第27話
そうして土日を挟んで、月曜の昼休み。俺と隼人は、木下を伴って体育館裏にいる羽島の元で昼食をとっている。
「そんで? 妹ちゃんはどんなアニメが好きなの?」
「どんなって言われても……俺は詳しくねぇし」
「そんなだから仲良くなれないんだしっ! 思春期女子のオタクはリアルに興味無いんだから、歩み寄ってあげないと素っ気ないままだしっ!」
「歩み寄るって、グッズをプレゼントすのじゃダメなのか?」
「物によるね! 好みじゃないジャンル貰っても困るし。野球部にサッカーボールをプレゼントするような感じになるし!」
「なる……ほど?」
前回同様に、一人で体育館裏にいる羽島に事情を説明してから木下を紹介したら、木下の質問攻めと説教じみたトークを、羽島は困惑しながら受け止めていた。
「楽しそうだなっ‼」
「楽しそうなのか?」
羽島と木下を眺めながらパンを頬張る隼人が、能天気な事を言う。
「少なくとも、前みたいにどんよりした雰囲気じゃないからなっ!」
「あの勢いに呑まれてるだけじゃないのか?」
木下のトークが炸裂するまでは、羽島から放たれる威圧的なオーラは健在だったが、今では木下の勢いに流されてたじろいでいるように見える。
あの強うそうな羽島が圧倒されている。木下恐るべし。
「とりまプレゼントって何あげたの?」
「駅前のアニメショップにいる男にどんなの買ったか聞いて、それを参考にして適当に選んだ物だけど……」
「適当とかっ‼ 具体的には?」
「海賊漫画のキーホルダーとか……?」
「あぁ~たぶんジャンル違いだわそりゃ! 男に聞いたらそうなるっしょ!」
「女なんか、ほとんどいなかったからしょうがないだろ? 男もオロオロするばっかで、やっと答えたのがそれだったんだよ」
「そりゃ若い女オタは周りにオタクを隠してる事とかあるし! まぁ抱き枕とかじゃない分まだマシだったかな?」
なんか今の会話で、羽島がオタク狩りしてるって噂の真相が分かった気がする。
「とりま今日の放課後、ウチと一緒に妹ちゃんのプレゼント買いに行こっか!」
「なんでお前と?」
「ついでに、羽島っちにオタクの矜持を伝授してしんぜよう!」
「なんで俺に?」
本当に宇宙戦艦みたいに、羽島の威厳と尊厳を蹂躙してる。
「なぁ隼人、あの二人大丈夫かな?」
羽島が一方的に攻め込まれる構図を横目に、購買で買ったパンを頬張る隼人に問う。
「大丈夫だろっ! 楽しそうだしっ!」
頬張るのを一旦止めて、満面の笑みで答える隼人。
能天気な……と思ったが、羽島は困惑しているような態度だが、そこには木下の話しに耳を傾け、愉快な反応を示す羽島の姿があった。
「まずは、無難な物選ぶとして――」
その後も、チャイムが鳴るまで木下の宇宙戦艦は侵攻を続けた。
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