第12話
昼休憩が終わり、五限目と六限目も真後ろから聞こえるイビキを聞きながら授業を終える。
「じゃあ、気をつけて帰れよ~」
新堂の適当な挨拶と共にホームルームが終わり、放課後を迎える。
特に用もなく教室に残って談笑する生徒や、すぐさま部活に行く生徒。時間割という拘束が解かれ、それぞれが自由に動き出す。
「景吾、また明日なっ!」
「おう、また明日!」
帰り支度を済ませた隼人と別れの挨拶を交わす。いつもなら、放課後に残ってグダグダ過ごしたり遊びに行ったりするが、この後の予定が決まっている俺を気遣ってか、隼人はすぐに教室を出て行った。
俺も荷物をバッグに仕舞い、帰り支度をしている最中の、放課後の予定の張本人の元へ向かう。
「帰ろうか、彩也香」
「うん。帰ろう」
しかめっ面を浮かべていた朝とは違い、すっかり機嫌を直した彩也香は、笑顔を浮かべて隣に並び立つ。
「バイバイ、彩也香」
教室に残って談笑している彩也香の女友達が、こちらに小さく手を振りながら声をかける。
彩也香もそれに対し、小さく手を振って応える。
「間島君もバイバイ」
「ん? あぁ、バイバイ」
何故かニヤニヤしながら言われた事に疑問を感じたが、気にする事なく応えた。
下駄箱で靴に履き替え、彩也香と並んで校門を出る。
校門の前には、北高等学校前と書かれたバス停があり、車道を挟んだ向こう側にも同じバス停がある。
普段であれば、彩也香はそのバス停を利用して登下校をしていた。
「本当に歩きでいいのか?」
「うん。けいちゃんも歩いて帰るつもりでしょ?」
「そうだけど、別に俺もバスで帰ってもいいんだぞ?」
一緒に帰る約束はしたが、俺に合わせて彩也香まで歩いて帰る必要はない。むしろ、普段からバスを利用しているなら、俺が彩也香に合わせた方が楽できて効率もいいはずだ。
「いいの、久しぶりに並んで歩くのもいいじゃん?」
顔をこちらに向けて、のぞき込むように目線を上げながら微笑みを浮かべる彩也香。
確かに、中学の時であれば、俺の自転車で二人乗りをして彩也香の家まで送る事もあったが、高校に入学してからは、通学路が変わったという事と通学手段が違うという事もあり、一緒に登下校する事もなくなった。
「まぁ、彩也香がいいなら別にいいけど」
「じゃあ行こっ!」
桜の花がまだ残る校門前。バス停の前でバスを待つ生徒が列をつくる中、俺たちはその横を通り過ぎながら、二人で並んで歩く。
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