第22話 不穏な匂い。

「ねえ、ガゥ。あらためて考えると恥ずかしがるからいけないと思うの。堂々とすれば恥ずかしく感じないんじゃない?」


「いや、だとしてもあの視線に耐えられる?」


執務室に入るとエリーはふとそんなことを言ってきた。

だけど母上やアルバ、果てにはメイドたちまで微笑ましいものでも見る視線だった。


「それもそうね。確かにあれには耐えられないわ。」


そんなことを話、雑談に興じていると。


――コンコン


「ガゥエル様、ジルベルトです。至急お伝えしたい議が。」


「入れ。」


「失礼致します。」


朝からギラギラと光る瞳が他のものとは違い、ピリついている。

すぐさま俺とエリーは仕事へと切り替えた。


「おはようございます、ガゥエル様、姫様。」


「おはようジルベルト殿」


ジルベルトはエリーがドレスを着る時のみ姫様と呼ぶ。

だがエリーはドレスを着て淑女となっているが立ち振る舞いは既に騎士のそれである。


「実は子飼いの密偵のものがニーチェ殿が密かに隣領の伯爵に密使を出したとのこと。」


「ふむ、内容は?」


「内容までは分からないのですが、少々嫌な予感が致しましたのたので。それとニーチェが魔物の森にも人をだしたとか。」


ジルベルトの勘は当たりやすい。

一波乱起きなければ良いのだが、警戒するに越したことはないか。

それと魔物の森か……、これに関してはベルトールに頼むしかないか。

あとは昨日知り合った、ガスコにも少し頼んどくか。


「ジルベルト、その密偵に後ほど褒美をとらす、そのままニーチェの感じをやらせろ。」


「ハッ!」


「エリナーゼ、騎士団のものを密かに領境都市ムールの代官屋敷に入れろ、それとニーチェに監査をつけてくれ。ただし勘づかれないように。あとは万が一の為に騎士団を整いておけ。」


「ガゥ、いえ、ガゥエル様畏まりました。」


「では、私は早速密偵を再度放ちます。また情報が入り次第すぐに来ますので。」


そう言いジルベルトはすぐさま部屋を出た。


「では、ガゥエル様。私も騎士団に戻ります。」


「エリー、ちょっと待ってくれ。」


「はい?」


チュ、


「一応、いってらしゃいのキスだ。」


そう言うとエリーは途端に顔が赤くなり、逃げるように走って部屋を出ていった。


こういう初心な反応が可愛いんだよな。

そう思いながら俺は自分がすべき仕事をやり始めることにした。


しかし、ニーチェか……。

父の代から使え始めたが、その前は商人と聞くがその他の経歴は知らないな。


後でアルバに命じて調べさせるか。

そう思いアルバにドヤされる前に仕事に手を付け始めた。

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