第2話 その日の夢

先輩が死んだその日の午後、一通の手紙が届いた。

そこにはただひたすら苦しかったこと、謝罪、大好きであることが綴られていた。

先輩の親にすぐに連絡した。

LINEの返事が来ない先輩に、どんなに催促しても意味がないことを知りながら、電話をかけ続けた。

サイレンの音が聞こえる度に涙が溢れた。

パトカーか救急車なのか何もできないのに確認しないと気が済まなかった。

まだ、もしかしたら、間に合うかもしれない、そんな思いを胸に刻みながら、心当たりのある場所を探し続けた。

もう何度目かわからない電話をかけようとしたとき、先輩の親から電話がかかってきた。


21歳。

先輩に追いついた今でも夢に見る。

真っ暗闇の中で、先輩を探して走くり回る。

赤いランプがチラつきながらサイレンが鳴り響いて、どこまで行っても、いつまで経っても先輩は見つからない。

特に先輩の命日は寝れないくせにひどく夢にうなされる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る