第11話 会議は踊れど上手くは進まず。2

ベクトールは、最初俺が考えた改革案には、驚いた顔をしていた。

だがそれが自分が代官をしている街に、理があると理解すれば、すぐさま支持を示してくれた。


だがザックは、長年行ってきた方法を変えるのに抵抗があるのだろう、少し懸念を示していた。


ニーチェに至っては、自らが商人でもあるため、商人の利権に関わることに手を出して欲しくないのだろう、あまり乗り気ではない。


しかしベクトールはそれを抑えるなにかがわかったのであろう。


「いや御大将、俺から言っては気まずいのでここはお譲り致しますぜ。」


相変わらず軽い口調で、自分の立場をわきまえたように言ってきた。


「わかった。スズ、次の資料を配ってくれ。」


「はい!」


そう言いスズが配った資料を見るようにいい、解決案を提示し始めた。


「では、この資料を見てくれ。この資料には年間平均の来航数とその税収、それと関から取れる税も書かれている。」


貿易都市オクトでは、現在約124隻だ。

昨年は約96隻が来ており年々大幅に貿易船の来航が増えており、昨年は1番振り幅が高かった。


更に税収は、白金貨換算で約1400枚これは、普通の子爵家の2年分の収益と同等だ。

さらに言うなら伯爵家と同じくらい貸せでいる。


ついでに領地全体の収益は、約2000枚。

子爵家の3年分の収益をあげている。


だからこそ今後も船が増えれば税も増える、なので港を拡張し倉庫も増やしたい。

あわよくばそれを、今後の利益を考え倉庫に料金をつけたい。


その利益を使い今後の賦役を変える必要があり、賃金が必要だ。

金がでれば人は頑張るものだ。港の拡張の目処が立ち次第、治水などの賦役もする予定だ。

だからこそ資金回収で倉庫を貸出料徴収にしたい。


しかしそれだと不満がでるのは明らかだ。

だから今ある既存の倉庫は子爵家で、倍の値段で買取りたいと思っている。


関所を配することで商人にも利益がでるだろうし、何より賦役により普段金を持たない農民たちが金を手に入れそれを商人に落としてくれるだろう。


これが俺の最大の配慮だ。

だが商人達は不満がでるだろう、しかし後々になればいい結果になるはずだ。

それを理解したのであろう、ザックは賦役に賃金が出てそこから運営費をとるため、村の運営が今までどうりできるので支持派に回ってくれた。


ニーチェはザックが指示に回ったため旗色が悪いと感じたのか、不承不承ながらも承知してくれた。


「では、次に関所を廃するための賊への対処だが、騎士団を増員する予定だ。その費用は既に確保してある。あとはエリナーゼに頼む。」


そう言いエリナーゼの方をむくと、エリナーゼはこくりと頷いた。


「さて、賦役の賃金、倉庫の使用料は後ほど決める。それとこれから俺は子爵領をどんどん変えていつもりだ。金を貯めるのではなく、使う領地を目指す予定だ。皆頼むぞ。」


「「「「ハッ!」」」」


そう言い会議は終了した。

あとは賦役の立て札をたて港の拡張を行い始めるとするか。


「エリナーゼ!後で俺の執務室に来てくれ。」


「はい!」


それだけを伝え俺は部屋を後にした。



『チッ…、若造が……。』


他のものが居なくなった会議室で誰かがそう言った。


◆◆

子爵家では通常年間約600〜700枚の収益がでます。

フェルナン子爵家は港があり、船が沢山寄港するため、商売も盛んなのでその3倍の収益がでます。


主に税は貴族の体裁維持や騎士、兵士の給金、橋や治水等の公共事業が主な用途です

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