第16話 海の中3

 

「結構暗くなってきたなぁ。そろそろ光も届かなくなってきたみたいだね」


:夜みたい

:全体的に紺色になってきた

:画面も暗い

:魚も全然見なくなったね

:今どのくらいの低さなの?


「えっと〜、まだ340メートルくらいだね。ライト点けよっか」


:明るくなった

:見やすい

:助かる

:それ魚寄ってこない?


「……たしかに。サメとか寄ってくるかもね。そのときは鼻に軽くパンチして撃退してやる〜♪」


:いやバリア使えよw

:そういうときのためのもんじゃないんか?

:大迫力の映像撮れそうですねぇ

:石柱を破壊したパンチが鮫に襲いかかるわけか

:鮫が死んでしまうぞ


「水中だから威力は落ちるけどね。さてと、この海はどこまで深く潜れるかな?」


◆◆


「わっ、地割れの跡かな? 地面に穴…穴ってゆーか、渓谷みたいになってるんだけど」


:怖っ

:めちゃくちゃデカイ

:海溝…ともまた違うよなぁ


「うーん、下の方までライトの光が届かない……ってことは、かなり深くまであるみたいだね。…よし! この下まで行ってみよっか!」


:デスヨネー

:知ってた

:ウソでしょ…


「ついてきて!」


:ついてく!

:ゴボボボ!

:水中にいる視聴者がいる…



「……これホントに何メートル下まで続いてるの!? もう水深700メートルになるんだけど!?」


:深すぎぃ!

:ここまでくるとなんか怖いな…

:魚もいない


「この岩場じゃ魚も隠れる場所がないし、海流もないからプランクトンとかもない…住む環境としては最悪だね」


:人間だって崖には住まないしな

:プランクトンすらないのか

:まるで過疎化して誰も居なくなる村みたいだ

:悲しいね


「……ん?」


:どした

:なんかあった?


「下の方で今なんか光らなかった? 気のせいかなぁ?」


:え、光ったのか?

:カメラはイルカちゃんの方向いてるから俺たちには判断できないのだが…

:角度の問題


「あ、じゃあちょっと下の方に向けて……あ! ねぇほらやっぱりなんか光ってる!」


:うーーーーん????

:写ってる?

:カメラよりイルカちゃんの目の方が良い可能性あるから…

:もうちょい近づいてもらわんと

:多分なんかあるんだろうけど

:あ、なんかちっさく見える

:豆電球くらいに光ってるのが見える


「みんなも見えるように近づいた方が良さそうだね。急降下〜、っていっても頑張って泳ぐだけなんだけど」


:あー…なんかいるわ

:一直線状に弱くなんか光っ……あれ?

:待てちょっと待て

:長くね?

:おいなんかやたらとカラフルだぞ

:もしかして…w


「……ブフッ! な、なんでゲーミング発光してるのこのリュウグウノツカイは!!」


:草

:www

:ゲーミングリュウグウノツカイw

:1680万色に光るのか…ww

:自己主張激しいなw


「てか普通に眩しいんですけど! え、どーゆー原理で光ってるのキミは? しかも背びれだけ」


:ホタルとは違うか

:クラゲにこうやって光るヤツいなかったか?

:いたかも

:それは水槽周りの光が反射してるだけだぞ


「へぇー、自分で発光してるわけじゃないんだ。じゃあ、このゲーミングリュウグウノツカイもそうなのかも? てことでライトオフ! …………あの〜」


:草

:めっちゃ光ってて草

:光ってますね…

:お前なんなんだよ!!?

:目に悪い光だこと


「キミの体は一体どうなってるの? まぁいっか! 頑張って生きるんだぞー」


:餌もないのになんでここにいるんだか

:上がってった

:下の方になんかあるんじゃない?

:あるかなぁ?


「私としては、何かあると嬉しいな♪ みんなもそうでしょ?」


:せやな

:そやな

:いえーす

:アトランティス的な何かは…ない?


「さすがに、地割れの底に海底遺跡はないんじゃないかな…?」



:ちょ、今なんか穴あった!

:壁に穴空いてた

:結構でかかったような

:イルカちゃんすとーっぷ!


「え、どれ? ……ホントだ! スピード出しすぎて気が付かなかった! 教えてくれてありがとね! えっと、今は水深1100メートルくらいと。ここ深すぎない?」


:これもうただの地割れじゃないだろ

:なにを今更定期

:で、入るんだよね?


「もちろん! ただ下に行き続けるだけじゃ面白くないでしょ? てゆーか、私がちょっと飽きてきてた。てことで、ごー!」


:ごー!

:ごー!

:ごー!

:ごー!


さてさて。


「……洞窟だね」


:洞窟だなぁ

:そりゃ洞窟以外にないでしょ


「3人分のスペースはあるかな? 腕を伸ばしてもふたりで歩けそう。竜形態には、ちょっと狭すぎるかな」


:親切な洞窟だな

:親切な洞窟ってなんだよ



「むむ、分かれ道。右か左か…みんなはどっちがいい?」


:右!

:右で

:左からで

:右だろう

:左!


「うーん…右が多いかな? よし、じゃあ右からで! 行き止まりじゃないといいな〜♪ …分かれ道のあとだけど、それなりに広いなぁ」


:なんか歩きやすそう

:こういう洞窟って大体トゲトゲしてるもんなのに、ここはそうじゃないんだな

:深海の洞窟…ロマンだねぇ

:日本の海にもこういうのあんのかな


「探したらそれなりにあると思うよ? 日本って地震も火山も多いからね」


:あっても探せないんですが…

:潜水艦でもないと無理だよなぁ

:あってもキツくね?

:深海調査には向いててもこのスペースには入れない


「うーん、実際はどうなんだろうね? 潜水艦って名前なんだから、深くまで潜ってそうだけど」


:マリアナ海溝もいけるらしい。理論上は

:約一万メートルか

:意外と余裕あるんだな

:理論上って聞くと不安になるのは俺だけか?

:じゃあ1000くらいなら全然大丈夫なんだ


「へぇー…人間も中々やるね〜。それじゃあ、溶岩の中でも活動出来たりする?」


:無理です

:ちょっと『それじゃあ』の意味が分からないんだなぁ

:イルカちゃんの期待に応えられなくて申し訳ない

:ハードル高いw


「そっかぁ…。んー、まぁしょうがないかぁ…。って、えぇ!? なんか扉あるんだが!?」


:嘘ぉ!?

:マジやん!?

:まーた人工物か

:ここ深海っすよね?

:そのはずだが…


「よし、開けてみよ──」


─ゴゴゴゴゴゴ!!


「おわぁー!? 流されるぅ!?」


バリアばりあー!!


「……ヨシ!」


:扉を開けたら一気にもってかれたな

:バリアってこうやって使うもんだっけ…?

:扉の中には水がないな

:え、ちょい待ち。この扉、水圧に耐えてたってこと!?

:……確かにそうなるな

:世界のバグだろ

:扉めっちゃ分厚いな!


「あ、ホントだね。2メートルくらいはあるかな? 金庫みたいだね。…一応閉めとこうか。よいしょっ」


─ガン!!!


:いや音よ

:壊れるぞ?

:ぱわー!


「バリア解除しても……大丈夫そうだね!」


よし、海水を真水で洗い流して……と。


:!?

:その魔法陣的なのは何だよ!?

:水出てきたぁ……


「それじゃあ、この先に進もっか!」

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