ワゴン組ズと
授業中、オレはずっとこれからの事について考えていた。
(これから起こる出来事はセルティさんの首事件に切り裂き魔事件、そしてダラーズと黄巾賊の全面抗争……)
思い出すだけでも頭が痛くなる事件ばかりだ。
まずは誠二くんと美香ちゃんの事件から対処していかなければ。
でもまずは、臨也さんが帝人くんがダラーズの創始者であることを目の前で確認するイベントが起こらないと意味がない。
(これから数日は帝人くんたちと校門まで行くべきだな)
臨也さんが校門で待っている時に立ち会えたら、その日が初ダラーズ集会の日だ。
シナリオを変えてしまう事は悪い事かも知れないし、今よりもっと悲惨な出来事が起きるかもしれない。
でも、全て知ってて傍観を決め込むことなんてできない。
(あわよくば、ハッピーエンドになれたら…)
ギュッと拳を握った。
◯
◯
◯
正臣「深夜ー!帝人ー!杏里ー!帰ろーぜー!」
帰りのSHRが終わった瞬間に隣のクラスからやってくる正臣。
朝の会話の事はもう気にしないでいてくれているようなので少しだけ安心した。
帝人「いいよ」
杏里「あ、す、すみません。私今日は用事があって…」
正臣「そうか〜、残念。また明日な!」
帝人「またね、園原さん」
『杏里ちゃんばいばい〜……って、あ』
そのまま二人と一緒に帰ろうとして思い出す。
(まだワゴン組あってないじゃん…!)
正直、メイト本店にめちゃくちゃ行ってみたい。
乙女ロードというヲタクの聖地の様な場所に行けば、間違いなくゆまっちと狩沢さんには会える気がする。
『ごめんオレ、ちょっとメイト行ってみたくて』
正臣「えぇっ!?もしかして深夜ってそっち側の人間だったりする!?」
『うーん、まぁまぁ?』
ゆまっちや狩沢さんには遠く及ばないけれど、現世ではいろんな界隈でヲタクは拗らせていた。
正臣「そしたら俺もついてくわ。紹介したい奴が居てな」
帝人「それって狩沢さんと遊馬崎さん?」
正臣「ぴんぽーん!帝人せーかい」
『狩沢さん?遊馬崎さん?』
一応知らないフリをしておく。が、きっと目は隠しきれないほど輝いているだろう。
『帝人くんはもう知ってるんだね』
帝人「うん」
『へぇ、気になるなぁ。正臣の友達って事はきっと良い人達なんだろうなぁ』
正臣「あぁ、いい人たちには変わりないが、あの人達一度喋りだすと止まらないからな…。深夜が引かないか心配だ」
『あはは……』
そんなこんなで、オレと帝人くんと正臣で乙女ロードに向かうことになった。
『わあっ!』
正臣に連れられてやってきたのは乙女ロード。
目の前にそびえ立つ建物がアニメイト一号店。池袋本店だ。
中に入ると、様々な商品がずらりと並べられていた。
『凄い!こんなに大きいの!?』
流石第一号店だけあって品揃えが豊富だ。
正臣「あの人達いねーなー」
正臣はキョロキョロと辺りを見回しているが、私は目の前の宝庫に目を輝かせている。
(ヤバい。本来の目的はワゴン組に会う事だけど、それすら忘れていっぱい買ってしまいそう…)
心の誘惑を引き立たせているのが臨也さんから頂いた万冊の束。
(これだけあれば同人誌何冊買える…?)
この世にデュラララ――特にシズイザの同人誌が無い事だけが心残りだ。
『切ねぇ…』
一番好きなカップリングなのに…!
少し落ち込んでいた間に、正臣が大きな声を出す。
正臣「居たぞ!」
『はっ、どこ?』
正臣に手を引っ張られて人混みの中をかき分けていく。
するとそこには大量のフィギュアと電撃文庫を抱えている狩沢さんとゆまっちに出会った。
狩沢「あれ〜?紀田くんじゃん!って、え!?そっちのカッコイイ子誰!?」
ゆまっち「もしかして二次元からイケメン天使降臨ッスか!?!?」
正臣「違いますぅ。一旦紹介したいのでいつものワゴンにそれ運んでからにしません?」
狩沢「そうしようそうしよう!」
◯
◯
◯
狩沢さんとゆまっちが渡草さんのバンに遠慮なく戦利品を置いている間、オレは正臣に話しかける。
『あれ?、帝人くんは?』
正臣「そういやいねーな。はぐれたか?」
正臣がスマホを取り出すと、アチャーという顔をした。
正臣「なんか急に用事できたらしいわ」
『あら、残念』
「紀田くん、荷積み終わったっす!」
狩沢「それで〜?お姉さんにそのカッコイイ子を紹介してもらおうじゃないのっ!」
正臣「あぁ。俺の友人の折原深夜です。こいつ、最近上京してきたばっかで今日始めてメイトに来たんすよ。どうせなら皆さんにも紹介しておこうと思って」
正臣に紹介を受けて頭を下げる。
『はじめまして。折原深夜です。よろしくおねがいします!』
ゆまっち「微笑った顔もイケメンっすね!これは二次元といい勝負っす!執事さんとか似合いそうっすねぇ」
狩沢「わかる〜 カッコイイ〜〜っ!折原ってもしかしてイザイザの弟だったり!?!?」
ゆまっち「ちょっ、臨也さんの弟ってそれなんてご褒美シチュですか!?美形兄弟万歳!近親恋愛万歳っす!」
狩沢「イザイザと弟くんの禁断の恋…!?なんて素敵な響き…!」
『あの〜』
なるほど、これはなかなかだ。
正臣「ちょっと、深夜が困ってるじゃないですか…」
また始まったというように正臣は大きなため息をつく。
『あの、臨也さんとは弟じゃなくて従兄弟なんッス。それに、こっちに上京してきて住まわせていただいてから話すのが初めてみたいなもので…』
慌てて否定すると、二人はより目を輝かせた。
狩沢「従兄弟!?!?きゃあっ!じゃあ結婚できるね!?ゆまっち!従兄弟って結婚できるよね!?!?」
ゆまっち「行けるっす!!!というか、同棲してるんすか!?こんなアニメみたいな展開ってあります!?」
狩沢「イケメンと美少年一つ屋根の下……なにもないわけないじゃない!!!イザイザやるぅ!BLしてる!」
ゆまっち「臨也さん、毎日深夜くんと過ごせるなんて羨ましいっすぅ!」
狩沢さんとゆまっちは互いに肩を抱き合いながら萌えに感動している。
『そんなんじゃないんだけどなぁ…』
となりにいる正臣と目があって、互いに諦めたように笑いあった。
しばらく二人のマシンガントークを無言で聞いていると、背中から低い声が聞こえた。
???「おい。狩沢。遊馬崎。それくらいにしておけ。困ってるだろーが」
(はぅ!?)
