第11話
「えー、本日は皆様お集まりいただきありがとうございます。この裏講義を担当させていただきます、
「いや、マジで集まる必要あるか…?」
「雰囲気。前回お伝えした通り、本日のテーマは『イルカちゃんが地球外生命体であることを証明するには?!』です。よろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします!」」」
「え、怖。なんでそんなに気合い入ってんの?」
一つの会議室に十数人の人達が集まっていた。
「まず初めに、配信者イルカちゃんことドルフィン・ロースター・ファフニル……やっぱ長いのでイルカちゃんで」
「…いいのかそれで?」
「いいんです。彼女について判明している情報を軽く説明させていただきます。お手元の資料、バージョン3.5.1をご覧下さい」
「オイオイ、よくもまぁこんなに凝ったの作ったな…」
椅子に座っている青年は手元の資料を見る。そこにはデフォルメされたイルカちゃんのイラスト付きの説明が、細かく15ページ分書かれている。
「イルカちゃんの初配信は3月下旬、そこから今日に至るまでに増加したチャンネル登録者数は約60万人。彗星の如く現れ、瞬く間に人気配信者の仲間入りを果たしました」
「何かと話題になってるよな」
「ええ。ネットニュースになった回数は既に並みの配信者のそれを超えており、『配信の度に記事になる美少女』という異名を持っています」
(……異名…? まぁ、異名…か)
資料2ページ目には、今までにイルカちゃんが載ったネットニュースが書かれている。
「彼女はネットニュースだけに留まらず、地上波放送のニュース番組などにも取り上げられることも。それらはひとえに彼女の美しい容姿によるもの…だけではなく、配信内容に原因があります。そして同時に、この会を立ち上げることになった原因でもあります」
「あぁ、これかぁ…」
司会の男がスクリーンに映したのは、火を吹くイルカちゃんの映像だった。
「この他にも超人的な部分は多々あります…が、全て説明をするには時間が足りませんので割愛させていただきます。それではこれより30分間、証明方法について意見交換の時間とします。私はその間にイルカちゃんの配信切り抜きを見ていますので。ちなみに、私はイルカちゃんの脇が好きです」
「聞いてねぇよ! てか、教授がそんなんで大丈夫か…」
教授と呼ばれた男はイヤホンを付けた。
◆◆
「はい、時間ですね。ではどういった証明方法があるか…じゃあまずは山夏芽さん、どうぞ」
「え、いきなり俺…? まぁいいけど。証明方法として一番手っ取り早いのは、イルカちゃんの遺伝子を調べる、ですかね。髪の毛一本でもあれば可能なのでかなり現実的かと。本人の許可は必要ですが」
周りにいる何人かも頷いている。
「ふむ、良いですね。イルカちゃんと接触できれば、ですが。では次は─」
「はい!」
「元気がいいですね。織歌さん、どうぞ」
「配信の映像が加工されたものでないという前提が成り立つのであれば、既にイルカちゃんは地球外生命体であると証明されていると言っても過言ではありません」
「確かに、あの翼は人間のものではありませんからね。映像研究が進めば信頼性は高くなりますが、現段階でもかなり高いでしょう。なにせ生配信ですし。他には?」
「はい」
「振像さん、どうぞ」
「天体物理学的に証明するのはどうでしょう? 例えば撮影地が地球では無いことを証明する事が出来れば、イルカちゃんが地球にはいない事の証明にもなります。そしてそれは、イルカちゃんが地球外生命体であることの証明にも役立つと考えます」
「なるほど、面白いですね。他には─」
◆
「─色んな意見が出ましたね。本日の結論ですが、『イルカちゃんが地球に来てくれれば全て解決する』という事で」
「それを言ったら終わりだろ……」
「今年の学会はこれで乗り切ろうと思います」
「怒られるぞ」
□
─プルルルルルルル…!
「どうしたのお兄様? 家でなんかあった?」
『三日前に、食事の拠点にしていた星が超新星爆発に巻き込まれた』
「えぇ!? 怪我してない?!」
『問題ない、が完成前の船が全壊した』
「バリア機能とか付ける前だったんだね…」
『……俺もまた暫く旅に出ようと思ってな。どこかで会うことになるかもしれない、という連絡と……』
「? どうしたの?」
『…カメラのメンテナンスなんかは出来ない』
「? うん、わかった。あ、しばらくってどのくらい?」
『少なくとも20年は、だな』
「意外と短いんだね」
『…何かあればまた連絡する。…フィー、配信は楽しいか?』
「うん! 最近はもうずっと最高!」
『それなら、良かった。また今度』
─ピッ!
お兄様も旅かぁ……。
じゃあ今は宇宙にいるのかな。
…!
いいこと思いついちゃった! 次の配信内容はこれで決まりだね!
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