第19話 民信の集め方。3
宴がはじり少し時間がたつと、皆ほろ酔い気分になってきたのであろう。
村同士の垣根を越え交流を持ち始めた。
饒舌に話し始めたり、飲み比べたり、腕相撲をし始めたりと盛況だ。
「楽しんでいるか?」
俺はエリーを連れ歩き、ガスコのいるところ間に行った。
ガスコは、村のもの達であろう人達に囲まれながら酒を飲んでいた。
「おっと、貴族様じゃないですかい。どうしましたかこんなむさ苦しいとこに。」
「いや、なんとなくな皆がどんな風に楽しんでいるかが気になっただけだ。」
「そうですかい。」
ガスコは俺が来たことに驚いていたけど、気軽に話しかけてくれた。
周りのもの達が萎縮しないようにしてくれたのだろう。
最初は俺が来たことに驚き、萎縮してた民も俺とガスコが話しているのを見て、大丈夫と感じたのだろう、また騒ぎ飲み始めた。
「エリナーゼ、しばらく俺はここにいるが君はどうする?」
「では、お隣にいます。」
そう言いガスコの隣に座ることにした。
するとガスコはいつの間にかジョッキを用意し、お酌をしはじめた。
「ほれほれ、お貴族もお飲みくだされ。
まぁお貴族様が飲むのにはちと不味い酒かもしれませんがね。」
そんな軽口を叩き始めると、隣でエリーが少し不機嫌になった。
多分ガスコの言動を無礼とでも思っているのであろう。
「エリナーゼ、大丈夫だ。今日は無礼講だ。」
「しかし!」
「へへ、いいじゃねえか嬢ちゃん。」
「じょ、嬢ちゃんだと!貴様、私は騎士団総長エリナーゼだ!」
「おお、お貴族様のいい人と噂の!」
エリーが怒り、自分の名を告げるとガスコは俺のいい人とエリーのことをおだては始めた。
「いい人だと。ま、まぁその通りだ!」
そんなことを言われたエリーは途端に恥ずかしがり、顔を赤くし下を俯いて酒を飲み始めた。
「ぶははは!……まぁお貴族様やそれでどんな用事でここまで?」
ガスコが笑いしばらくするとそんなことを聞いてきた。
まぁ最初からわかっていたのであろう。
「いやなに、また俺もここに来ても良いかとな。」
「いいんじゃないですかい?お貴族様が何を求めているかはわからないですが今日を見る感じみんなあなたに好印象を持ったようですし。」
「そうか…。」
「まぁ、またただ酒が飲めるならなお良しですがね!」
ガスコは最後にそんな人子を足してきた。
「そうかい、期待しといてくれよ。」
「はいよ。まぁそれよりも後ろ見なくて大丈夫ですかい?」
「後ろ?」
ガスコにそんなことを言われた不思議に思い後ろを振り返ろうとすると、いきなりバッと誰かが俺に抱きついてきた。
一瞬身を構えたが次に聞こえてきた声で俺は警戒を解いた。
「ガゥ〜、そんな髭の男と話してばかりじゃなく私を構ってよぉ。」
エリーだった。
しかもかなり酔っており、いつの間にか鎧を外しており、薄着だった。
背中から感じるエリーの温もりとささやかな胸の柔らかさに恥ずかしさを覚えながらも、ほっとけはしないからここで切り上げて屋敷に帰ることにした。
「すまんな、ガスコ。また来る。」
「えぇ、いつでも待ってますぜ、こいつらと。」
そう言うとガスコは周りの者達を見回し、笑って答えてくれた。
「ん〜、ガゥ〜。どこ行くのぉ?」
「屋敷に戻るんだよ。」
エリーからの質問に答えつつ、起き上がらせようとすると、手を伸ばしにへっと笑ってた。
「抱っこ、抱っこがいい。」
……もうやばい、破壊力がやばい。
そんなことを思いながらなんとか残っている理性を働かせ、エリーを背負い馬車まで移動した。
「閣下、エリナーゼ総長は?」
「少しよってるだけだ、このまま馬車に乗せて屋敷に戻る。」
馬車の方に行くと、エリーの配下が心配したように聞いてくるが、酔っているだけとわかるとそのまま馬車に乗り何事もなく屋敷まで戻りはじめた。
「んん、ガゥ……。」
「はぁ、人の気も知らないで……。」
エリーはそのまま馬車の中で無防備にも寝てしまった。
しょうがないから今日は屋敷に泊まってもらおうと思い、俺こ上着をエリーに羽織らせ、屋敷まで俺も少し寝ることにした。
――――
「閣下、着きましたよ。閣下!」
「んぁ、すまんなご苦労。」
気づけば深く眠っていたのであろう、着いたことにも気づかず、騎士に起こされた。
さて、エリーをまた背負い屋敷の中に入った。
「おかえりなさいませ、ガゥエル様。」
屋敷の玄関には、アルバと数人のメイドがおり、俺の帰りを待っていたようだ。
「アルバ、スマンがエリナーゼを今日は屋敷泊まらせる。」
「まあ、この状態でしたらそうですね。なんでしたら同室に致しましょうか?」
「余計なお世話だ。」
そんな軽口叩きながら、俺はエリーを背負い客間へ向かいベットに下ろした。
「おやすみ、エリー。」
そう言い、部屋を後にした。
そのまま俺は執務室に向かい、今日のことをアルバに言うことにした。
城壁工事の大変さ、賃金をもう少しあげたい、酒を奢ったなどたくさんのことを話した。
特にアルバが驚いたのは、がすこと知り合ったことだ。
「ガスコですか。かの者は、昔は斧鬼のガスコと呼ばれ近隣に名を轟かせたものですな。」
「そうなのか!だが俺はその名を知らんぞ。」
「ガゥエル様が産まれる前の話なので致しかないかと。」
「そうなのか。」
確かに考えてみればガスコは他の者達と違い、体格ががっしりしており、貴族と話すのにも萎縮しない胆力のある人物だった。
「未だ斧鬼のガスコの名を覚えているものは多くおります。これはいい出会いであったと思いますよ。」
「そうか。まあ本人は村長の立ち位置で満足していたみたいだがな。」
「そうでございましたか。」
このあとも俺はアルバとしばらく話した。
しばらくして、少し疲れもではじめたため湯浴みは明日するといい部屋で寝ることにした。
「では、ガゥエル様また明日。」
「おう、いい夢見ろよ。」
そう言い部屋に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます