第9話
「景吾、購買行こうぜっ‼」
チャイムと共に起きた隼人は、寝起きと思えないテンションで購買に誘ってきた。
俺は親が共働きで、朝は早く家を出る。そのため、昼飯は自分で用意する事になっている。
購買で売られているパンがいつもの俺の昼飯だ。
隼人は、二限目が終わると「腹減った~」と言って十分休憩の間に弁当を平らげていた。
三限目から眠っていたのは、それが原因だろう。
俺はバッグから財布を取り出しつつ「待ってろ」と一言。
隼人と共に購買へ向かう。教室を出る時、彩也香を横目で見ると、持参した弁当を広げ、女友達の三人で机を囲んでいた。
購買の場所は、校舎玄関の中で、下駄箱が置かれた場所の奧に部屋があり、そこに長机を並べてパンや飲み物を販売している。
俺と隼人が到着する頃には既に人だかりが出来ていた。勝手が分からず少し離れた場所でそれを眺めている新入生は、目の前の光景に圧倒されているようだった。
俺と隼人は、立ち尽くす新入生達の側まで行き「先輩に気を遣う必要はない」と助言を与えた。
購買でパンを購入しに来る生徒は、俺のように弁当を用意していない者や、弁当だけでは足りない、育ち盛りの運動部がほとんどだ。彼ら……特に、運動部や隼人みたいな奴に遠慮していては、飯抜きで午後の授業を迎える事になる。
新入生達は「分かりました」と返事をすると、意を決してパン争奪戦の群れに加わった。
「ヨッシャー、競争だー‼」
新入生に続くように、隼人は気合いを入れて群れに加わる。俺は隼人の背中に続いて、群れに加わった。
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