ほんのちょっとのbreak time
『 ア゛ー゛!勉強疲れた…!』
そう叫んで、自室のベッドにダイブする。
ダラーズ初集会後から数週間、オレはテストに向けて数時間机に向かう日々が続いていた。
皆より先取りして勉強しているので赤点を取るなどと言う事は起きないだろうが、どうせなら満点近く取りたいと思い勉強をしていた。
これから切り裂き魔が現れるまでは、小説で書かれていない、所謂ちょっとした休憩期間とも言えるだろう。
ストーリーの展開を気にしないで過ごせるというのは自分が思っていた以上に楽だった。
ただ……。
(毎日ずっとテスト勉強は流石にしんどい……!)
テストまではあと二週間。
正直もう勉強しなくてもいいや、なんて気持ちも芽生え始めている。
『どこか遊びに行きたいな……かと言ってみんなも勉強してるだろうから遊びに誘うのはだめだよね…』
じーっと見つめるスマホの連絡帳には、臨也さんから貰った後交換した三人の連絡帳が入っていた。
『うーん……』
それからしばらくスマホの画面とにらめっこをして、他人の名前に目を走らせる。
(ワゴン組とも交換してもらえたから遊ぶのもいいかもな…)
その時、ふと目線が止まる。
(そういえば、最近駅近くに新しいカフェが出来たんだっけ)
確か“舌に乗せたら思わず頬が蕩ける濃厚プリン!”だっただろうか。
『プリンかぁ……』
真っ先に思い出したのバーテングラサン姿の彼だった。
(そういえば、前のゴタゴタ以来会えてねぇな……)
このまま彼との関係が気まずくなってしまうのも嫌だと思い、早速静雄に一緒にカフェに行かないかとメールを送る。
(よし、連絡来るまでもう少し勉強頑張ろう……!)
◯
◯
◯
しばらくして静雄から連絡が来て、早速明日遊びに行こうということになった。
疲れたと思ったので部屋から出ると、二人はリビングで仕事をしていた。
『あ、波江さん!来てたんッスね、こんにちは』
波江「あら深夜。いたのね」
『テスト勉強しててずっと部屋に籠もってました』
ダラーズ集会の翌日、臨也さんから“今日から新しい部下を雇った”と、波江さんを紹介された。
臨也さんはオレに首云々の話をするつもりはないらしく、オレは波江さんを“臨也さんの部下、クラスメートの姉”として接している。
ここ数週間で、波江さんとは一言二言言葉をかわす程度には仲良くなれた。
臨也「深夜、なんだか嬉しそうだね?」
目ざとい臨也さんがオレの変化にすぐさま気づく。
『あ、臨也さん。明日池袋に遊びに行ってくるッス!』
臨也「明日?わかったけど、何しに行くの?」
『新しく駅前に出来たカフェに行ってくるんです』
「ふぅん、誰と?」
『えっ』
(……これは、言っても良いのだろうか)
名前を出すと不機嫌になるかもしれないと目を泳がせる。
『……』
臨也「……」
『……』
臨也「……」
『……静雄とッス!』
無言の圧力に耐えられなくなったオレは口を諦めて白状する。
臨也「へぇ、シズちゃん」
声色は変わっていないはずなのに、何故か冷たい空気を纏っていて、思わず背中がゾッとする。
臨也「テスト期間中に遊びに行くんだ。それもよりによってシズちゃんと。俺が一番嫌いな相手と」
とてつもなく怒っている。
すぐに不機嫌を察したオレは助けを求めるように波江さんに目で縋る。
波江「メンヘラ男の対応なんて面倒くさくてやってられないわ」
――が、即座に見捨てられてしまった。
臨也「そもそもさ、なんで目の前にこんなイケメンがいるのにシズちゃんとデートなのさ」
『自分でイケメンって言っちゃうんですね』
実際顔は整っている方なので言い返せないのがとてつもなくウザい。
『というか、デートなんかじゃ無いッス。ただ友人として遊びに行くだけです』
臨也「深夜がそう思っててもシズちゃんはわからないじゃん」
ムスッとしながら駄々をこねる子供のように言い返してくる臨也さんに、大きなため息をつく。
