第12話 それぞれの気持ち。
暫くして執務室で休息を取っていると、執務室の戸がなった。
「どうぞ。」
「失礼します。エリナーゼ上級騎士参りました!」
そう言いエリナーゼが入ってきた。
しばらくの沈黙の後、俺は喋り始めた。
「さて、エリー。硬い言葉は抜きにして話そうか。」
「ふぅ、いいわよガゥ。」
エリナーゼ、いやエリーとは俺が生まれた時からからの付き合いだ。
いちばん身近にいた女性なため、憧れでもあり、まぁなんというかそういう感情があるわけだ。
父もそれを理解してか、エリーを騎士団総長になるまで俺のお付きにしてくれた。
「エリー、すまん。」
「いいのよ、元々身分の違いがあるし…。」
謝罪の一言でエリーは、俺が言いたいことをわかってくれた。
俺とエリーは婚約者だ。
子爵家は安定しており、他家からの嫁を貰わなくても、上手くいくため父がエリーと婚約を取り付けてくれた。
もちろんエリーと俺は恋仲だ。
だから父上もエリーの父もそれを知っていて、婚約を取り付けたのだ。
だが父上が死にこの子爵家はどうなるか分からない。
もしかしたら他家からの縁談を結ばねばならないかもしれない。
エリーはその場合、側室になってしまうか婚約が解消されてしまう。
だからこそ俺はエリーに謝らなければならなかった。
「いいのよガゥ、そんな顔をしなくても。御館様の討死の報を聞いた時に覚悟は決めたわ。」
「だけど!いや…俺に言う資格はないよな。」
「もうっ!ガゥ、あなたが愛してくれているのはこの私。そうでしょ?」
「そうだとも!だからエリーに申し訳がないんだ。」
「私はあなたが私のことを愛してくれるのなら我慢するはわ、本当は悲しいけど、だけどそれが子爵家のためになるのなら。」
そう言うとエリーはだんだん泣き始めた。
エリーも泣きたかったはずだ。だけど我慢していたんだ。
俺が頑張って前を向いているから自分も前を向こうと。
エリーの覚悟をここで踏みいじっては行けない。
そんな気がした、だけど。
「エリー!俺は頑張って子爵家を盛り立てていく。だから僕の隣にいつもいて欲しい!」
そう言うとエリーは俺に抱きついてきた。
「うん、ガゥは強い子だからね。絶対できるもん。」
俺はエリーを愛するんだ。
そのためなら俺は修羅にでもなってやる。
そんな気持ちを胸に固めた。
ふとエリーの顔を見ると目が合った。
顔を赤らめており、目を閉じ始めた。
俺も目を閉じ、キスをしようとしたとき。
〜コンコン
「ガゥエル様お伝えしたいことが。」
俺とエリーは一瞬にして我にかえり、急いで席に着いた。
「入れ…。」
入ってきたのはアルバだった。
アルバは俺とエリーの顔を見て察したのか、ニヤニヤとし始めた。
「ガゥエル様、2時間後にまた来た方がよろしいですか?」
エリーの顔をチラッと見るとかなり赤くなっていた。
当然俺も赤いのであろう。
「余計なお世話だ!」
そう言うとさらにアルバはニヤニヤし始めた。
「ガゥエル様、私は騎士団の訓練があるのでここで!」
エリーは、アルバの視線に耐えられなくなったのか早口で発言し、逃げるように部屋を出ていった。
「んで、要件はなんだ?」
「そんなムスッとしたお顔なさないで、もっとキリッとした顔をしてください。」
そんなことをアルバに言われた。
誰のせいだと思ってるんだ。誰の!
そんなことを思いながらアルバからの報告を聞き始めた。
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