第22話

 午後の授業中。

 黒板に書き込むチョークの音も、教壇に立つ教師の声も頭に入らず、窓から外を眺める。

 頭の中では、昼休みの事が思考を支配していた。

 羽島の悩み。それもある。しかし、頭の中を巡るのは自分の事だった。

 偏見を持っているつもりはない。

 俺は、そのつもりでいるだけだった。

 見た目からして、羽島が不良なのは知っていた。木下の情報で、それは確信にもなった。

 そんな羽島は、妹のために不良時代に手にしたものを手放した。

 問題行動を起こさず、喧嘩仲間とも距離をおき。いずれ入学するかもしれない妹に、悪い評判や変な注目を浴びないように、自分を犠牲にしている。

 それは、世間が不良に抱く印象と合致しているのか?

 周りから疎まれ、蔑まれるような行動なのか?

 一方的に恐怖を抱き、勝手に怯えていた。

 不良だった事は褒められる事じゃないが、女を守れと言われて育った価値観を貫いている。

 俺は羽島と話しをするまで、彼に偏見を抱いていたんじゃないか?

 偏見を持って、歩み寄ろうとしない。

 俺が嫌っていた事じゃないか……。

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