第12話
パソコンの画面いっぱいに映るのは、満天の星。
日本の時刻は夜の9時。
だが、それは日本から見えるものでは無い。ましてや、地球のどこからでも見ることは叶わない
『はーい。みんな、こんばんは。宇宙のイルカさんだよ♪ 今日も来てくれてありがとね。見たらわかると思うけど、今日は天体観測をするよ。夜だから、テンションは低めでいくね』
カメラアングルが変わり、その夜空の下で仰向けに寝ながらいつもの挨拶をする緑髪の美少女を写した。
─カタカタ…
配信コメントに『こんばんは』と打ち込む。
□◆
「まぁ、地球じゃないからね。天の川銀河の星は角度的に見えないよ。今見えてるのは『繝ッ繧、繝舌ぃ繝ウ』っていう銀河の一部だね」
:なんて??
:日本語でおk
:母国語出てますよ
:いう……なんだって?
「あ、ごめんごめん。昨日家族と話してたから……えっと、日本語にすると『
:へぇ〜
:ファンタジーだなぁ
:てかめっちゃ星綺麗に写ってんのな
:4k画質 むしろ8k画質
:うわぁーそこ行きてぇ…!
「うーん、地球とこの星とを繋ぐのは今のところ電波しかできないからなぁ…」
:電波だけでもだいぶおかしいぞ?
:一体何光年離れてるんだ…
「ん? 40億光年かな」
:またまたぁ
:そんな冗談が…冗談だよな?
:ちょっとそのノーパソみたいなカメラでNasyaにメッセージ送ってみてくんない? できれば母星語で
:やめーやw
:世界中がパニックに陥りそうなことをさせようとすんなw
「気が向いたらやってみるのもアリかな?」
:なし
:宇宙人に当たり強いからなあの合衆国
:これも全てプレデターってやつの仕業なんだ…!
:何だって!?それは本当かい!?
:草
「ま、冗談は置いとこっか。さてさて……今日はいつもの配信と違って、カメラを遠くまで移動させるよ。大体30光年くらいかな?」
:…はい?
:インフレしとるがな…
:天体観測とは?
:てことはイルカちゃんは写らないのか
:めっちゃ時間掛からない?
「そうだね、1時間くらい掛かっちゃうかも。じゃあ、私はこの芝生の上で星を眺めながら寝るよ。あ、言い忘れてたけど、ここからは360度見れるようになるよ」
こうして、と。
:1時間で30光年……???
:光の速さ超えるカメラってなに?
:オーバーテクノロジー…ですかね
:おぉー、360°動かせる!
:すご、ライブ配信でこれできたんだ
「おやすみ〜。いってらっしゃい♪」
:行ってきマース
:ギリギリまでイルカちゃん見てよ
:え、早くない?
:って、加速速!?
:え、待ってもう宇宙!?
:ファッ!?
:イルカちゃんのいる星がもう点なんですけど?
うーん、やっぱり空間歪めてるだけあって速いね。もうカメラも見えなくなっちゃったし。追いつこうと思えばできないことも無いけど、すごい疲れるからなぁ。
宇宙の景色、楽しんでもらえるかな?
□
:1時間経ったなぁ…
:マジで30光年の距離まで離れてるのか?
:うっはぁ、綺麗
:360度全部宇宙やんけ!
:寝らんないわ
:ずっと興奮してる
:なんかドラゴンいない?
:え?
:ドラゴンいる
:緑色の竜がこっち見てるぞ
:…こっち来てね?
:距離感わからんけど結構遠いよな?
「…」
(…ちゃんと動いているみたいだな)
:!?!!?
:待って一瞬で目の前に!?
:!?
:頭が7つ!?
:デカっ!?
:あわわわわわわわ
「……」
(ふむ、これがフィーの配信を見ている者達の『コメント』というものか。…俺が長い時間写るのはあまり良くはないか)
:めっちゃ目合ってる!
:全部の顔がこっち向いてる…
:ど、どうもー
:イルカちゃんこれどうすんの!?
:食われる!?
「…
:ピェ…
:一つだけ別の方向向いた…
:何が起きているんだ…!?
:イルカちゃんの知り合いであってくれ…!
─バクンッ!
(…美味い。さて、行くか)
─シュン!
:……今なんか食べた?
:恐らく隕石かと
:あれ、消えた!?
:スピードおかしかったような気が
:てかもう画面のどこにもいないんですけど…
:…よし、寝るか!
:宇宙ってやべぇな…
:…かっこいいドラゴンだったな!
:おほしさまきれい!
:現実逃避やめろw
□
「あれ!? お兄様写ってる!?」
え、なんで!? あ、今の隕石美味しそう。いいなぁ。
わざわざメッセージ残すくらいなら、直接会いに来てくれればいいのに。旅の途中でもそれくらいの暇はあると思うんだけど?
…まぁいっか!
お兄様のことだし、多分10年もしないで変な物いっぱい集めてフロンティアに帰ってくるんじゃないかな?
そしたら一緒に配信………もしかして、配信とかあんまり写りたくなかった? 意外と繊細なところあるし、ありえるかも。
うーん、しょうがないかな。一緒にゲームするだけなら配信しなくてもいいもんね。
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