第4話 遺跡1
その日、とある生物学者はtweeter上で語った。
『あの配信に写った蜂と鳥は新種だと思います。調べてみたんですけど、該当するものがいなかったので』
世界に激震が走る…ことはなかったが、その道では有名な生物学者の発言によりほんの少しだけ世界が動いた。
なにより、都内の有名大学で行われた学生達の暇つぶし…もとい映像研究により、合成ではないと証明された影響も大きい。
結果として何が起こったかといえば…
『宇宙のイルカちゃんねる』は登録者数がすごい増えた。
ついでに、何人かの学者が頭を抱えた。
□
「これは……遺跡の壁? まさかジャングルにこんなのがあるとは……いや、壁高くない?!」
配信者になってから1週間ほど経って、配信中に面白そうな場所を見つけた。
:明らかに自然物じゃない
:もはや城壁やん…
:何メートルあるんだよこの壁w
:よく見たらレンガだ
:…興奮してきたな
:なんでだよww
「この星に文明を築けるような生物がいるなんて、聞いたことないんだけどなぁ…?」
:マジで地球じゃないんかそこ
:それは結構いろんな人が言ってるだろ?
:学者連中が集まって会議してるって聞いたんだけど…
:正直まだ信じられないわ
:俺はそこが別の星だということに賭けるぜ
:ついでに花京院の魂も賭けよう
嬉しいことにこの1週間でチャンネル登録者数が2万人を突破したんだよね。びっくりした。
でもそのおかげで、知名度が上がってこれまでの配信がなんか生物学者の中でなんか話題になってるらしい。
…逆かな? 話題になったから登録者数も増えた?
まぁいっか。たくさんの人とこの配信ができるのは嬉しいからね。これからも登録者を増やせるように頑張らないと!
そんな気持ちで見つけたのがここの遺跡。
「あ、ここから入れる…ってええええ!?」
:建物やん!
:デカすぎィ!
:ファーwww
:ゼーダの伝説でこういうの見たな
:古代遺跡やんけ!?
:めちゃゲームっぽい
「おぉ……壮観だね〜。仮想空間とかと違って重みを感じるっていうか……とにかくなんかすごい!」
:イルカちゃん語彙力なくて草
:途中まで良かったのにw
:なんかすごいで草
「えぇ〜? だってー、言葉にするの難しいんだもん。てゆーか、コケとかすごいね」
:こういう廃墟めっちゃ好き
:植物生えてる割には建物あんまり崩れてないな
:地面も雑草だらけ
「階段の先のあれが入口かな? 入ってみよ!」
:もはやファンタジーだな…
:石階段とか歴史的建造物かよ
「うーん、やっぱり暗いね。カメラのライトを……これでよし、っと。なんかゲームのダンジョンみたいだね!」
:ダンジョンみたい
:うわ広
:神殿…?
:トラップとかありそうでちょっと怖いんだけど
:わかる。矢とか飛んできそう
「? 矢ごときじゃ傷にもならないよ? あ、でもプラズマとかでピリッとくるかも。一応注意しといた方がいいかな」
:矢『ごとき』て…
:一般人はな、矢で撃たれたら大怪我するんやで?
:ほら、イルカちゃんはドラゴンだし…
:プラズマでピリッ…?
「それじゃあ、内部探索といこうじゃないかー! ついてきて!」
:あっ…好き
:こっちに手伸ばすのかわいすぎてもうなんか無理
:何人か限界化してるのだ…
「あんまり老朽化はしてなさそうだねー。床の石畳? も結構キレーだし」
:ほんとだ
:神社にあるやつみたい
:規則正しく並んでやがる…
:レンガとは違うん?
:レンガは土を固めたやつ。石は石
:へぇ〜
「あ、なんかある! これは…椅子? なんか朽ちかけてるけど、豪華な感じだね。あと、ここだけ床が高くなってるし…なんだろ?」
:玉座では?
:石の椅子とか座ってて疲れそうだな
:座ってみたら?
「あ〜たしかになんか玉座っぽいかも? でも『石の玉座なんて何万年前の文化だよ!』って思っちゃうね。それじゃあ、座り心地はどうかな〜? ……うん」
:草
:( ˙-˙ )スンッ
:www
:そりゃあ石だもんw
:表情が全てを物語っている
「でもせっかく玉座っぽい椅子なんだし……あ、そうだ!」
カメラを少し離して、下からのアングルにして……姿勢と表情をちょっと変えて…。
:ん?
:なんだなんだ?
「んんっ……。貴様、何故妾の前に姿を現した? まさか此処の事を知らぬということはあるまい。なれば…覚悟は出来ておるのであろうな?」
:!??
:アッ…
:ヒェッ
……あれ? コメント止まっちゃった。あんまりウケなかった?
「…えっと、どうだった? ちょっと遺跡の主ごっこをしてみたんだけど……」
:…( ゚д゚)ハッ!?
:やばい、手の震えが止まらん
:心臓止まったかと思った
:怖すぎ
:な、何…いまの
:画面越しで伝わる威圧感やべぇって…!
:ちょっと漏らした
:ww
:草 いや臭
「えええ!? なんかごめんね!? でもそっかぁー…次からは威圧感弱めてやるね?」
:やるのか…
:弱めならなんとか…?
:イルカちゃん何者だよマジで…
:本当にドラゴンなんじゃね?
:見た目と合わさって完全に女王様だったわ
:貴女が竜か
「はーい、じゃあ次いこー!」
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