第10話 氷の山3

 

「下りる方向は、登ってきた方向と反対にするとして……カメラの位置はどうしようか?」


:ゲームみたいな三人称視点とか?

:こっちはそこそこ雪あるんだな

:あえてイルカちゃんを正面から写し続けるのは…

:ドローンみたいにめっちゃ引きで撮ろう

:イルカちゃんの視点を体験してみたいなぁ


い、意見がバラバラだ…!


「うーん…こんなことになるなら、このカメラあと5個くらい作ってもらえばよかったかなぁ?」


いやでもさすがにお兄様に悪い……いや、頼めばなんか10個くらいポンとくれそうだね…。


竜用のは……ここで使うにはちょっと大きいかな。


:業者かな???

:金が吹っ飛ぶぞ

:そういえば、イルカちゃんってお金どうしてんの?

:絶対多いww

:5機は余るだろ……


「お金はね、原石を宝石にするバイトで稼いでるよ! 日本円換算で……時給7000円くらいだね!」


:なんだそのバイト…

:時給高っ!?


「でしょ! って、話がそれちゃったね。カメラの位置どうしよう? もう多数決でもとろっか! はーい、みんなはどのアングルからがいい?」


:三人称視点後ろ

:イルカちゃん視点

:一人称視点

:引きで撮る


「全体的に……私の視点からが多いかな? じゃあ、それでいこっか! カメラの位置をこうして、と」


ツノに挟んで、と。そしたら、視界の端にホログラムでコメント表示して…よし!


:頭の上か?

:おぉー!

:落ちないのそれ?


「バリアで固定したから大丈夫!」


:輪ゴムじゃねーんだぞ

:バリア「解せぬ」


「最後にブーツとボードも固定して…準備万端! カウントダウンでスタートするよ! 5! 4!」


:キタキタキタ!

:ようやくか

:切り抜き準備完了!

:わくわく…!


「3! 2! 1! ごー!」


─ズガァァァ!!


「わぁー! 速いはやーい!」


:ほわぁぁぁ!

:おぉ…!

:速っ!?

:スタートダッシュが決まったァ!

:スノボーってそういうのだっけ…?


「たーのしー!! すごいねこれ! 整備された施設じゃなくて、自然の山だからこその楽しさがあるー!」


:いいなぁ…!

:見てるとこっちまでやりたくなってくる

:ちょっとアメリカ行ってくる

:氷山なら南極行ったら?


「よっ! ほっ! うー、スピン!」


:360!

:マジかよ!?

:さてはイルカちゃんスノボやってたな?


「そうだよ! 一時期ハマってたんだよね! だからこういうのもできるんだ♪」


丁度いい感じの段差で…こう!


─ガッ!


:跳んだぁぁ!

:ジャンプ!

:すごい音だな

:華麗に着地!


「氷の上だけどちゃんと着地が決まったね! まだまだいくよ! 前方向に1回転!」


フロントフリップだっけ?


:画面がぁ!

:酔いそう

:すげーぇぇ!!

:滞空時間長いな


「次はターン! 逆回転も! …よいしょ! どうかな? あそこにもジャンプ出来そうなとこはっけーん! いくよー! ……そいっ!」


─ガガァァ━━!!


:視界が大変なことになってるぅ!

:最後のバックフリップか?!

:氷の上でここまでできるもんなんだなぁ

:さすがイルカちゃん!

:酔うって…!


「えぇ、画面酔い!? …それじゃあ、ここからはカメラの位置を変えよっか!」


ツノから離して…斜め後ろからでいいかな? ピースぴーす!


:おぉー! 見やすい!

:ピース助かる

:髪なげーな


「そろそろ雪が近づいてきたね! まだまだいくよ! ついてきて!」


:ついてく!

:ついて……いけるか…?

:転がってでもついてくから

:死ぬぞw



「こーゆーのはどうかな?! スノボ2段ジャンプ! いえーい!」


─ザッ! カンッ! ズサァァ!


:スリル最高や

:ヒャッハー! たまんねぇなァ!

:音がwww

:見ててハラハラする…!

:もうバリアがバリアとしての意味じゃなくなってるな

:バリアは足場


「あ〜ちょっと疲れたな〜! ごろーん!」


─バサッ!


:!?

:倒れ…ながらだと?!

:翼で滑るってえぇ…

:体幹やば

:痛くないのか、ってイルカちゃんなら大丈夫か

:楽しそ〜!

:これは、さすがに真似出来ないね…


「起きるときは、こうっ!」


:ファッ!?

:今のどうなってた?!

:見……見え……くっ…!

:カメラアングルめ…

:ブレイクダンスみたいだったな

:スノボってすげー!

:翼があるおかげだろ


「すごいでしょ! 今のは、翼で地面を押す反動とボードに掛かる摩擦の力を合わせてやったんだよ!」


:つまり人間にはできない技というわけだな

:いや、上手くやればギリいけそう

:まじ…?

:どこで学んだんだよ今の技


「独自に編み出した技だから、独学だよ!」


:センスの塊やんけ!

:それだけ動けるとめっちゃ楽しいだろうな

:怪我とか怖いから俺には無理だな


「怪我かぁ〜…私たちハイドラは転んだくらいじゃ怪我なんてしないけど、人間のみんなはそうもいかないもんね」


:まぁ矢が当たっても怪我しないんじゃそうか

:大体、最初にやるのは安全な転び方からだしね

:案外馬鹿にならないよ

:ある意味今が冬じゃなくて良かった?

:絶対真似して事故るヤツ出てくるし


「それもそうだね。じゃあ……みんなが、ぜったい! マネできないトリックだけにしよっか!」


:知ってた

:やっぱそうなるかw


「超能力全開でいくよー!」



「えぇ!? 今更クレバス!? でも〜! 特大ジャーンプ!」


フロントフリップしながら2段ジャンプ! カメラに向かって決めポーズ!


:Foooooooo!!!!

:いけぇぇ!!

:余裕だなぁw

:見てて気持ちいい


「着地も…よっ…完璧!」


:100点中120点!

:オリンピック出れるだろww

:超能力はレギュ違反。見てはみたいが


「ふぅー、そろそろ終わりだね。傾斜も緩やかになってきて、スピードもゆっくりになってきたし」


:ゆっくり…ゆっくりか?

:最初が速すぎて感覚が麻痺ってんだよなぁ

:そろそろ出社しないと…

:土曜日出社ニキかわいそう

:強く生きて


「ずさー……うーん、さーいこぉぉぉう!!」


:おつかれ!!

:すごい爽快感だったわ

:お前もスノーボーダーにならないか?

:ならない!

:草


「それじゃあ、今日の配信はこれで終わり! 良ければチャンネル登録、高評価よろしくね〜! みんな、また明日!」


:また明日!

:もちろんGood!


─この配信は終了しました─

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