第8話

 登校完了時間を知らせるチャイムが鳴り、廊下でお喋りしていた生徒達は自分の教室へ戻っていく。

 チャイムの音は、登校完了を知らせるのと同時に、朝のホームルームの開始の合図でもあるが、担任の新堂が来るまで、ほとんどの生徒は席に着かず、教室の中で自由に過ごしていた。

 自分の席に座ったまま談笑している俺と隼人。そして、そこに加わる形で側にいる彩也香も、自分の席に戻らず、新堂が来るまでの時間を過ごしていた。

 程なくして、教室のドアから「自分の席に着け~」という声と共に、新堂が入ってきた。

 各自、自由に過ごしていた生徒も、その声を合図に自分の席に戻る。

 新堂は教壇の上に立ち、欠席の有無を確認すると、生徒を見渡しながら話始める。

「今日から授業が始まるが、あまり眠ったりするなよ。特に三ツ矢!」

 厳格とはほど遠い忠告と共に、名指しで注意される隼人。それに対し「午後からは約束できません‼」と返し、教室に笑いが起きた。

 クラスが変わったばかりで、居心地の良くない生徒もいるであろう中で、ムードメーカーを利用して場を和ます新堂。厳しさは感じられず、生徒の扱い方は慣れているようだ。

 その後は、プライバシーに関わる事だからか、俺が始業式を休んでいた事に触れる事なく、新入生を怖がらせるなとか冗談を挟みながら、連絡事項を述べてホームルームを終えた。

 新堂と入れ替わるように、一限目の教科担任が教室に姿を現して、二年に進級してから最初の授業が始まる。

 授業と言っても、初回は自己紹介やオリエンテーションがほとんどで、話を聞くだけで退屈ではあったが、割と楽な授業ではあった。

 三限目からは、真後ろの席からイビキが聞こえ、新堂との約束を早速破っている事に呆れつつも、四限目の終わりを知らせるチャイムと共に、昼休みを迎えた。

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