第6話 改革への狼煙。2

さて、とりあえず謁見は終わった。

自室に戻り、やっと1人のゆっくりした時間が取れた。

せっかくだ一旦状況を整理しよう。


まず俺はこの子爵家を継ぐ。

しかし、父は名君と呼ばれ俺にとっては、正直重荷だ。

だが家臣、民から信を得なければならない。


それに今後戦はまだ続くと思っている。

しばらくは戦に出ずに済むだろうが、いずれは出兵を命じられる。

そのために兵と資金を貯めなければならない。


考えれば考えるほど大変だ……。


しかし今これを難しく考えたって答えはでない。

今やるべきことは領内の改革だろう。


「誰か!アルバを読んできてくれないか。」


部屋の外にいるであろう衛兵にそう命じた。

暫くするとアルバが来たのであろう、部屋がノックされた。


コンコン、


「入れ。」


「アルバ、ただいま参上しました!ご当主さま。」


「アルバ、そう畏まらなくていい。いつもどうりにしてくれ。」


「いえ、子爵家のご当主さまとなったのですから、敬意をはらわねばまいりませぬ。」


前みたいに気軽に喋って欲しかった。

だが、俺は今立場を手に入れてしまった。


アルバも子爵家を取り仕切る家宰だ当主には敬意をはらわなければ、当主が軽く見られてしまう。


俺だって理解していたはずだった。

だけど前みたいには、もう行かないのであろう。正直寂しくなった。


「まぁいい、本題だ。明日の会議で現在の街の収益と兵力が知りたい。それをまとめておいてくれ。」


「ハッ。」


「あと公王様宛に、暫くの領内安定のため、兵役の免除を願う書簡を書く。すまんが届けるための人選を見繕っておいてくれ。」


「かしこまりました。」


そういうとアルバは早速部屋をでて作業に取り掛かり始めたのであろう。

執事やメイドたちに命じている声が聞こえてくる。


『さて、まずは領内をどう富ませるかだ。』


家族や領民を守ると誓ったんだ。

兵を集め領を安定させねばならない。


だが、何をやるにしても金は必要だ。金がなければ民を食わせられず、兵も集められず、いずれ謀叛が起きてしまう。


だからこそ金が必要だ。子爵家は他領よりは金があるだろうだが今以上に必要だ。

そして金を得る構想は一応ある。たが難しくも感じる。だが子爵家は交易をしていて資金が潤沢だこれを利用しないわけがない。


子爵領は領地がUの字型になっており、Uの字型の下部分に港街を作り、そこを本領とし交易を行っている。港が他の領よりも広く内陸部まではいるため波が安定しており、他領より船が来るため交易が盛んだ。


そして他領と違い楽なことがある。他領では町方、つまり街を運営する商人の集まりがあるとこもあるらしいが、子爵領にはないことだ。

更には、貴族には強権があり命じたことは基本反発なく実行される。


家臣に口をだされず好きにやれる。

それが強みであり弱みでもある。


失敗すれば家臣からの反発があったり、強権も度が過ぎれば謀叛の原因になりかねない。だが商人が力を持っているため配慮しなければならないなどそんなことがないため楽な方ではあるのだろう。


そんなことを考えながら公王様への書簡を書き終わり、アルバを再度呼び出し、手紙を預けた。


「さて、アルバよ、この書簡任したぞ。」


「ハッ!」


アルバに頭を下げられたが、なんか居心地が悪い気がして、アルバをさがらせた。




◆◆

フェルナン子爵領

最西端に位置する領地。


形はU字型になっており、都市は4、村が12あり、首都以外の3つの都市が、1つにつき3つの村をまとめている。


首都は貿易都市オクト

港町であり、他大陸との玄関口として栄えており、交易が盛んに行われている。

西で最も栄える港町と呼ばれている。


そのほか、

魔物の森の壁になっている、都市ジャベリン

代官ベルトール


領境の都市ムール

代官ニーチェ


首都とムールを結ぶ、穀倉地の都市ロブス

代官ザック


がある。


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