいでしょ! これは自慢できるね! …それで、近くまで来たところで私が見つけて今に至るって感じかな」

「はい。正直、こんなにも自然豊かな星に私達が住めるということが未だに信じられません」

「じゃあ、これからゆっくり信じていこ!」

「…はい!」


:いい笑顔

:俺の推しが更新されたわ

:機械生命体も人間とそう変わらんね

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