第20話
調査ってどうやるの?」
「まぁ、どちらかというとそっちが難題だな」
中庭に留まり、俺と彩也香、そして当事者である木下の三人で作戦会議をしている。
木下の相談事。羽島竜輝がオタクであるかの調査。及び結果次第で友達となるように仲を取り持つ。
友達になる点は、木下の持ち前の明るさがあれば問題はなさそうだ。尊いとかてぇてぇとか、よくわからない理由で話せないとか言っていたが。まぁ、友達が欲しいという本人の気持ち次第でどうにかなるだろう。
問題なのが調査の方だ。
木下曰く、アニメ関連の商品ばかりが取り揃えられた、駅前のアニメショップ。そこから羽島竜輝が出てきたのを目撃。しかも、そのショップの袋を持った状態でだ。
単に漫画を買っただけじゃないか。という考えも浮かんだが、駅の構内に大きな本屋があるため、電車通学で駅を利用する羽島がわざわざ駅の外にあるアニメショップで漫画を購入するとは思えない。
おまけに、木下も事前に調査をしていたようで、羽島と同じ中学の知り合いに聞いたところ、中学の時から根っからの不良らしく、オタクを思わせる証拠は挙がらなかったらしい。
本人に直接聞けば手っ取り早いが、事実はさておき、オタクである事を表に出してない以上、隠している可能性がある。
別の話題で接近するならともかく、それを本人に聞いて暴くというのは、何をされるか分からず俺でもさすがに恐い。
以前、コウタとシュウジの会話からして、クラスの輪に溶け込まず、一匹狼のように孤立しているようなので、クラスの人から情報を得るのは期待できない。
「私が直接聞いてこようか?」
取っかかりを探して頭を悩ませていると、彩也香が小さく手を上げて主張した。
「それはダメだ!」
「どうして?」
「さっき木下が言ってただろ、羽島は本物の不良だ。偏見を持っているわけじゃないが、彩也香を危険な目に合わせるつもりはない!」
「大丈夫だよ。女の子に乱暴したりしないよ……たぶん」
言葉が尻すぼみになっていく。自分で言って不安になっている証拠だ。
「危険な可能性があるならダメだ!」
「でも……」
「ダメなものはダメだ! 良い子だから言う事聞きなさい!」
「ねぇ、また妹みたいに扱ってない?」
「あっ、扱ってない……」
いつかのやり取りみたいに、彩也香がハムスターになっている。
以前と違い、この場にはもう一人居合わせている。このやり取りを見られている事に羞恥を覚え、彩也香をなだめながら横目で木下の様子を伺うと。
「なんだよ……」
呆然とした顔で、こちらを眺める木下と目が合った。
「なにそれ? バカてぇてぇ!」
だから、てぇてぇってなんだよ……。
「幼馴染み同士でそんな事してんの、マジ尊い」
ハムスターになっている彩也香に、なぜか興奮気味な木下。
相談事を解決するために話し合っているのに、話しどころかこの場の収拾がつかない。
とりあえず、話を戻そうと話題をすり替えようと思考を巡らす。
ん? 待てよ……。
「話題……別の話題……不良学生……」
「けいちゃん?」
「どしたの? 間島っち!」
そうだ、閃いたぞ。
一人言を呟きながら、頭に浮かんだキーワードを繫ぎ合わせて、一つの案が思いついた。
「二人とも、羽島の調査。なんとかなるかもしれない」
不思議そうにこちらを伺う二人に、俺は力強く言い放った。
俺の言葉に、二人は驚きの表情を見せたが、すぐに興味津々といったように木下が問いかける。
「間島っち、その作戦とやらをお聞かせ願えるでしょうか」
木下は、右手を頭の横に持っていき、敬礼の構えをとる。
「作戦ってほどじゃない、単にお喋りしに行くだけだ」
頭に疑問符を浮かべる二人。まぁ本当にお喋りするだけだから軽い説明で充分だろう。
スマホを取り出し、協力者にメッセージを送る。
予定が空いていれば、明日にでも作戦決行だ。
返事はすぐ返ってきた。予定は空いているようで、協力者の確保は成功。
「よし、じゃあ簡単に説明をするぞ――」
二人にも軽い説明をして、その日は解散。
空には既に、夕日が差していた。
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