第18話
相談解決屋。そう呼ばれているのは、いつからかそう呼ばれるようになったからだ。決して自分たちが名乗っているわけではない。
この活動の始まりは、相談事を持ちかけられた彩也香が俺に助言求めてきて、それを一緒に解決した事が始まりのようだ。
別に報酬を得られるわけでも、部活や委員会みたいな学校行事の一環というわけでもなく、いわゆるボランティアだ。
そして今目の前で、恐らくアイプチやマスカラを駆使して、存在感を増長させた双眸を向ける木下瑞穂が、俺たちに相談事を持ちかけてきたのが現状。
「とりま何から話そうか?」
相談事の内容は俺と一緒に聞く事にしていたらしく、昼休みの時には放課後に予定を空けておくようにと話していただけのようだ。
「とりま要件を聞かせてくれ」
こちらが話しを聞く側にも関わらず、質問を投げかける木下に要件を求めた。
俺の返答に、メイクで強調された瞳をさらに大きく開いた後、それを細めて「ウケる‼」と一言返し、要件を話し始める。
「とりまウチの相談なんだけど……調査依頼的なっ‼」
言葉を選ぶように、少し間を置きながら要件を話す木下。
さすがにそれだけでは要領を得ず、いくつか質問をする。
「調査依頼って何を?」
「何をって言うか~、調べて欲しい人がいるんだよね~!」
「探偵に相談したらどうだ?」
相談があると聞いて来たのに、探偵や刑事が行うような人物調査の依頼を持ちかけられて、思わず突っぱねるように返してしまう。
それもそのはず、調べて欲しい人がいる。なんてものは、相談事の範疇を越えている。ましてや、同級生に頼むような事とも思えない。
即座に相談口の変更を提案した俺に「せめて誰を調べるかだけでも聞いてあげよう?」と彩也香になだめられた俺は、木下に続きを促した。
「調べて欲しいって誰の事だ?」
ふてくされたのか、口を尖らせてしょんぼりしていた木下だが、調査対象を聞いた途端、表情を一変。眉間に皺を寄せ、丸テーブルに肘を置いて顔の前で手を組んだ。
さながら、これから真実を話す。と言わんばかりの態勢だ。
「諸君らに調べて欲しい人物だが……」
役者になりきったように、芝居がかった声で話し始める木下。
「二年一組の羽島竜輝君。彼がオタクであるかを調べて貰いたい」
未だ太陽が沈みきらず、青空が残る放課後。校庭からサッカー部の掛け声とランニングの足音が響き渡る校舎の中庭。そこにある丸テーブルを囲む三人の内の一人、木下瑞穂の言葉を聞いた俺たち二人は、疑問符を頭に浮かべたまま、ただ沈黙をしていた。
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