BL会

『狩沢さん、今週末空いてたらBL会しませんか?』


オレが送ったそんなメッセージをきっかけに、すぐにBL会が行われる事となった。





狩沢「深夜く〜ん、ごめん!遅れた!」


『あ、狩沢さん!大丈夫ですよ、オレも今来た所ですから』


待ち合わせのいけふくろうで、しばらくボーッと待っていると、遠くから聞き馴染みのある声が聞こえて視線を上げる。


狩沢「ほんとにごめんね〜。私がお気に入りのカフェがここの近くにあるから、早速ここに行こうか!」


『了解です!』


楽しそうに前を進む狩沢さんにクスリと笑いながら、オレは彼女の背中を追いかけた。





『それで臨也さんは言ったんッス、“あいつのことは俺だけが知っていれば良い”って!!』


狩沢「何それ!?シズイザ!?イザシズ!?ねぇ絶対にイザイザはシズシズの事が好きじゃ無い!!」


『ですよね!?もうオレその場で気絶しそうになっちゃって……!』


多少の脚色はあれど、先日の臨也さんのセリフを狩沢さんに伝え、2人してカフェ端のテーブルで盛り上がる。


『やっぱりあの2人のカップリングは存在したんだと思うと感動で……』


うぅ、思い返すだけでも嬉しすぎる。


あそこのシーンもう一回見たい。


余韻に浸っているオレに、狩沢さんは頼んだアイスコーヒーのストローをくるくると回しながらオレをニヤニヤと見てこう言った。


狩沢「シズシズとイザイザのお話もいいけどー、2人はなんか無いのー?ムフフなお話」


2人って、もしかしてオレと臨也さん?


『あはは、残念ながら期待に添えられるようなエピソードは……』


……そこまで言って、最近の色々な出来事を思い出す。


キスをされそうになった事、腰を抱き寄せられて鼻がくっつきそうなほど近距離になった事。


思わず顔が赤くなった。


狩沢「えっ、なになに!絶対訳ありじゃん!!!」


『あーっ、ホントに違うんッス!何も無いんです!何も!』


狩沢「いいじゃないー!お姉さんにおしえてよ、ね?恥ずかしがらないで〜」


『いやいやいやいや』


余計な事を思い出してしまった。


目前の狩沢さんからの追及をなんとかのらりくらりと躱わしながら、話を元に戻す。


『オレと臨也さんは本当にそういうんじゃ無いですから。それに、オレは臨也さんには静雄とくっついて欲しいですしね、ほら、24時間戦争コンビ!』


オレの発言に、狩沢さんがひくりと肩を揺らす。


狩沢「そう!!それだよ深夜くん!裏で密かに流行り始めたシズシズとイザイザの新しいカプ名!」




『え?これ流行ってるんッスか??』


狩沢「深夜くん、ダラーズって知ってる?」


『あ、はい、多少……』


なんなら臨也さんから頂いたスマホにはすでにオレがダラーズとして登録されていた。解せぬ。


ただオレはダラーズとして動くつもりはないし、ここで何処かのグループに所属してしまえば、オレを理由に臨也さんが三つ巴を作り出すかもしれない。


だからあくまで、“少し噂で齧った程度”を装う。


狩沢「私、実はダラーズに所属してるんだけど、そのホームページにネット上掲示板みたいなのがあるの」


『そうなんですか』


狩沢「そこに腐女子や腐男子が集まる“801板”っていうのがあるんだけど、そこで最近2人の事を“24時間戦争コンビ”って言うのが流行ってるのよ!」


(え、待って、ダラーズにもやおい板あるの?2chねる的な扱いなのか…?凄いな…)


少しビックリしながらも、狩沢さんの言葉に相槌を打つ。


狩沢「24時間戦争コンビって考えた人ネーミングセンス最高じゃ無い?天才かもしれないわ……」


尊いと頬が緩んでいる狩沢さんに、オレは困ったように笑いながら話を聞いていた。


『あの、狩沢さん。その名前を考えたの、オレなんッス』


狩沢「……えっ、えっ、えーーーーっ!?!?そうなの!?深夜くんが考えたの!?天才ね!?」


興奮する狩沢さんに、オレは言葉を付け加える。


『正確に言うと、その言葉をこちらに持ってきたのがオレなんッス』


オレの言葉がよくわからないと言ったように、狩沢さんは固まる。


——きっと話すなら、今しかない。


オレはすぅ、と息を吸いながら、スマホを取り出す。


臨也さんから頂いたスマホではない方のスマホを取り出して、オレはこう切り出した。


 


『あの、狩沢さん。これから、オレはおかしな事を言います。それでも良ければ、聞いていただけませんか』


 


突然変わったオレの態度に、狩沢さんは目を丸めながらパチパチと複数回瞬きをする。


それでも、オレの真剣な眼差しに何かを察したのか、彼女はそっと頷いた。


『まず、オレはこの世界の人間じゃないッス』


狩沢「……えぇっと……どしたの?突然。ゆまっちみたいな事言い始めて……」


『オレは、この世界とは別世界から来ました』


狩沢「……」


オレの言葉に、狩沢さんは顔を引き攣らせながら笑う。


多分、突然おかしくなったオレにどう言葉を返すべきか迷っているのだろう。


そこでオレは証拠となる現世から持ってきたスマホを狩沢さんに見せた。


狩沢「これは……?うーん?こんな都会で圏外なんておかしいね?」


『これは、オレのいた世界のスマホッス。世界が違うので、電波が入らないんです』


狩沢「……そう。でも、あなたはイザイザの従兄弟でしょう?」


『……すんません。オレは、本当は臨也さんと血は繋がってません。こちらの世界に来たとき、オレには戸籍がありませんでした。生きづらいだろうと配慮してくれた臨也さんが、オレに“折原臨也の従兄弟”という戸籍をくれたんです』


狩沢「イザイザと深夜くんって血繋がってないの!?」


『はい』


オレの言葉に、狩沢さんは深く考え込む。


狩沢「突然現れたイケメンをイケメンが匿う……ふむ、良いわね」


『???』


この人は一体何を言っているんだと若干引きながら話を進める。


『……あの、信じていただけました?』


狩沢「……うん。正直、奇想天外な話だけどね。深夜くんは突然こんなことを嘘で言う子じゃないって知ってるし。それに、妹ですら一緒に住んでないあのイザイザが従兄弟を家に置いてる時点でおかしいとは思ったのよね〜。……まぁ、好きな子だから置いてるのかなっていう妄想は儚く砕け散ったわけだけど」


(う、うん……?)


『と、とりあえず、オレが異世界から来た事は、臨也さんも知っているんッス。でも、どうしても狩沢さんに、聞いてほしい事があるんッス』


狩沢「イザイザが知らないことを私が知ってもいいの?」


『はい。むしろ、臨也さんにだけは話せないんッス』


狩沢「イザイザにだけは……って、一体どういう事…?」


『落ち着いて聞いてくだい。


 


 


 


 


――ココは“デュラララ‼”というアニメ世界なんッス。








――そして臨也さんは、そのアニメの黒幕なんです』

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未知 灯油豆腐 @Toutofu

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