『静雄は年上が好み……っぽいじゃないッスか』
途中で慌てて主観だと付け加える。
臨也「……まぁ、俺が調べた限りでもシズちゃんは年上好きだけどさ。タイプなんていつ変わるかわからないし」
『タイプってそんなに変わらないと思いますよ?オレも昔から年上がタイプですし。今まで好きになった人も全員年上ですし』
臨也「……例えばどんな人?」
『えぇ……王子様みたいに優しい人とか俺様タイプな人とかワンコ系な人とかミステリアスな人とか教養があって話が面白い人とか……結構マチマチですよ。――あ、アニメキャラですっごい性格の悪い男を好きになった事もあったッスね』
――まぁ、最後のは臨也さんの事なんだけど。
波江「あら、貴方そっくりじゃない」
『はは!波江さん面白い事いいますね!!ああいうのは二次元だからいいんですよ。三次元じゃ絶対関わりたくないタイプッス』
波江「そうね、私もよっぽどの事がない限り絶対関わりたくなかったわ」
臨也「深夜?波江さん?俺結構傷つくよ?」
『勝手に傷ついてて下さい』
臨也「最近俺に冷たいね」
『扱いに慣れただけッス』
結局当日もオレが出かける直前までぶーぶー言っていたが、
『オレが誰と遊びに行こうが臨也さんには関係ないじゃないッスか!!』
というと、流石に黙った。
(もう……友人関係束縛する[[rb:重すぎる > ヤンデレ]]彼氏かよ!)
心のなかでそうツッコみながら、約束のいけふくろうに向かう。
すると、そこには既に静雄が……
(……え?静雄?)
見覚えのある金髪。
オレは恐る恐る近づいて声をかけると、彼はこちらに気づいてくれた。
静雄「おぅ、深夜」
『え?静雄だよな?』
静雄「あ?そうだが。なんか変か?」
『いやめちゃめちゃ変……というか、超カッコいいよ!?いや、いつもカッコいいんだけど!』
そう、オレが静雄かどうか気付けなかったのは彼の服装にあった。
いつものバーテングラサンで来ると思い込んでいたオレは、目の前のお洒落をする彼に目を丸くする。
(というか、バーテン以外の服持ってたんだ……)
流石にそれは失礼かもしれないが。
静雄「そ、そうか……ありがとよ。トムさんが、せっかく出かけるならっていい服買って貰えたんだ」
『えええ、トムさん優しすぎる……』
静雄「お前もその……似合ってるぞ」
『えっ』
静雄の言葉に驚いて、思わず彼の目を見つめる。
静雄は少し気恥ずかしそうに赤くなりながら、目を逸らした。
(わぁぁ、嬉しすぎて心臓がばくばくしてる…)
『嬉しい!!静雄のためにおしゃれしてきたから喜んでもらえたなら嬉しいな』
ニカッと笑うと、静雄も優しく微笑んでくれた。
『よし、それじゃあ行こうか!』
静雄「だな。俺めっちゃ楽しみにしてたんだよ」
『あははっ』
確かにプリンに目がない静雄にとってはとても楽しみだったことだろう。
話題のカフェに到着すると、そこには既に列ができていた。
『わぁ、思ったより混んでるなぁ…』
静雄「だな。結構並ぶみたいだけど大丈夫か?」
『オレはぜんぜん大丈夫だよ。静雄は?』
静雄「俺も平気だ。どうせ今日一日暇だったからな」
そういうことで、オレ達は最後尾に並び始める。
ただ、数十分待てば店には入れそうな雰囲気だった。
『それにしても楽しみだね、プリン』
静雄「噂で聞いてはいたんだけどよ、なんかすっげぇ評判良いみてぇだしな」
『ねー!』
しばらくそう雑談していると、ヒソヒソと私達を噂する声が聞こえた。
モブ「あれって池袋最強の平和島静雄……?」
モブ「男の子と一緒にいる……」
モブ「もしかしてちょっと前に噂になってた彼?」
モブ「あぁ、ダラーズの掲示板で言われてた?」
(やっぱり静雄といると目立つか……)
(静雄、居心地悪いかな……)
苛ついていたりしていないかと静雄の顔を覗き込む。
『……っ?』
思わず息を呑む。
