第3章

第30話

『今日も始まりました~。お弁当に夢中で聞いてない人も多いのかな~?』

「おっ! これがそうか?」

「そうだな、流れてるのは知ってたがちゃんと聞いた事なかったけど」

「飯食うのに夢中だからなっ! 全然気にしてなかったよなっ!」

「お前は食い過ぎだろ。てか、全部コロッケパンじゃねぇか‼」

 木下の相談以降、俺と隼人と、新たに竜輝が加わって昼食をとるようになった。

 竜輝が昼休みに過ごす場所を、体育館裏から中庭に変えて大体この三人。たまに木下が昼飯を購買で済ませる時に加わったりするが、今日は木下はいない。

『新入生の生徒たちも、入学してから三週間経ったけどそろそろ嫌いな先生とかもできた頃かな? おっと、あまり変な事言うと私が怒られちゃうから、おふざけはこの辺で――』

「思ってたよりちゃんとラジオっぽいじゃねぇか」

「確かにな、普通に喋れてるし」

「昼飯はいつ食ってるのかな?」

「喋るのはせいぜい五分くらいだろ。その後は、歌を流してそのまま終わりらしいから、それから食うんだろ」

 普段なら、昼飯を食いながら雑談にふけっているところではあるが、今日は少し違う。

 昼休みに流れる、放送部による校内ラジオ。普段なら、全くと言っていいほど聞いていないが、今はそれに耳を傾けながら昼食をとっている。

 校内のスピーカーから、軽快なBGMと共に、可愛らしい印象の声と、これまた軽快なトークが響きわたる。

『――以上、パーソナリティーは、放送部二年二組の黒野唯でした~。それではまた明日~』

 慣れた口調で校内ラジオを締めると、本人のチョイスなのか誰かのリクエストなのかは知らないが、流行りの歌が流れる。

「今日の放課後に、今の『黒野唯』ってやつとここで話すのか?」

 校内ラジオを聞き終え、共に丸テーブルを囲う竜輝が問いかける。

「まぁな、お前の時も……というか、木下から相談事を持ちかけられた時もそうだったよ」

 俺の相談解決屋としての活動を聞いた竜輝は「マジか」と一言だけ返し、弁当を掻き込む。

 木下の相談事から派生した竜輝の悩み解決。あれから一週間が経ち、また新しい相談事が彩也香の元に舞い込んでいた。

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