第18話 民信の集め方。2
ー貿易都市オクト郊外
次の日、俺たちはオクト郊外の倉庫予定地周りの城壁建設の工事場に来た。
「皆、今日は領主であるガゥエル子爵様も視察に来ている励むように。」
騎士が言うと領民たちは邪魔しなければいいという雰囲気をだしながら返事をし、それぞれの持ち場に行き作業を始めた。
「エリナーゼ、やはり見てるだけではつまらん、手伝ってきても良いか?」
最初は大人しく見ていたのだが、やはり見ているだけでは、退屈なので参加しようと思った。
「私は賛成です。民の行いを学ぶのもいいことですから。だけどアルバ殿に怒られますね。」
「それは、俺から伝えとくから大丈夫だ。」
そう言うとエリーもいいと思い、俺は1番近くの作業場に行き作業を手伝うことにした。
「おい、ここを手伝っても良いか?」
「へぇ、子爵様。ここはお貴族様にはちょっと厳しいかもしれませんぜ。」
この場のまとめ役だろうか、髭モジャの男がそんなことを言ってきた。
「大丈夫だ。いつも剣の鍛錬をしているから。」
「へぇ、そうですかい。」
男は俺の事を目で追いつつその場を去った。
「では、エリナーゼ、俺はあっちの現場を手伝うから、エリナーゼは担当指揮の方に行って他に必要資材などがないか聞いてきてくれ。」
「ハッ!」
そう言いエリーとは一旦別れ、現場に向かった。
早速作業を始めることにした。
思いのほか上手く進んだ。
やはりいつもの鍛錬はためになるのであろう。
―――約2時間後
しばらくしてわかった。
確かに辛い。
普段使わない筋肉を使い体にかなりの負担が来る。
周りを見ると、そんな中でも皆汗水流し働いていた。
正直尊敬を覚える。
「ほれ、貴族様には大変でしたろ。」
「ああ、こんなに疲れるなんて思ってもなかった。」
先程も話しかけてきた髭の男が様子を見に来た。
やはり心配であったのであろう、声音は呆れたようだった。
「まぁ、初めてにしては上出来ですぜ!」
しかし髭の男は、褒めてくれた。
よく見ると顔にシワが深く刻まれており、肌が黒く日に焼けている。
多分始まった当初からずっとこの現場にいるのであろう。
俺もこれくらになるまでやらないとこの現場では、1人前と認められないのであろう。
そう思うと少し悔しかった。
「なーに、悔しい顔しでんですか。そんな顔するのなら笑ってありがとうとでも言ってくださいよ。」
髭の男はそんなことを言うとニカッと眩しく笑っていた。
すると、こんなことを考える自分が恥ずかしくなってきた。
「ああ、そうだな。ありがとよ!」
「おうともよ!」
「そう言えば名を聞いてなかったな。」
「おう、俺は都市ジャベリンの管轄村タナダルの村長、ガスコだ。」
「ガスコか、よろしく頼む。」
俺はこのあとも時間いっぱいまで働いた。
時折ガスコやガスコの村の者と話をしたりした。
とても他愛ない話だった。
でっかい鹿を捕まえただの、アホと鳴く鳥がいたとか、果てには村の宿屋の主人が浮気して女将に殴られたなどとくだらない話だった。
だけどすごく笑えた。
やはりたまにはこんなふうに民と仕事をして、民と話をすることは大事と感じさせられた。
「さて、今日も城壁建設を感謝する。感謝の意を示し今日はささやかながら宴を開きたいと思う。皆入ってきてくれ。」
ーパンパン
そう言い手を叩くと、エリーを筆頭に騎士たちが酒を持ってきた。
実はエリーの仕事が終わったあと、エリーには酒の発注、料理の注文などをさせていた。
これは俺の日頃からの民への感謝の気持ちだ。
「では、皆杯を持ったか!乾杯!」
音頭をあげると民たちが「乾杯!!」と叫び宴が始まった。
どこもかしこも笑顔で溢れかえっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます