第26話 アズールという漢

「アズール・ガンパンですか。」


ジルベルトは知っている名なのであろう。

アズールのことを聞いたら、思い当たる節があるように返してきた。


「どういう男なんだ?」


「確か、ガンパン男爵家は、数代前に海賊討伐で功をあげ、男爵になったはずです。」


「ふむ、それでは普通の男爵家のものなのだな。」


「いえ、ガンパン家は他にも海洋紀行という商会をしており、通り名が海賊貴族とか言われていたはずです。」


海賊貴族……、これは聞いたことがある。

確か海を通るうえで通行料せしめたり、他の船から積荷を盗ったりする海軍貴族のことを指す言葉だ。


「海賊貴族なんて当家に招き入れて大丈夫なのか?」


「いえ、アズールという男、ガンパン家の者には珍しく、物を盗らないと有名な男ですので信用できるかと。」


ふむ、俺の目に狂いはなかったということか。

安心していると、ある一報が来た。


「伝令!」


「無礼者!勝手に入るとは何事か!」


「いや、いいんだ。どうしたんだ?」


よく見ると伝令の顔は青く染っており、呼吸も荒くなっている。


「ガンパン男爵家を名乗るものがアズール殿の返還を要求。飲まなければ港を攻めると!」


どうやら暗雲が立ち込めたようだ。

とんだ爆発物が家に来たものだ。


ジルベルトと一緒にため息を吐くと、すぐさまアズールを呼ぶように伝えた。


「ジルベルト、現在動かせる兵力は?」


「ハッ!騎士団が第2騎士団約1000名、傭兵部隊が現在も継続して雇っているため約200名おります。」


「勝てると思うか?正直でも良い、世辞はいらん。」


「正直五分五分かと。相手の兵力は分かりませんが、陸に持ち込めばこちらの勝ちかと、ですが海ですと確実に負けます。」


やはりか、陸では戦い慣れているこちらに勝利の理があるが、海ではあちらに一日の長があるため負けるのは想像できる。


「そうか、陸に持ち込むことは可能か?できれば領民のいない所で。」


「相手もそれをわかっているため、陸には上がらないでしょう。ソルに海が閉鎖されればこちらが干上がるのは確実ですな。」


困ったな、今回は分が悪い。

金でも渡して帰ってもらうか、いや相手は海洋紀行という商会もやっている、金には困ってないだろう。


「――ここは俺の腕の見せどころですぜ、お頭。」


「アズール!」


「へへ、元々俺がまいた種ですから、俺が始末をつけるのが筋ですぜ。ただ船と兵を貸してもらいたい。」


俺はジルベルトのほうをちらりと見るとジルベルトは頷いた。

まあここは任せるしかほかは無いからな。


「わかった、当家が持つ船は商船2隻だけだ。それでも良いなら、貸し出そう。」


「ははー!ありがたき幸せで。とまぁ冗談はここまでにしといて、やってみせますもの勝利をお待ちください!」


「ああ、頼んだアズール。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る