第9話 氷の山2

 

「傾斜角度エグっ……」


:何度あんだコレ…

:氷めっちゃ綺麗だな

:雪が積もることすらない角度って何?

:目測で40°くらい?

:これ登るってマ?


「マ! だよ! でも、無理そうなら空中を歩くことにしようかな。これを登りきれば山頂はあと少し! 頑張ろう!」


:頑張ろー…って待てい!

:危な…って何で歩けてんの?!

:それはお前…イルカちゃんだからだろう

:説得力がすごい


「あ、この傾斜でも意外と歩けるね」


:これもうあれだろ、ゲームの地形だろ

:ギリギリ歩けるやつねww

:イルカちゃんの伝説 ブレスオブザドラゴンか

:それ火吹いてるだけやん


「……ほっ…ほっ…。…あべっ!?」


:!?

:顔面からいったぁ!


コケたぁ!? なら、抜刀! からの氷に刺す! これで止ま……─


「─氷が斬れて止まらないんだがぁぁあ?!!」


めっちゃ滑る! 傾斜がぁあ!


:斬れ味良すぎぃ!

:大丈夫か!?

:イルカちゃん!?

:ああああぁぁぁ!!


「…いや別に空中ジャンプでどうとでもなるじゃん。ほい、っと」


ついでに納刀。


:確かにそうだわ…

:焦ったぁ

:結構滑り落ちたんじゃない?

:怪我してない!?

:心配したぞ


「ご、ごめんね! 怪我はないけど、心配かけちゃったね…」


:無事ならええんやで

:しょんぼりイルカちゃん

:怪我ないんか…

:刀をピッケルみたいに使うなw

:斬れ味やば

:てか氷ぶった切ってマスケド…


「あぁ!? うわぁ、やっちゃった…。うぅ、もう諦めてこのまま頂上まで歩いていこっか」


:その方が良いね

:刀の跡がすごいな…

:空中浮遊登山

:俺も空中を歩きたいわ。どうやったらできるんだ?

:人間には無理だろ


「空中を歩きたいの? それならバリアで足場を作るとか、重力を操作すれば歩けるよ! ちなみに、バリアを足場にする応用で空中ジャンプをしてるんだよね。私はこれが結構得意なんだ♪」


:やるには人間を超えないといけないんですが

:理論上は無限ジャンプ?

:流鏑馬ホバー…


「うん、無限ジャンプだね。…てゆーか、そもそも私は飛べるんだけどね。翼もあるし」


─バサッ!


:ファッ!?

:ぇええぇぇえ?!!?

:何その羽!?

:!!!???!?

:衣装で背中の素材が生物っぽいのは、そこが翼だったから…?

:でっか

:何それかっこいい!

:…え、イルカちゃん体の構造どうなってんの?


「気になる? くるっ、とね♪ どう? 翼はこんな感じになってるんだ♪」


:めっちゃ綺麗な背中!

:いや翼見ろよw

:ワーオ、大胆ネ!

:美しい…!

:これはドラゴンですね間違いない

:エッッッッ…!

:生物学者が頭抱えちまうよ…


「もういいかな? よいしょっ…服を整えて、と。それじゃあ、山頂まで行くよー!」


:おぉー!

:あばばばば…

:あーあ。学者の脳が処理落ちしちゃった



「とうちゃぁぁぁく!! 長かったね! お、タイミングもバッチリ! ほら海の方見て! 日の出だよ!」


:日の出だァァァ!!

:ついに登りきったか!

:おおぉぉぉ!

:めちゃくちゃキレイ

:これだけで早起きして良かったと思えるわ


「うんうん。私も今日は早起きだったからね! 頑張ってよかったよ、ホントに」


:おめでとー! というわけで二度寝するわ

:草


「カメラを1周ぐるっと回してー……」


あ、いいこと思いついた。


:マジで幻想的だわ

:クソ寒い中おつかれさんだ

:マイナス50度の登山を和ドレスで登るとかよく考えなくてもおかしいわ

:何してんのイルカちゃんw

:なにそのポーズ

:もしかして…


「日本の夜明けぜよ…!」


:www

:おいw

:まさかこれをやるために登山したんか?w

:そこ日本じゃないだろw

:草


「ううん。今思いついたからやってみただけ。一番の目的はこの景色だよ! 私の生まれた星とは違う星の夜明けだから、見ておきたかったんだ。1人だけで来た初めての星だからね!」


:…一人で星間移動できんの?

:さすがに宇宙船くらいはあるだろ

:あっても一人ってのはねぇ…

:宇宙の竜は伊達じゃねぇってか

:……プシュー!!

:あぁ、今度は物理学者が…


「さて…と。もう少しこの景色を堪能して、その後は……。ま、今はこの景色を楽しも?」


◆◆


「……すぅ…」


:よく氷の上で寝られるよな…

:寝始めた時はめっちゃ焦ったけどな

:幸せそう

:まだ寝てんのかw

:1時間は経ってんだけど


「………グルルルル……!」


:いや怖すぎ

:人間の出す音じゃねぇ…

:こういうの見るとマジでドラゴンなんだなって

:早く科学的根拠をお願い


「……ガァ? …え? あれ、寝ちゃってたか。あ、配信……お、おはよう!」


:おはよう(・∀・)ニヤニヤ

:可愛らしい寝顔だったよ〜

:全世界に配信されちまったなぁ〜

:またひとつ、イルカちゃんの魅力が世界に…!

:1時間ぶりやね


「ゆ、油断してた…! ちょ、ちょっと恥ずかしいね…! ここだけ後でカットしよ」


:もう切り抜きされてると思うんだけど…

:照れ顔かわいい

:顔真っ赤だぜ?

:もう遅いゾ

:それをカットするなんてとんでもない!

:残して!


「やだやだ! 絶対残さない! 自分の寝顔を誰が残しておくんだよー!?」


:これがデジタルタトゥーですか…

:黒歴史

:残念、もう保存済みさ


「くっ…! こうなったらハッキングで何とかするしか…! って、こうなったらしょうがないかぁ…。よし、配信再開するよ!」


:冗談に聞こえんのよ

:イルカちゃんならできそうで怖い


「ここで問題! 氷の山を登りきった後にやることはなんでしょう?! ヒントはコレ!」


:スノーボードか?

:まさか…!

:氷山…スノーボード…やはりそういうことか

:イルカちゃん! やるんだな!? 今、ここで!


「いえーす! 最後はスノーボードで駆け下りるよ!」

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