この低く響くかっこいい中村○一ボイスは――。
狩沢「あっ!ドタチーン!」
ゆまっち「門田さん!」
バッと後ろを振り向く。
ドタチンきたーーーーッ!!
門田『よぅ、紀田。今日はどうしたんだ?』
正臣「門田さんこんにちは。今日はまた新しい友達を紹介したくて」
『はじめまして。折原深夜ッス』
ペコリと頭を下げると、ドタチンは笑って挨拶をし返してくれた。
門田「俺は門田京平だ。よろしくな。臨也の弟か?」
『あ、オレは従兄弟ッス』
狩沢「あ、そういえば私達も自己紹介がまだだったね!私、狩沢絵理華。よろしくね〜!」
ゆまっち「遊馬崎ウォーカーっす!」
『門田さん、狩沢さん、遊馬崎さん、よろしくおねがいします!』
狩沢「そうだ!アニメイトに来たって事は深夜くんも結構なヲタクってカンジ?」
『多分狩沢さんほどではありませんが…!』
ゆまっち「えっ、めっちゃくちゃ語りたいっす!」
狩沢「どうせならワゴンの中入りなよ〜!」
えぇ!?良いんですか!?
狩沢さんと遊馬崎さんと話したいしワゴン乗ってみたい…!
門田「おい狩沢。言ってることとやってることが誘拐犯だぞ」
狩沢「ぶぅー、ドタチンのいけずぅ」
門田「ドタチンって呼ぶな」
目の前でよく見る会話が繰り広げられてる…萌えッ…!
おっと、二人の口癖が移っちゃった。
『正臣、オレちょっと二人とヲタトークしたいから今日はここで解散でいいか?』
正臣「おう、良いぜー。んじゃ、俺は帰ります。門田さん、狩沢さん、遊馬崎さん。また今度。深夜もまた明日なー」
『うん、じゃあねー正臣!』
正臣に手を振り、遊馬崎さんに手を引かれてバンへと乗せてもらう。
ゆまっち「今の俺、めっちゃ執事っぽくなかったっすか!?」
狩沢「白い手袋してたらもっと良き!!!」
門田「あー、もう。わりぃな深夜」
『いえいえ。正臣から皆さんの話を聞いた時、オレも狩沢さんと遊馬崎さんと話してみたいと思ってたので』
そういうと、狩沢さんが抱きついてきた。
狩沢「んもうっ!深夜くんカッコ可愛いすぎ〜っ!こんなに可愛いとお姉さんが襲っちゃうよ〜?」
『っ!?ちょっと狩沢さん!胸揉むのやめてくれッス!』
狩沢「男の子の特権〜っ」
『全然アウトだわ!?!?自重して下さい!?女性なんですから…』
顔を真っ赤にしながら反論しても、暴走した二人には通じない。
それなら――。
『というか!臨也さんのカップリングは静雄しかあり得ないっ!シズイザしか勝たん!』
オレの突然の告白に狩沢さんと遊馬崎さん、そしてずっと黙っていた門田さんも目を丸める。
狩沢「深夜くん、もしかしてもしかしなくとも……腐男子ッ!?」
ゆまっち「腐っすか!?腐ってるっすか!?」
狩沢「きゃああっ!深夜くん分かってるぅ!やっぱりシズイザよね!?シズシズとイザイザは付き合ってるわよね!?」
門田「深夜は狩沢と同類だったか…」
額に手を当てため息をつく門田さんを他所に、オレと狩沢さんはガッチリと握手をする。
『まさか(こっちの世界で)シズイザを語れる人が居るとは思わなかったッス!』
狩沢「私もよ〜!ケンカップルなんて萌えの頂点じゃない!」
『ですよねですよね!?オレリバも行けるんですけど、最終的には結局シズイザに落ち着くんッスよ!臨也さんは誘い受けじゃないですか!?細身色白は受けって決まってるんですよ!!喧嘩してても結局はいつも静雄が臨也さんを押し倒して…あーっ!尊いっ!』
狩沢「どうしようゆまっち、ドタチン。私は運命の友を見つけてしまったかもしれないわ…!」
門田「これはしばらく騒がしくなりそうだな……
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