目の前にいた静雄が、とても傷ついた顔をしていたから。
『…静雄?どうした?』
心配になって声をかける。
静雄は一言、ボソリと呟いた。
「――ごめんな、俺のせいで」
『……はっ?』
何故… 静雄が謝る事なんて、何一つ無いのに。
突然の出来事に声を掛けられないオレに、静雄は苦しそうに一言一言を紡ぐ。
静雄「俺と居るだけで、深夜には迷惑ばっか掛けちまうだろ……。今だってなんか言われてるしよ、前回の事だって――」
『待て!!それは違うさ!!』
自分でも思っていた以上に大声で静雄の言葉を遮ってしまい、慌てて口を抑える。
『突然大きな声出してごめん。でも、前回の事は静雄の勢じゃない。別に静雄が悪いわけじゃないさ』
やっぱり静雄は、前回の事件を気にしていた。
心優しい彼の事だからと思っていたけど、そんなに自分を責めていたとは思っていなかった。
『それに、今だって、静雄は居心地悪いかもしれないけど、オレは全然気にしてないさ。こうやって静雄と話せる事の方が嬉しい』
未だに浮かない顔をしている静雄に向かって優しく微笑みかける。
静雄「……俺も、お前と一緒に居るだけで、なんだか胸が暖かくなるんだ。ずっとお前と一緒に居たいって思う」
『……!!』
静雄の言葉に思わず顔が赤くなる。
静雄にそんなつもりはないと分かってはいるものの、まるでプロポーズのような文面に恥ずかしくなってしまう。
静雄「――でも、これは俺の我儘なんじゃねぇかってずっと思ってたんだ。お前といられたら俺は幸せだけど、お前はきっと不幸になる」
顔を歪める静雄を見て、“愛しい”と感じた。
『静雄、サンキュー!!』
オレは思いっきり彼に抱きつく。
静雄「……!?」
『そんなにもオレの事を考えてくれて、悩んでくれて、オレ、凄い嬉しい』
自動喧嘩人形、だなんて言われているけれど、静雄は根はとても優しい男の人だとオレは知っている。
名前の通り平和で静かなことを望んでいて、オレの平和を崩すまいと想ってくれている。
『でも、自分を責めないでほしい。オレは静雄と一緒に居るだけで幸せなんだよ。だから、不幸になるなんて悲しい事は言うな。オレは静雄の事 大好きだからさ』
オレの最大限の気持ちを受け取って欲しいと抱きつく力を強めると、静雄はそっと背中に手を回してくれた。
静雄「お前って、変な奴」
臨也Side
『……』
手に顎を乗せながら、無表情でディスプレイを見つめる。
波江「……いい加減仕事してくれないかしら」
『してるさ』
波江「私からは人のデートを盗み見て勝手に嫉妬してる可愛そうな男しか見えないのだけれど」
『はは、酷い言い草だなぁ。嫉妬だなんて。身内が嫌いな奴と抱き合ってたら機嫌も悪くなるさ』
波江「深夜がどうしようと彼の勝手よ」
『……波江さんは深夜に弱いなぁ。たった数週間で彼に絆されちゃって』
波江「私が心を許しているのは誠二だけよ」
『あっそ』
波江「……彼の事を愛しているの?」
波江さんの質問に、すぅ、と目を細める。
『面白い冗談だね。波江さんだって、誠二くんにベッタリじゃないか』
波江「私は誠二を愛しているもの」
『あー、そうだったね。じゃあ、俺も彼を愛しているのかもしれないなぁ』
波江「貴方は彼を愛している事を頑なに認めたくないように思えるわ」
『……俺が?』
波江「ええ。まぁ、貴方は他人にも自分にも嘘をつくのが上手そうだけれど。いつまで自分を騙せるのかしらね」
『波江さん、そう言うの、余計なおせっかいって言うんだよ』
波江「あらそう。じゃあ今後口出しするのは止めるわ。貴方が自覚して追いかけ回される彼が可愛そうだもの」
『はは、俺の職場なのに俺の味方は何処にも居ないのか』
波江「そうよ。貴方は最初から独りぼっちだわ」
『……』
再びディスプレイに視線を戻すと、楽しそうに笑う深夜とシズちゃん。
『……バケモノに、笑って生きる権利なんて無いのに』
顔を顰めながら、そう零す。
