第26話

「――というわけだけど……」

 昼休み中に聞いた羽島の悩み。それと、木下からアドバイスを貰いたいという頼みを打ち明けた。

 木下と彩也香は、それを大人しく聞きながら、真剣な顔つきに変わっていった。

「羽島君、妹さんの事すごく大切にしてるんだね」

 俺の説明を聞き終えて、彩也香が胸に手を当てながらそう言った。

「あぁ、俺たちもなんて声をかけてやればいいかわからなかった」

 羽島が妹のために交友関係を断ち切っていること。妹との関わりについての悩み。疎外感を感じていること。それれらを聞かされた俺と隼人が、どうにかしてやりたいと思った事。

 普段から相談事を持ちかけられている彩也香は、他人の悩みにも真摯に受け止められる。

 今の話で彩也香は理解してくれたようだが、木下の方は……。

「間島っち……その話、なんで早く言わないんだし!」

 静かに話を聞いていたかと思えば、恨めしそうな声色で話し始める木下。

「早くって言われても、そりゃ人の悩みを言いふらしたりするような事はしたくなかっただけだ!」

「違うっ‼ そっちじゃないっ‼」

 丸テーブルに身を乗出し、大声を出す木下。

 今回は校庭で走る陸上部のかけ声が一瞬止まった。

「違う。って何がだ?」

「羽島っちの妹ちゃんが、この学校に来るって事だよっ!」

「そっち⁉」

 羽島の悩みを隠していた事を憤っているかと思いきや、悩みそっちのけで妹の方に着目していたようだ。

「アニメ好きな妹ちゃんが来年入学したら、ウチ絶対友達になるっ‼」

 宣言するように、立ち上がったまま拳を握り込む木下。

「なればいいじゃねぇか」

「なるっ‼」

 これ前も言ったような……。

「友達はさておき、なんかアドバイスはあるのか? 羽島の悩みを優先して欲しいんだが」

 木下の友達宣言で流されそうな、本命の議題。孤立して疎外感を感じている羽島の悩み。俺としてはそちらを優先してやりたい。

「そんなん余裕でしょ! 要は、羽島っちと妹ちゃんの仲がよくなればいいんでしょ?」

 呆けた顔で、何事もないように木下は話す。

「要約しすぎな気もするが、そうゆう事になるのか?」

「そうゆう事でいいっしょ‼ とりま明日……今日金曜か。じゃあ来週の月曜に羽島っちと相談、それで問題解決って事で! ウチに任せなさい!」

「任せなさいって、なにする気だ?」

「それは、乙女の秘密。まぁ宇宙戦艦にでも乗ったつもりでいなさいな!」

 そう言って、口元に人差し指を当ててウィンクで答える木下。

 不安は残るが、解決方法に当てはあるようだ。てか宇宙戦艦って……大船のつもりか?

 その後、木下の自信満々な態度に期待を抱く事にして、その日は解散となった。

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