漢字を〇〇で攻略せよ‼

西しまこ

1.漢字をダジャレで攻略せよ‼

(1)文字の神様はご先祖様⁉

第1話

 学校からの帰り道、おれはな気持ちで歩いていた。


「タチバナ、どうしたんだよ。なんか暗いぞ」

「ジュン」


 おれの後ろから親友の星野ほしのじゅんが追いついてきて、横に並んだ。おれの名前はたちばな和樹かずき。五年生になって、一ヶ月経った。ジュンとは今年も同じクラスで嬉しいなと思っている。おれもジュンもカードゲーム好きっていう点と運動が苦手っていう点で意気投合しているんだ。でも。


「でも、ジュンは勉強できるからなあ」

「算数はタチバナに負けるよ」

「算数じゃなくて、国語だよ。国語というか、漢字」

「タチバナ、漢字、苦手だよなあ」

「そうなんだよ……」


 おれは漢字テストのことを思い出して、になった。


「ああ、ほんとうにだ」

「……タチバナ、それ、だよ。ゆううつ。『うれい』って言う漢字に、難しい『うつ』っていう漢字」

「そもそもおれ、『うれい』って漢字がわかんないんだけど」

「まあ、まだ習ってないからね」

「ジュンはなんで知ってるの?」


「百人一首でさ、『しと見し世ぞ今は恋しき』って出て来たじゃない? それで覚えたんだ」

「おれ、それ、動物の牛だと思っていたよ。『牛とみしよぞ今は恋しき』」

「え? じゃあ、和歌の意味、わかんなくない?」

「百人一首に意味なんてあるの?」

「あるよ」

「……知らなかった。呪文みたいに覚えてた」

「よくそれで覚えられたね」

「うん、まあそこそこね。かるたとりが出来ればいいんだし。……それより、漢字だよ。おれ、漢字、ぜんぜんわかんね」


 そもそも漢字が苦手だったのに、五年生になったら習う漢字が急に難しくなったように感じた。画数も多いし意味もよくわからないし、ぜんぜん覚えられない。しかも書くのが苦手だ。


「書いて覚えたら? 宿題にも出ているでしょ? ボクは宿題で漢字を書くと覚えられるよ。宿題の漢字がそのままテストに出るからテスト勉強にもなるし。たくさん書くといいよ!」

「それで出来るなら苦労しないよ……」

 おれはおおきくため息をついた。


「まずは、宿題を出しなよ!」

「うん……」

 かどのところでジュンと別れて、家へ向かった。

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