第8話 ひとつの光明。

「まず子爵様、現在この本領貿易都市オクトからの陳情は知っておりますか?」


「ああ、もちろん街に倉庫が足りないので港を広げて建てて欲しいだろ。」


戦が起こっても商いは、途切れることなく続いており、さらに拡大する一方だ。


「それを利用するのですよ!」


「わかったぞ!」


ガルーはそれだけで理解したのかわかったといい疑問が晴れた顔をしていた。

だが俺は正直わからなかった。


「すまんが俺にもわかるように説明してくれ。」


「は、はい!えっとまず港を広げ倉庫を作るの村に賦役としてだします。ただ奉仕活動にするのではなく、賃金を払います。」


まだここまではピンとこないが隣でウンウンと頷くガルーがウザい。

モフるぞ。


「賃金を払うので村は潤いますし飢えることはないでしょう。さらにこの賃金を村に数割ほど治めて運営費にしてもらいます。幸い子爵家は交易で潤っているので賃金は払えます。」


「そういうことか!確かにこれはいい案だ。よく思いついたな!」


そう褒めるとスズは照れたのか顔を赤らめ顔を俯かせた。しかし子爵家の強みを活かしよくこんなことが思いつくものだと感心した。


「小さい頃、父の持っていたスメラギの本を読んだ時そんなことが書いていたので。」


そうスズが謙遜するがそれをスラスラと思いでて言えるとこがすごいと感じた。


「あの、子爵様。」


「どうしたガルー?」


ガルーがスズの話を聞いて思ったことがあったのか追加で案を出しはじめた。


「倉庫の建設など終わってしまうとそこで終わりなので、そのまま治水など他のことも賦役として行いましょう。」


「だが、金は無限ではないぞ。」


「では、倉庫を子爵家所有として料金を取れば。」


スズがそう提案してきた。

確かにありだ、子爵家は交易で潤っているが金は無限ではない。だが港の拡張と倉庫の増設が陳情されるほど交易が拡大されている。


ならば収益は見込めるだろう。

さらに港が大きくなればまた船が増え、拡張し、治水が上手くいけば今後の収益も上がってくる。

よしっ!この案は採用だ。

そう思いさらに細かなことを詰めるためにガルー、スズとまた話しはじめた。



「よしっ!2人ともありがとな。今度また呼ぶから来てくれ。」


「かしこまりました!」


「はい!」


スズも緊張がほぐれたのであろう。

部屋に入った時とは違いしっかりと喋っていた。


「あ、子爵様!私が読んだ本には最後にこう書かれておりました。」


突然スズが読んだというスメラギの本の話をし始めた。


「富んでいる国は君主や貴族が民が金を貯めるのではなく、金を使う国だ。と書かれていました。」


「金を使う国か…。」


確かにしっかりときた。

金は貯めてれば経済が停滞する。

使えば経済が回る。


だが貯めてしまうのは人の性、これを人々が金を使い経済が回る領にしてこの子爵領を富ませてみせる。


目標は富国強兵!


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