第31話

「は……初めまして……黒野唯です」

「ど、どうも間島景吾です」

「けいちゃん、なんでそんなにかしこまってるの?」

 校舎の中庭で、例のごとく相談事を持ちかけてきた依頼者と対面する。

「いや、なんて言うか……イメージと違ったから、面食らったというか」

 今回相談を持ちかけてきた『黒野唯』は黒髪のボブカットで、垂れ目な目元に黒縁メガネが印象的な、一見大人しそうな女子生徒だ。

「ごっ……ごめんなさい。イメージと違って」

 俺の言葉に対し、絞り出すような声で申し訳なさそうに頭を下げて謝罪する黒野。

「大丈夫だよ、謝らなくても。けいちゃんが余計なこと言うから悪いんだよ」

「俺のせいかよ⁉ いや、俺のせいか……すまん」

 励ますように。そして、俺を非難するように黒野に声をかける彩也香。

 先ほどから気弱そうな態度の黒野に「イメージと違う」と言ったのは、昼休みに流れる校内ラジオでの話し方と異なった印象を抱いたからだ。

 少なくとも、まともに校内ラジオを聞いたのは今日が初めてだが、その時の話し方はとても軽快で、明るい印象を抱いた。しかし、今目の前にいる校内ラジオでパーソナリティーを務める黒野は、最初の挨拶でも言葉を詰まらせたり、気弱そうにオドオドした態度が目立ち、放送中の話し方とは全く異なっている。

 今でも黒野は、俯いてチラチラとこちらを伺うような視線を向けている。

「えっと……早速で悪いけど、なんの相談か聞かせてくれるか?」

 先ほどから、伺うようにこちらを見る黒野の言葉を待っても埒が明かないと思い、こちらから話しを切り出す。

 俺に話しを促されて意を決したのか、少しだけ顔を上げて上目遣いで話し出す。

「あの……相談事なんですけど。今週の金曜日までに……大勢の人の前で話せるようになりたいです」

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