第15話 王からの書簡。
ここ数日、俺は領地の執政をしていた。
父が亡くなったことにより、村々での中洲、川の領有権などを覆そうと嘆願がきていた。
正直うんざりした気持ちを持ちながらも今後の政策上、民の信を得る政策なので真摯に対応をした。
ーーコンコン
「ガゥエル様、至急お伝えしたい議が。」
ノックをしてドア越しに話しかけられた。
声からするに、アルバではない。
騎士の誰かであろう。
「はいれ。」
「ハッ!失礼致します。」
そういい入ってきたのは見覚えのある騎士だった。
名は確かマックリーン、あだ名はマックだ。
マックは、無精髭をはやしており、いつも気だるそうな顔をしている。
だが腕は確かではある。
特にやりが得意であり、騎士団でも有数の使い手だ。
「ん、マックかどうした?」
「閣下、今朝王都から書簡が届き、お渡しするため、至急こちらに来ました。」
「ご苦労であった。」
そう言われ渡された書簡は王家の証である双頭の獅子の印がされており、見れば直ぐに国書だとわかる。
「マック、また呼ぶからすぐ近くで待機をしていてくれ。それとジークベルトと、アルバを呼んできてくれ。」
「畏まりました。」
すぐ様マックは、2人を呼ぶために部屋をでた。
気だるそうにしてはいるが仕事は真面目にこなすデキル男だ。
さて、読むか。
封を開け、中を取りだし読み始めた。
内容は簡単にまとめると、
子爵位、子爵領を継ぐことに関しての許可。
突然の当主交代により、3年間の税を免除。
戦に関しての礼と感状の配布。
此度の戦の被害の補填は国庫が厳しいためなし。
あとは国庫にいくばかりか献金をするようにと。
「ハァ……。」
読み終わりため息を着くと誰かが部屋に歩いてきているのがわかった。
多分ジークベルトとアルバだろう。
ーーコンコン
「はいれ。」
「失礼致します。ジークベルト参上しました。」
「及びと伺い参りました。」
2人が入って来て口上を述べた。
それよりも今2人の意見が聞きたい。
「これを読め。」
2人に王からの書簡を読ませしばらくすると2人もため息を吐き始めた。
「どう思う?」
「ふむ、元老院の者達の思惑も混ざってると愚考します。」
「ジークベルト殿に同じく。」
やはりか。
気にはしていたが元老院か。
元老院は領地を持たない、法衣貴族の集まりである。
彼らの俸禄は国庫からでており、国庫が厳しくなれば自分たちの俸禄も厳しくなるため、各地の地方貴族に献金を求めると聞く。
税の免除をしていながらも、自分たちの利益を減らさぬために献金しろとは強欲者達め。
これでは税を払うのと変わらないではないか。
そう怒ろうとしたが、アルバが止めに入った。
「ガゥエル様、鎮まりなされ。元老院のこれは今に始まったことではないですよ。」
「しかしなぁ。」
「今は払わせておけば良いのです。いずれは払っても痛くも痒くもない利益を上げられるのですから。」
「そうですぞ、ガゥエル様。なにかあれば子爵家騎士団で吹っ飛ばしてやりますわい。」
2人がそう言い少し気が楽なった気がする。
しかし問題は最後の一文だ。
領内が固まり次第、王都に来るようにだ。
これはまずい、今俺は不安定な立場だ。
子爵位は継げたが突然の当主交代だ。
領内は今のところ安定しているがまだまだ貴族としては若輩なため、法衣貴族が是非にと縁談を組むであろう。
子爵家としてはいいのであろうが、同時に領地経営に口を出され、中央の権力闘争に巻き込まれる可能性さえある。
そんなことされては、安定している領地が、一気にダメになってしまう。
ここは、のらりくらりと交わすのがいいのであろう。
しかしそんな技術はないし、たとえ上手くいってもいずれは元老院からの呼び出しで王都に向かうことになるであろう。
困った。
「ガゥエル様、この王都への招待一先ず領内が固まり次第として返信致しましょう。」
「ジークベルト、何故だ?」
「今は躱すすべを私たちは、持っていません。ここは力を貯めて躱す力を手に入れましょう。」
「それにガゥエル様、王都に向かうのは早くても3年後、税の支払いをするタイミングでよろしいかと。それまでに付け入る隙を無くせばよろしいかと。」
「わかった。ジークベルト、アルバの意見に従おう。」
そういいすぐ様、返信の書簡を書き始めた。
それとアルバに命じて献金用の白金貨を集めさせ。
ジークベルトに護衛を選出させた。
払う金額は白金貨200枚ほど。
過去の例から見てこれくらいが妥当らしい。
働きもしない中央貴族が強欲な事だ。
そう思いながらも、待機してくれているマックを呼び、書簡を預け王都運ぶように命を下した。
「マック上級騎士頼んだぞ。」
「ハッ!必ず遂行致します。それと閣下!」
「なんだ?」
「道中の酒代は経費に含まれますか?」
素っ頓狂なことを言われ目が点になってしまった。
だがしばらくしてアルバが笑いだし、俺も笑ってた。
ジークベルトは、マックの頭をはたいてた。
「よいよい、あまり高くならないなら好きなだけ飲んでこい。」
「ありがたき幸せ!」
許可を出すとマックは笑顔になり笑い始めた。
こんなとこが憎めないやつだよ。
そう思い執務室を出るマックの背を見送った。
◆◆
元老院
領地を持たない宮仕えの貴族のあつまり。
すでに有名無実化されており、現在は役職を持たない法衣貴族達の策謀の場と化している。
公国は現在元老院の傀儡と化しており、国を運営している場ではある。
しかし賄賂が横行しておりあまりにも腐っているため、公正を重んじる領地貴族からは、煙たがられている。
法衣貴族
王国に仕える文官や武官の貴族であり、領地を持たず国庫から俸禄を貰っている。
法衣貴族は原則侯爵までしかない。
王族の場合のみ公爵が認められる。
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