第11話

 教室に戻る途中、校舎の階段を隼人と二人で上る。

「なぁ、景吾!」

「なんだ?」

「入院中、どんな本読んでたんだ!」

「歴史書とか、タウン情報誌かな?」

「小説とかじゃないのかっ?」

「普段読まない物とか、たまにはいいかなって……」

「面白かったかっ?」

「正直微妙だったな。普段から読んでる作家の小説読めば良かったかも」

「そっか! 今度おすすめの小説教えてくれよっ!」

「別にいいけど……お前って読書してたっけ?」

「全然しないけど……たまにはいいかなって……なっ!」

「じゃあ、俺が持ってるやつ、今度貸してやるよ」

「エロ本とかでもいいぜっ!」

「河原にでも行って探してこい!」

「おすすめの河原とかあるかっ?」

「あるわけないっ‼」

 俺と隼人は、笑い合いながら教室へ戻った。

 その最中にも、俺は考えていた。

 相手の趣味に歩み寄るのは、こんなにも簡単な事なのに……と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る