先輩は25歳で死ぬらしい

灰雪あられ

第1話 私、25で死ぬから!

「…反応に困るんですけど〜、茶化した方がいいやつです?」

「どっちでも可〜」


なんでこんなこと先輩は言い出したのか。

先輩のせいで少し前の記憶が破壊されてちゃんと覚えてないけど、なんで生きてるのかそんな話をしてたはず。

生涯の分岐点、大学受験を控える高校生ならではかもしれない。

…こんなことを言い出すのも。


「話の流れ思い出してたんですけど、やっぱ人生の終止符どこに打つかなんて話してませんでしたよ?」

「愛いのぅ愛いのぅ、風花ちゃんはそんなに先輩に死んでほしくないのかのぅ」

「私、25歳で死ぬから!とか宣言しといて誤魔化すのやめてください〜い」


死んで欲しくないか、と聞かれたらそりゃ死んでほしくない。

用もないのに部室で話してるくらいなんだから。


「ほんと嫌な人。なんか悩みがあるならさっさと話せばいいんです。ちゃんと聞いてあげますから」


ふっと、どこか泣きそうに先輩は笑った、と思ったら抱きしめられた。


「優しいなぁ風花ちゃんは。」

「ちょっと…急になんなんです?甘えたいならそう言ってください。デロンデロンに甘やかしてあげますから」


背中をポンポン叩くと、先輩は肩におでこをすりつけた。

相当きてるのは分かるけど、何がそんなに苦しいのかわからなかった。

ただ、得体の知れないナニカを抱える先輩をそのまま抱きしめることしかできなくて、歯痒い。


「死ぬとか、ほんと、嫌ですよ。まだもっと、遊んでくれなきゃ困りますから。」


それから先輩は受験に落ちて、どんどんどんどん沼へと沈んでいった。

享年21歳、まだあと4年残して先輩は、その生涯の幕を下ろした。

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