第45話
「また明日ね~」
「うん。また明日~」
バッグを抱えて、廊下で別れの挨拶を交わす生徒達。学校で過ごす時間が終わり、手ぶらのまま歩く俺の横を通り過ぎていく。
俺は、三階建ての校舎の三階にいる。
目の前の階段を見上げる。この階段の先に、教室はない。
この階段の先は、校舎で一番高い場所。屋上に続いている。
普段は施錠されているため階段を上ったところで、鍵のかかった扉しかない。
こんな所に用があるとすれば、休み時間にたまり場として活用するくらいだろう。しかし、放課後にこんな所でたむろする必要もなく、今は人の気配は感じられない。
俺は、屋上に続く階段を上っていく。
ほんの少しだけ既視感を覚えて、過去を思い出す。
ここがその場所ではないが、屋上に向かっていくという行為が、『それ』を思い出させる。
俺が、自殺する直前の事だ。
古いマンションの屋上。通常なら入居者ですら、オーナーの許可なく屋上に踏み入ることは出来ないが、建物からむき出しになっている非常階段をよじ登れば、屋上にたどり着くことができた。
俺は、そのマンションの屋上から飛び降りたのだ。
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