第15話

「また明日ね、けいちゃん!」

「家まで送らなくて大丈夫か?」

 ショッピングモールを後にして、彩也香の家との分かれ道。時刻は十八時過ぎ。外はまだ明るいとはいえ、退勤ラッシュで車の通りが多い。彩也香を歩いたまま一人で帰らせるのに抵抗があった。

「大丈夫だよ、家近くなんだし」

「でも一人だと危なくないか?」

「もぉ、なんか過保護じゃない?」

「そりゃ、いもう……女性を一人で歩かせるのは――」

「今妹って言おうとした?」

「い、言ってない……」

 俺の言葉を遮って、妹と呼ばれる事に不服そうにする彩也香。

 苦笑いで妹呼びを否定する。それに対し「もうっ!」と頬を膨らます彩也香。相も変わらずハムスターみたいだ。

「けいちゃんこそ、車に気をつけてよね!」

 こちらの心配もお構いなしに、逆にたしなめられてしまった。

「彩也香も気をつけろよ」

「うん、今度こそバイバイ」

 俺の忠告に素直に答え、彩也香はこちらに背中を向けて歩き出す。

 背中がゆっくり遠ざかっていく。

「彩也香ーっ‼」

 遠ざかる背中に、大声で呼びかけた。

「また明日なーっ‼」

 こちらを振り向き、手を振って答えて再び遠ざかっていく。

 その背中が角を曲がって見えなくなるまで見送る。そこでようやく視線をそらす。

 人通りが少なく、代わりに車の通りが多い道を歩く。行き交う車の音に嫌悪感を抱きながら家路につく。

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