『波江さん。俺はそろそろ家を出るから、俺が帰ってくるまでにさっき言っておいたこと終わらせておいて。そうしたらもう今日は帰っていいよ』
波江「すぐに終わらせるわ」
『じゃ、後はよろしくー』
波江「……彼の幸せを邪魔して後に煙たがられるのは貴方よ」
『邪魔だなんて。俺はただ、保護者として深夜を連れて帰るだけさ』
いつもの如くコートを羽織って扉に手をかける。
家を出る直前、背後から波江さんのため息が聞こえた気がした。
(彼に特別な感情を抱いているのは認めよう。でもこれは恋じゃない。彼が異世界から来た異分子だから気になっている。
――ただそれだけの事さ)
臨也Side終
店員「2名様ご案内です」
数十分列に並び、ようやく店の中に入る事が出来た。
『わ、待て。どれも美味しそう…!』
静雄「俺はこれで」
静雄が一番大きなプリンアラモードパフェを指差す。
『すご、こんなに食べられるのか?』
静雄「半分こするか?」
『っっっ!!!……ちょっとだけ分けてほしいです!』
(……危ない……見た目に反して“半分こ”とか言う可愛い言い方するからギャップ萌えしちゃった)
オレはワンカップサイズの濃厚プリンを注文する。
『待った甲斐があった〜。楽しみすぎる』
静雄「つーか、一緒に来るのは俺で良かったのか?友達とか、いんだろ?」
『いやぁ、実は近々テストがあって。みんな誘っちゃっても勉強の邪魔するかなって』
静雄「って事は、深夜もテストじゃねぇの?」
『うぐ……そうなんッスけど……。ちょっと勉強疲れちゃったから息抜きもしたいなぁって……』
ちゃんと勉強しろって言われるかなぁと視線を泳がせる。
けれど、静雄は思いもよらない言葉をかけてくれた。
静雄「そういう日もあるよな。良いんじゃねぇの?ずっと根詰めすぎても壊れちまうしな」
『……静雄……!』
どうしてこうもほしい言葉を掛けてくれるのだろうか。
『イケメン!そういうところホント好き!ありがとう!!!』
オレがそう言うと、静雄は呆れたように笑った。
◯
◯
◯
『わー、美味しかった…!』
やってきたプリンの味は評判通り、とても美味しかった。
静雄が頼んだパフェが思っていたより巨大でびっくりしたけど、静雄は平然と食べ尽くしていた。
確かに体格的には食べられそうだけど、オレだったら胸焼けしそう……。
静雄はオレの想像より遥かに甘党だという事が発覚した。
静雄「俺も来られてよかったわ。もうちょい人気が落ち着いたらまた来てぇな」
『だな!』
食事も終わり、そろそろ帰ろうと席を立ちかけた時、目前の静雄が顔を顰めたのが分かった。
『静雄…?』
手に持っていたレシートをぐしゃっと握りつぶす。
あれがコップであったら即座に粉々になっていたことだろう。
(……もしかして……)
静雄が今にも射殺さんとばかりに睨みつける方向に視線をやる。
『い、い、臨也さん!?!?どうしてここに!!』
臨也「俺は君を迎えに来たんだよ?なのにそんな反応、俺、悲しいな」
『勝手に悲しめ』
臨也「……似たような会話今朝したばっかりだけど」
『って、それよりなんで来たんッスか!店中で喧嘩なんて絶対ダメッスよ!』
臨也「あっれぇ?シズちゃんじゃぁん。いたんだ?」
わざとらしくニコリと笑う臨也さん。
(あぁ、これはウザい……とてつもなくウザい……)
隣から溢れ出る殺気が大きくなった気がするのはきっと気のせいじゃない。
『と、とりあえず帰ってくれ!』
臨也「いやいや、俺は君を迎えに来たんだってば」
『えぇ……わかったッスよ。一緒に帰ります』
正直静雄とはこの後分かれるつもりだったので、交通費も臨也さん持ちで万々歳だ。
臨也「ってことで、深夜は俺が貰っていくね」
静雄「いぃぃぃぃぃざぁぁぁぁぁぁぁやぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!」
