第23話
時は遡り、中学二年生の合唱コンクール。
みんなで歌う曲を決めるため、教室で話し合いが行われた際。コンクールはおろか、合唱自体に乗り気じゃない生徒も何人か存在した。
俺も学校行事のため、仕方なく合唱に取り組んでいるだけだったが、乗り気じゃない生徒の中には、むしろやりたくないという考えのやつもいた。
話し合いの仲で、乗り気じゃない生徒も、好きな曲なら格好だけ取り繕ってもいい。という意見がでた。
そこで、そいつ等の好きな曲も候補に入れて、多数決で決める事になった。
結果は、コンクールに乗り気な生徒の票が一部に偏り、別の曲が採用になった。
その曲で合唱練習も行われたが。意見が通らなかった乗り気じゃない生徒は、歌わずに立っているだけでやり過ごしていた。
コンクールに乗り気な生徒は、そんな生徒を見過ごさず何度も説得なり注意なりしていた。
多数決で意見を蔑ろにされたにも関わらず、コンクールに対し、同じ熱量を強要されていた。
ただふてくされて、意固地になっているだけではある。だけど俺は、反発している生徒の態度も理解できた。
そのまま意見は平行線を保って、コンクールの当日を迎えた。
当日も乗り気じゃない生徒は、棒立ちを決め込み、パートによって声量がバラバラで散々な結果に終わった。
どうすればコンクールは成功したのか。
乗り気じゃない生徒に、やる気を出させれば良かったのか?
違う。
献身的な説得をすれば良かったのか?
違う。
単純に、乗り気じゃない生徒が折衷案を出した際、歩み寄れば良かった。
そうして初めて、同じ立場で意見を言い合えた。そうすれば、説得にも耳を傾けてくれたかもしれない。話し合い、分かり合えたかもしれない。
多数決の結果。ただすれ違い、反発しあうだけで終わってしまった。
歩み寄りだけが、分かり合うための第一歩だった。
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