第16話 謀叛の魔の手
side:とある伯爵
儂は密使を受け取った。
それは突然であった。
いつも通り朝食を済ませ、支度をして領内の政務を取ろうとした時であった。
臣下のものが執務室に入ってきて、密使を渡してくれた。
内容は驚くことだった。
フェルナン子爵領で謀叛を起こすのでそれを鎮圧し、そのままフェルナン子爵家を采配して欲しい。
それを成功した暁には、フェルナン領代官に任じて欲しいとの内容だった。
「ふむ…。おい、そこの者、カイザーを呼んでこい。」
「ハッ!」
儂はすぐさま側近であるカイザーという軍師を呼んだ。
「御館様、お呼びでしょか?」
「早速で悪いがこれを読め。」
「ハッ!」
しばらくの沈黙が流れた後、カイザーはあることを言ってきた。
「お受けしても宜しいのでは?ただし書簡など証拠を残さないのを条件に。」
「ふむ、それは何故だ?」
正直、儂も受けようと思ったが、バレると降爵、所領の割譲だけでは済まないため、躊躇った。
「成功しても、成功しなくてもどっちでも良いではないですか。成功すれば理がありますし、成功しなくても証拠がなければ知らぬ存ぜぬで済みますし。」
確かにそうだ。
最近当家の港はめっきり船が来なくなった。
それもこれもフェルナンの先代のせいだ。
あいつが名君など烏滸がましくも呼ばれ、承認優遇などと貴族の恥である政治を行ったせいで船の寄港が減ったのだ。
考えただけでも腸が煮えくり返る思いだ。
まぁカイザーが言うのなら受けても良いのであろう。
ただ不安は証拠がもしでて露見した場合だ。
それが怖いのう。
「カイザー、お主中央に伝手はあるか?」
この者、昔は中央に仕えてたと聞く。
「ありますが、如何されたので?」
「元老院の下級貴族共にいくばかりの献金をと思ってな。」
「ほう、それもそうですな。」
意図を理解したのであろう。
カイザーは、顔に笑みを浮かべ始めた。
やはりこやつは、下民と違い頭が回るから話が早い。
「では、御館様。早速献金の準備をしてまいります。」
そう言うとカイザーは、執務室を出ていった。
考えるだけでも笑いが止まらんわい。
返事をとりあえず書かねばなるまいな。
早速ペンを持ち返事を書き始めた。
おっと、密使の宛名を見ていなかったな。
書いてる途中で密使が誰からなのかを見忘れたのに気がついた。
「宛名は、ニーチェか。」
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