臨也「うわっっと。ちょっとシズちゃん、店の中で暴れるのやめてくれない?」
静雄「死ねッ!!!!!!!!!!!!」
『ひぃぃっ!お店壊さないで下さい戦争コンビ!!!!!!!臨也さん、無駄口叩いてないで帰るッスよ!』
オレはお財布に入っていた一万円札をレジに置いて、お釣りももらわず店を飛び出した。
◯
◯
◯
『……もう……ホントに何しに来たんですか?わざわざ静雄の怒りに火に油を注ぐような真似……』
はぁ、と大きな溜息を吐きながら、隣を歩く臨也さんを見る。
臨也「べつにー?ちょっとちょっかい掛けたかっただけ」
『静雄の事好きなんッスか??』
オレがそういうと、臨也さんは即座に顔を歪める。
臨也「はぁ?なぁんでそうなるのさ」
『だってちょっかい掛けにきたって完全に好きな子をいじめたくなっちゃう小学生男子のそれじゃないですか……』
臨也「止めてよ。あんなバケモノ、今すぐにでも死ねばいいって思ってるんだからさ」
『じゃあなんできたんッスか…本当に』
臨也「深夜にちょっかい掛けにきただけだけど?あれ?でもおかしいな。そしたら君の理論だと俺が君を好きってことになっちゃうね?」
ずいっと顔を近寄せてきて爽やかに笑う臨也さん。
『顔だけは良いんですから近づかないでくれ』
臨也「全く。君はこの顔には騙されてくれないか」
『優しく笑うときの臨也さんは好きですし照れますよ?でも今は意地悪な顔してるので』
臨也「はは、なにそれ」
それより――と、首筋に鼻を近づけてくる臨也さん。
『――ちょっ!?な、何してるんッスか?…?』
臨也「臭い」
『!?!?!?』
突然放たれた言葉に目を白黒させる。
(なんで!?汗かくほど外暑いわけでもなかったんだけど…!)
臨也「だって臭うんだもん。体中から」
『体中から!?!?』
メンタルをボロボロにされ、しゅんと項垂れるオレに臨也さんはいう。
臨也「うん、臭う。俺の大ッキライなやつの臭いが」
『……は???』
後に紡がれた言葉にぽかんとしてしまう。
『それって静雄の匂いって事ですか?』
臨也「そ。シズちゃんの臭い。さっき深夜がシズちゃんに抱きついてたからついたんじゃない?」
『え、匂いそんな移ってますかね……って、いつから見てたんッスか?』
臨也「ずっと」
『ストーカー!?』
不機嫌そうに眉を顰める臨也さんは、思いもよらない提案をしてきた。
臨也「シズちゃんの臭いがついた人間を部屋には入れられないなぁ」
『え……お風呂はちゃんと入るッスよ』
臨也「家ついたらすぐ入ってね。即座に。なんなら俺が一緒に入って体の隅々まで洗ってあげようか?」
『〜〜〜っっっ!?!?!?な、なな、なんて事言ってるんだ!!?!?!?』
ブワッと赤くなったオレの顔を見てお腹を抱えて笑う目前の男。
『臨也さん……!!!』
臨也「ふはっ、くくっ、いやっ、思ったより反応が良くってさ。深夜って初心[[rb:初心 > ウブ]]だから観察してて飽きないよ」
笑いすぎて涙が溢れ出している臨也さんにイライラしてくる。
静雄に殴ってもらえばよかったかもしれないと、後悔の念が押し寄せた。
『……はぁ……からかうのもいい加減にしてくれ。こっちだって年頃の男なんですから』
臨也「はいはい」
ムスッとしながら不満を垂れ流すと、臨也さんに優しく頭を撫でられた。
これでは完全に[[rb:子供 > ガキ]]扱いだ。
『絶対わかってない…』
臨也「なに?それじゃあ大人の男扱いされたいってこと?そうしたら今日の夜は無事じゃ済まないと思うけど」
『なんか今日セクハラ発言多すぎだろ!?!?静雄呼びますよ!?』
臨也「やだな、冗談だよ。だからシズちゃんは止めて?」
『はぁ、話してて疲れる』
頭に手を当ててわざとらしくため息を付いても、臨也さんは楽しそうに笑うだけだった。
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